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アはアーケードのア 第36回『トイポップ』(1986年/ナムコ)

“地味可愛い”ゲーム『トイポップ』

 『トイポップ』は1986年にナムコから発売された、ハートを集めて出口から脱出する固定画面アクションものです。この3年前に発売された同社『リブルラブル』の基板を流用した製品です。

 可愛い絵柄ながら当時としても地味なゲームで、16dotのキャラクターで大半の絵が構成されてるという、あの時代のアーケードでは既に絶滅に近かったスタイルといえます。

 操作性も癖があり、破壊対象物に対して軸を合わせるために16dotの移動が1単位になっていて、グリッドの交点以外では曲がれないし、停止することもできない(反転は可)。想像ですが、途中で止まれるとかえって(グリッド規制前提だと)操作に違和感が出るので、このような仕様になったのかもしれません。

▲『トイポップ』フライヤー

最大の特徴――敵と武器が一対一対応

 ゲームの肝は、敵の種類ごとに有効な武器が決まっていて、都度切り替えるというルール。フィールド内のボックスを開いて見つけて装備する、武器は切り替え時に使い捨てとなる、各ステージに隠されている数は有限。ただ、ゲームの目的はハートの収集なので、万一使い切っても一応詰むことはありません。

 武器を選択できるという仕様は、現代のゲームでは普通のことで、たとえばFPSでも何でもいいけれど、近年の多くのゲームではどの武器を使うかは原則プレイヤーの自由で、自分のプレイスタイルに合った武器を選ぶことができますが、『トイポップ』はそういうゲームではありません。

 『トイポップ』は武器の切り替えが強制されるので、そこにかんしてだけいうと、限られた解法を見つけるパズルゲームのようなもので、武器はそれぞれの敵を倒すための合い鍵だと考えると近い。

 同時代のゲームでいうと、セガの『ゲイングランド』に少し似ているかもしれません。ただ、『ゲイングランド』はもっと自由度があって、敵と武器が完全に一対一対応になってるわけではありません。でも、どちらも必ずしも敵全滅がゲーム目的ではないという点で共通しています(破綻するので他の条件が必要)。

▲『トイポップ』インストラクションカード・1枚目

ランダム要素と固定で覚える要素

 『トイポップ』を(ある種の)パズルゲームと書きましたが、武器の配置がランダムなので、毎回同じプレイにはなりません。ローグライクやPvPにも通じるところがあって、一つのパターンを磨き上げて収束させていくのではなく、セオリーとアドリブで遊ぶゲームなのです。ここがぼくが一番好きな点です。

 とはいえ、覚えないといけない要素もあって、大きな特徴としてステージの最後に装備していた武器が次のステージに持ち越されるというのがあります。敵の出現順は固定なので、これを意識するかしないかの差はとんでもなく大きく、その点ではむしろガチガチに面倒くさい。ほかにも、欲しいアイテムを出すためのスコア調整があったり。

可愛さと裏腹にゲームは難しい!

 難易度にかんしてはざっくりしていて、2人プレイが前提のバランスになっており、かつゲームシステム上、プレイ人数による難易度の差が大きく出るゲームだったように思います。

 (ちなみに、1986年は「遊びの幅を広げる」「売り上げを上げる」という観点から、2人もしくはそれ以上の同時プレイがかなり普及し始めた時期です)

 また、プレイ人数を見て敵の種類や同時出現数などを切り替えるような難易度調整の仕組みも入ってないので、1人用がどうしてもシビアになります。

 1人でプレイしていると顕著なのですが、画面上には大抵複数種の敵が混在して動き回っているのに、自分は武器を一つしか持てないので、目の前の敵に対処できない状況が頻発する。一時的に敵から逃げたり回り道したりが常に必要で、この攻略性は当時好き嫌いがわかれたところだったと思います。

 1人用があまり配慮されてないという点では、ボーナスステージが最たる例で、ドバドバッと降ってくるリンゴをキャッチするゲームなのですが、これ1人でどうすればいいのってバランス。どうもならない。地面にボロボロ落ちる。

 また、いまだにひどいなあと思うのは、最終面の一つ前。敵に対応した武器がほぼ配置されておらず、一つ前の面から武器を持ち越しても対処不可能で、スペシャルウェポンもあることはあるのだけど、高スコアを狙ってプレイしてると、ここでうまくそろうかは完全な運。まあ、ここに限らず無茶ぶりともいえるステージはいくつもあるのですが。

『トイポップ』がどれだけ好きだったかという自分語り

 『トイポップ』はホント大好きなゲームで、どれぐらい好きだったかというと、ハイスコアラータイプのプレイヤーでもないぼくが、学生時代にライターの仕事をしていた際、ほとんど唯一攻略記事を書いたゲームというぐらい(電波新聞社の『オールアバウトナムコII』)。これだけしっかり書いたのは、後は『ギャラガ』ぐらいかな。

 『オールアバウトナムコII』の各ゲームのページ数を決める編集会議で、最初はあの倍近いページ数を要求したのですが、さすがに却下されました。1ステージにつき1ページ攻略を書きたかったのですが、結局その半分に圧縮、『トイポップ』への思いを全部そこに詰めました。

 『トイポップ』はその世界観もとても好きです。後年でいう『トイストーリー』みたいな感じですよね。ラグタイム調のBGMの素晴らしさもいわずもがな。あの世界観がその後の同社製品で使われてないのが、少しだけ残念ではあります。 了

▲『トイポップ』インストラクションカード・2枚目


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