コロナで時代が10年進んだ気がするのだが...

緊急事態宣言から1カ月が経過し、新型コロナ問題に対して、自分の中での整理がついてきた。結論から言えば「働き方」に関して、急に時間が10年先に進んだということだ。タクシーの信号待ちすら我慢できない私にとって、「移動」は心の底からストレスだった。あらゆる束縛が耐えられない私にとって「常に東京にいること」は、牢屋に入れられているも同然の気分だった。そもそも、2019年の段階で仕事は録画した動画とチャットだけで済んでいたはずなのに、現実問題として社会がそれを受け入れてくれなかった。

すぐに「リアルで会おう」という話になり、針の穴を縫うようなスケジュール調整をして、「初めまして」と名刺交換をする。名刺よりも「Linkedin」の方が遥かに情報量が多いのに、これまでは「Linkedinでつながり申請をする」というと「Linkedin?」という話になってしまっていた。この一カ月でこれまでの会議をZoomに変えている会社が殆どだが、テレカンはリアル会議よりも疲れるので、遅くても6月には「Zoom疲れ」がメディアのキーワードとして出てくるだろう。

手っ取り早い解決策は「会議自体をやめること」である。これで同じ時間軸を共有する必要もなくなり、結果的に「スケジュール調整」という1円にもならない無意味な業務は過去のものになる。テレワークを長期化するために、名刺交換は「Linkedin」に進化し、資料説明は録画映像に進化し、討議は会議からチャットに進化するだろう。これには賛否両論はあるだろうが、人間関係は希薄化し、より合理的な決断が優先されるようになるだろう。

おそらく、コロナの感染自体は収束に向かうのだろう。仮に、5月末時点で完全な収束に向かわなくても、経済活動は段階的に再開されるだろう。感染症の専門家に従い、経済活動を止めれば失業率が上がって自殺者が増える。感染症による死者だけではなく、経済活動の悪化に伴う死者数も考慮しなければならない(たぶん政府は5月中にバランスの議論をしているはず...と信じたい)。

そして、経済活動を元に戻すと、「過去の働き方に戻りたがる層」が一定数必ず生まれる。「デジタル」を嫌い「リアル」を重視する、「成果を出すこと」よりも「毎日時間通りに会社に来て、頑張っている姿を見せること」を評価する、本質的にこういったことが大好きな層が強烈に時計を前に戻したがるだろう(これについては、もはや好き嫌いの話なので、そういった人がいること自体を私は悪いとは思っていない)。

しかし、私は全部が過去に戻ることはないと思っている。過去を好む層がいるならば、それと同じくらい今を好む層がいる。そして、過去の好む層の方が今は分が悪い。というのも、日本は来年オリンピックを開催することになっているからだ。少なくとも日本については完全に収束させなければならない。今年の冬時点で再び流行が確認されれば、たぶんオリンピックは中止になるだろう。

こういうときは、政府から大企業に対してお達しが来る。そして、企業から従業員に対して「会社行事は何かと自粛せよ。当面リモートワークを推奨する」という通知が来る。もしも今年度中に会社で大人数で宴会を開き、そこでクラスターが発生しようものなら、「オリンピックを潰した会社」として社会でレッテルを張られることになる。そして、宴会の責任者は「自社を『オリンピックを潰した会社』に仕向けた犯人」として、個人に対して村八分現象が始まるだろう(既にこの現象は、地域などで起きている)。

したがって、プライベートでの飲食行為やエンターテイメントは2020年6月初めから段階的に解禁されていくだろうが、会社としてオフィシャルに解禁されるのは少なくとも「オリンピックを無事に終わらせてから...」ということになるだろう。結果として「過去に戻りたがる層」が、簡単には過去には戻れない、ということになる。そして、今の働き方がもう少しだけ進化して、ニューノーマルとして定着するだろう。

「移動」からも「時間」からも「定住する場所」からも解放されることになる。本当はコロナなんて無くてもそれができたのだが、社会の多数派がそれを受け入れなかった。本来、こうした変化には長い時間がかかる。しかし状況は一変した。「時間が10年進んだ」ということになる。しかしながら、飲食業界、エンターテイメント業界、旅行航空業界、小売業界などはコロナの影響で大変なダメージを被っているため、一刻も早く事態が収束することを私は願っている。

多くの死者や、医療機関への負荷、その他深刻な経済的ダメージが生まれているため、「コロナが起きて働き方が変わって良かった」とは全く思っていないが、「働き方」について「時間が10年先に進んだ」のは少なくとも事実だろう。全ての人が、急にやってきた未来の働き方に順応していかなければならないのだと思う。そしてそれは、たとえコロナが無くても現時点で十分にできたはずの進化でしかないため、私は全ての物事が大きく変わるものではないと考えている(具体的に言えば、VR空間で働くとかは直ぐには絶対ないと思う)。

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