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【「型」ってなに?】都庁主任級選考(主任試験)の書き方《論文編その3》

主任試験の論文対策の最終回は論文の書き方を解説します。
良く主任試験では「型」の通り書けと言われますが、それが何なのか解説します。
そもそもの対策の流れや過去の傾向分析は以下の記事をご覧ください。

なぜ「型」が重要視されるのか

局研修でも管理職添削でもほぼ間違いなく言われるのが「型」を身に着けて、その通りに書けということです。

「型」が重要なのは公務員だから?

公務員は議会答弁・都民説明などの外部向け、部長・局長・副知事・知事レクなどの内部向けなど、様々な場面で説明を求められます。
そういった際、ノンペーパーで説明を行うことはまれで、ほぼ必ず文書での説明が求められます。

説明する人

では、文書での説明の際に、毎回創意工夫をしてオリジナリティあふれる文書を作っているかというとそうではありません。
ほぼ間違いなくこの順番で説明をするとか、レイアウトはこうするとかいった様式美が存在しています。

その背景には、少しでも省エネ化したいというのもありますが、一度作った様式美は理解がしやすいからです。
説明を聞く側も、次何を言われるのかと頭をフル回転させるよりも、「原因の説明があったら次は対策方法だろうな」と展開が読めたほうが説明の理解が深まります。
公務員は民間と比べてステークホルダーが多岐にわたることが多いので、短時間で効率的に説明を理解いただくために、様式美(≒型)が重要になるのです。

主任試験でも「型」を重視すべき理由

ステークホルダー向けへの説明で様式美があるのは理解できても、主任試験でも「型」(≒様式美)を使用すべきなのはなぜでしょうか。
答えは管理職の多忙があります。

論文の採点を行うのは管理職ですが、昨今ますます管理職は忙しくなっており、多忙な業務の合間で論文の採点を行わねばなりません。
(もちろん暇な管理職がいるのは事実ですが、全体的に見れば例外的です。)
忙しい中で論文を読むと、どうしても「型」にはまったものの方がすっと頭に入ってきて、良い印象になるそうです。
なお、本来あってはいけないと思いますが、多忙ゆえに「型」にはまっていないだけで低い点を付ける管理職がいるのも事実です。

また、「型」は論理構成が固まっていますので、少なくとも論理展開でミスらないというメリットがあります。
ただし、因果関係をミスってしまえばせっかくの型も有効になりませんので注意が必要です。
(例えば、「保育士が不足している」と課題を提起した後に「だから保育所を整備すべき」などとつなげてしまっている場合です。)

主任試験における「型」のポイント

基本的には「型」は以下の構成をとることが多いです。
なお、職場ものでは若干の違いはありますが、基本は以下の通りです。

課題

設問1で問われている通り、まずは課題の抽出から入ります。
課題は資料から3つ抽出します。
設問に明示されていないのに、なぜ3つかというと、文字数的にちょうどいいからです。

資料に触れながら簡潔に課題を記載すると、どうしても100~150字になるかと思います。
1課題に200字以上書くと少し助長すぎる印象で、「簡潔に」というお題に答えられていない感が出てしまいます。
それゆえ、300~500字の制約の中では、課題は3つ抽出する必要があります。

課題

書き方としては、「第一に○○が課題である。」と簡潔に課題を明示したあと、「資料×では・・・」とつなげ、淡々と事実の指摘を行います。
ポイントとしては、単に増加しているといった分析だけでなく、他と比較したり、増加の伸びが加速してたりといったことまで分析できるとベストです。
なお、あくまでここでは事実にとどめ、要因分析等は設問2のほうで触れるようにします。

ちなみに、ひと昔に流行った「都のおかれている状況(都の財政状況等)」は現在では記載する必要がありません。
加点しないと明確に人事委員会が言っており、書くと字数がもったいないです。
なので、昔の再現論文を入手した場合には注意が必要です。

背景・原因

続いて設問2に移ります。
設問2の初めには「1(施策の要約)」を1~2行で記載します。
そして、設問1で書いた課題の原因や背景(課題の解決を阻む阻害要因)を書いていきます。

原因分析

例えば、課題が「保育士の不足」であれば、ここで不足している原因として「保育士の待遇が悪い」ということを説明します。
ボリュームとしてはここで100字程度記載します。
原因や背景は複数記載しても良いですが、以下に気を付けましょう。

