アはアーケードのア 第35回『いっき』(1985年/サン電子)

『いっき』のスクロールが独特なことには理由がある

 SNS でサン電子『いっき』の話題を見たので、ちょっといろいろ思い出していました。以下は、主に(ファミコン版ではなく)アーケード版の記憶で話しますが、説明が不正確なところや認識間違いがあるかもしれないので、そのときは突っ込んでください。

 『いっき』はスクロールが少し独特で、まず画面中央の一定範囲の矩形から出ないとスクロールが始まりません。

 それ自体はごく普通の仕様ですが、その矩形がけっこう大きいので、外へ向かって歩き始めたときの前方視界が狭い。

 そして、スクロール開始後も、スクリーン上のプレイヤーの座標はその位置のままゲームが進みます。

 ゲーム側でプレイヤーの進行方向を見て前方視界を広げるという位置補正の仕組みがないんです。だから自分の進行方向がほとんど見えない。

 なぜこうなってるかというと、このゲームは2人同時プレイを前提につくられていて、1人プレイ時もその仕組みが適用されているからなのだと思います。

 2人でスクロールを引っ張り合うから、互いがある程度自由に動けるための“余白”が必要で、ほぼスクリーンの端まで移動できるようにせざるを得ない。

 これがSNKの『怒』のようなゲームであれば、基本的に前方へ進むのみなので、常に前方視界を広くとっておけば成立するのですが、『いっき』は全方向を行き来するマップ探索型の2人同時プレイという、比較的珍しいゲームだったので(小判収集が目的)、構造的に違和感が残ってしまってる感じなんですね。

アーケード版『いっき』は楽しく遊べるゲームだった

 アーケード版の動画を見返してみたところ、正確には『いっき』も上方向へ進む際は若干視界を広く取ってますね。でも、左右および下方向への移動時は、その余白が本当に一切ない。改めて見ても、全方向の探索型スクロールものとしてはちょっと変わった仕様になってるなと。

 ただ、端付近を移動していても、画面外から急に敵が現れてやられる等の理不尽な展開はそんなになかった気がします。スクロールの仕組みからの逆算で敵の仕様をつくっていたと思うんです。よくネタ扱いされますが、少なくともアーケード版『いっき』はちゃんと遊べるゲームでした。

 アーケード版とファミコン版の違いについては、以下の記事がくわしいですね。画面外からの敵の処理のことも書いてありました。なるほど、ファミコン版はそこの処理も異なっていたんですね。

『いっき』と異なる処理をしているスクロールゲーム

 以下は余談ですが、『いっき』と正反対に近いつくりなのが、ナムコの『ラリーX』ですね。自機が常にスクリーンの中心部から動かない。マップの端に到達しても、フィールド外を見せないためのスクロールの終点処理の概念がないゲームなので、徹底して中心に鎮座ましましている。ものすごくシンプルです。

 あと、同じくナムコの『イシターの復活』は、一応2体のプレイヤーを操作するゲームでしたが、これは完全にカイ視点で進行するので、『いっき』のような問題は起きませんでしたね。あれはあれで相当特殊なつくりでしたが。 了

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