アはアーケードのア 第40回『テトリス』(1988年/セガ)

セガ版『テトリス』の上級者のプレイを見たときの衝撃

『テトリス』はパソコンのBPS社版と、その少し後に出たアーケードのセガ社版の内容がホントに違っていて、「仕上げかたでこんな別物になるんだ」と衝撃を受けたゲームです。

当時、セガ版『テトリス』のブロック落下速度MAXの段階を初めて見たときに「いやいや、こんな無茶な難易度ないでしょ。対処できるわけない!」と正直思いました。

実際、発売後しばらくの間は、ぼくが通っていたプレイシティキャロット巣鴨店でもうまい人はいませんでした(当時多くのゲームファンが通っていたゲームセンターです)。

そこにハイスコアラーとして知られていたゲームサークルSPREAMの川島さんというかたがふらりといらっしゃって、そのときたまたまぼくもその場にいてプレイを目撃したのですが、その最高速のレベルを平気の平左でこなして、見る見る間にスコアがカウンターストップまで行っちゃったんです。

既存のゲームの攻略の文法が通じない遊びだったので、「えっ、これ無限にプレイできるようなゲームだったの?」ってもうホントにビックリして。

当時のプレイシティキャロット巣鴨店について少し補足すると、何となくその名前だけ知ってるかたは、最高レベルのプレイヤーが多数常駐していたというイメージがあるかもしれませんが、実際には他店舗の実力者が代わる代わる来店しては記録を出したり情報交換したり、という面も大きかったんです(もちろん常連でうまい人もいました)。

なので、セガ版『テトリス』についても、同時期に遊び込んでいた人はほかにもいたとは思うのですが、ぼくが見たマスタークラスのプレイはそれが初めてだったので、その衝撃たるや(たしかその月の全国1位にもなったんでしたっけ? 機会があればマイコンBASICマガジンに掲載された当時のハイスコアコーナーを見直してみます)。

ひとことで『テトリス』と言っても全然違う

知らないかたにBPS版とセガ版『テトリス』の違いを簡単に説明すると、BPS版はブロックが山に着地すると瞬時にブロックが固定されてしまうのですが、セガ版では着地した後もごく短時間だけブロックを移動させたり回転させることができるのです(そのときの山の形やブロックの位置によって制約はあるのですが)。この差が本当に大きかったんです。もう違うゲームです。

ぼくもその後、本格的に遊び始めて、なんというおもしろいゲームだと感銘を受け、がんばってほぼ終わらないところまで行けるようになったのですが、一度カウンターストップ目前でゲームオーバーになって、そこでもう気力が尽きてしまいました。カウンターストップまで1時間ぐらいかかるんですもの。

あのときあれだけ遊び込んでおもしろさがわかったこともあって、その後自分でも『コズモギャング・ザ・パズル』などの落ちもの系パズルをつくらせていただいたりして、大元を生み出されたパジトノフ氏には足を向けて眠れません。今見ても示唆的でいろいろ考えさせてくれる素晴らしいゲームデザインだと思っています。 了

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