  • 「課題」と因果関係が繋がるか
    ⇒悪い例:「保育士の不足」が課題なのに、背景で「東京は地価が高く保育所の整備が進みづらい」となっている。

  • 「対策」と因果関係が繋がるか
    ⇒悪い例:「保育士の待遇が悪い」が課題の背景なのに、対策で「保育所の整備を進める区市町村を助成する」となっている

  • 他の重要な背景を見落としていないか
    ⇒悪い例:「保育士の不足」が課題の時に、「保育士の待遇」には触れず「保育士のキャリア形成の支援」のみを記載している
    ただし、致命傷にはならないのでどうしても思いつかない場合は多少弱い原因・背景でもやむを得ない

  • 時点が古くないか(特に再現論文をそのまま使用する際に注意)
    ⇒悪い例:「テレワークが進んでいない」が課題の時に、「都庁でも導入が進んでおらず、モデルケースを示せていない」としている

解決策と効果

通常は各々の課題に対して、大きな解決の方向性を示し、具体策を2~3個記述します。
書き方としては、「第一に、(大きな方向性)を行う。具体的には・・・。また、・・・。さらに、・・・。」とつなげます。
そして、最後に解決策を実施した場合の効果を「これにより、・・・が解決し、・・・となることが期待される」と記載します。

背景と施策がうまくつながらない場合は、さらに補足も述べていきます。
例えば、「保育士の不足」が課題で、「保育士の待遇が悪い」が背景の際に、単に「ICT機材の導入を行う保育所に対して助成を行う」と記述するだけでなく、「短時間で効率的に業務を行えるよう」と加えます。

ここで、約250~300字程度記述します。

しめくくり

最後に締めくくりを記載すべきかは諸説あります。
結論から言えば、記載せずとも合格は可能なので、時間がなければ記載しないで良いです。
ただ、論文にしまりが出るので、採点者によっては加点につながるケースもあるとも言われています。

しめくくりは割とオリジナリティを出せる部分なので、時間があれば再現論文を参考に自分に合ったものを準備しても良いと思います。
あくまで一例ですが、設問で提示されるような社会を実現することがなぜ都にとって重要なのかを書き、解決策を実施することで確実にそれを実現していくといった締めにするものがあります。

「型」以外に重要なポイント

概ね「型」通り書けば論理展開等は問題ないかと思いますが、その他注意が必要な点があるので羅列します。

ポイント



都政もので注意すべきポイント

  • 【最重要】あくまで都の所掌範囲の中で解決策を提案する
    ⇒国や区市町村が行うべき施策については、「国へ提案を行う」「区市町村を支援する」「連携する」など都庁目線で記述する必要があります。
    準備をしていないと、いい解決策は浮かんだけどどのレベルの施策かわからないということになりかねないので、この意味でも準備が必要です。

  • 職場ものと違い、主任としてではなく大局的な見地で回答する
    ⇒主任レベルで解決できる社会課題はほぼないので大丈夫かと思いますが、局横断的な大局的な見地で回答を行う必要があります。

  • 現状の政策を全否定しない
    ⇒不十分な点や改善すべき点などを指摘するのはOKですが、全否定は避けるべきと言われています。というのも、都政ものに関してはお題に関連の深い部署の課長が採点しているとも言われており、現在進めている施策の全否定は心情的に評価が下がりやすいと言われているからです。

職場もので注意すべきポイント

  • 【最重要】主任の役割として書くべきことを書く
    ⇒課長や課長代理が行う仕事については、「課長代理に提案を行う」などあくまで主任としての動きで記載します。

  • 都政ものと違い、主語を自分で、実現することを書いていく
    ⇒「~すべき」といった評論家視点や、「~を検討する」といった傍観者で終わらせるのではなく、「(~すべきなので、)○○を行う」「~を検討し、××に反映させる」など、具体のアクションを記載します。

  • 都庁の常識の範囲内で回答する
    ⇒基本的には、職員ハンドブックに記載の内容は前提として考えておきます。そのため、例えば「文書総合管理システムでの起案処理が非効率なため、現在の業務システムで意思決定を行えるようにシステム部署に提案する」などといった記載は、(仮に実際には効果があったとしても)職場もので回答すべき提案の範囲を超えているため、NGとなります。

都庁主任試験の論文の書き方まとめ

  • 多忙な中採点を行う管理職に論文を確実にアピールするには結局「型」どおり記載することが有効である

  • 課題を3つ記述し、それぞれの課題に対する背景・原因と解決策(それぞれの課題に2~3個)を記述していく

  • しめくくりは書かなくても合格可能だが、時間があれば書いておいて損はない

  • 都政ものは都の所掌範囲で、職場ものは主任として取り組むことを記載することが重要

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