見出し画像

期間限定! 今なら水谷豊のデビュー作「バンパイヤ」が今ならYouTubeでは全部視聴できる!


初代相棒亀山薫の復活が話題になっている「相棒」の主演俳優水谷豊。その水谷豊のドラマデビュー作が今ならYouTubeで全話視聴可能です!

「テレビ探偵団」など、なつかしのテレビドラマを紹介するテレビ番組で水谷の変身シーンだけが取り上げられる虫プロ製作の「バンパイヤ」
今までLDやDVDのセットで発売されることはあったが、今回のように無料視聴できるのははじめて。
お盆休みに一気見しよう! その魅力を紹介する。

バンパイヤ一族と人間との相克を描く問題作! 当時最先端の変身シーンに注目!

本作は手塚治虫の同名漫画のドラマ化。
月を見ると狼男に変身するバンパイヤ一族の一人トッペイとバンパイヤを利用して世界征服を目論む間久部緑郎との対決を描く物語。
当時、「ゲゲゲの鬼太郎」で、怪奇ブーム全盛の時代。
流行の先端を行く漫画に常に対抗心を燃やす手塚らしく、「どろろ」の系統を同じくする怪奇路線の1作だ。
やはりなんと言っても、凄いのはトッペイの変身シーンだ。
それまでの狼男はアメリカ映画でも、藤子不二雄Aの「怪物くん」に登場する狼男のように人間に毛むくじゃらの仮面を被るだけだった。
現実に人狼伝説は多毛症で身体中毛だらけだった人がモデルになったという説もあって、実際に人間が狼になったワケではなかったみたい。
リアルに毛が生えていき、本当の狼になるのはアニメと実写が融合すればこそ。
特撮技術や造形や特殊メイクが今ほど発達していなかった頃、最先端だったのは間違いない。
この1画面だけで、動物に変身する能力を持ったバンパイヤ一族にリアル感をもたらした。
トッペイやチッペイのように狼に変身するバンパイヤばかりでなく変身する動物はコウモリやら馬やら様々。明らかに人狼伝説が元になっている。なのに、本来吸血鬼であるはずのバンパイヤというネーミングになったのかは謎だ。名前が格好良かったからかもしれない。


「デスノート」「ジョジョ」を超える悪の権化・ロックの魅力

トッペイと並び、いや時にはトッペイを凌駕するほどの、大活躍(と言っても悪事)を見せたのが間久部緑郎ロックだった。
モデルになった「マクベス」同様、魔女の誘いに乗って悪の道ヘ乗り出す。
一見、虫も殺さぬ善良な青年を装い、実はダークな心を持っているのがみそ。
「ジョジョの奇妙な冒険」の宿敵ディオ、「DEATH NOTE」の夜神月を彷彿とさせる……というよりこっちが元祖なんだけど、善人を装って、財閥の一家を殺してその財産と地位を独占、政財界に確固たる地位につく。バンパイヤを利用してクーデターを起こし、一国を影で操る。果ては人間とバンパイヤ同士で争いを起こし、その渦中に日本を自分の支配下におこうと画策。
など、やってることは漫画史上まれに見るスケールの大きい悪っぷり。
原作漫画ではそこまで到達しなかったので、明らかにドラマのロックの方が悪として数段上だった。
それが一見全く悪人に見えない佐藤博が演じているのが凄い。

最初はミスキャスト? に感じてしまうのだが、途中で整形し、いかにも悪役の梶健司に交替してからようやく気づく。
全く悪人に見えないからこそ、その悪魔っぷりが際立つのだ。

人間対バンパイヤの戦争の行く末は? 漫画版「デビルマン」の先駆け

ドラマ「バンパイヤ」の脚本監修を手がけたのは、福田善之。
NHK大河ドラマ「風と雲と虹と」映画「真田風雲録」など、板東武者、忍者、今作ではバンパイヤ、この人が描く人物は終始一貫マイノリティのメタファー。
マイノリティを抑圧する体制との戦いを描いている。
ロックの仕掛けた罠で、「バンパイヤ狩り」が始まり、バンパイヤは人間に捕らえられた。
当初トッペイは、人間を倒しバンパイヤの国を樹立しようとするバンパイヤ革命委員会とは距離を置いていた。
しかし、人間のバンパイヤの弾圧ぶりをみて、心替わりし、ついに人間と対決しようと決心する。
ロックは裏で操って、人間とバンパイヤの憎しみを煽り、ついには全面戦争となる。
対立を煽っておいて、最終的にはそのてっぺんに自分が居座ろうという魂胆だ。
水谷扮するトッペイが警察の検問を突破して逃亡する辺りに、「青春の殺人者」「赤い激流」などで、若き水谷の魅力の萌芽を感じる。
そう、相棒の杉下右京のような絶対的正義の象徴とは真逆の存在。
若い時の水谷は、体制から刃向かい、逃げる姿に魅力があったのだ。
人間とバンパイヤとの血みどろに戦う様は、まさしく漫画「デビルマン」の悪魔狩りの場面と一緒。
アニメのデビルマンでは全く描かれなかった、トラウマ必至の人間とバンパイヤの戦争を逃げることなく描写している。
ここまでは漫画版「バンパイヤ」でも描かれることはなかった。
ロックが仕掛けた人間とバンパイヤの最終決戦の行方は?
と期待がかかる第19話 突如としてその戦いは終焉を迎える。
脚本監修の福田善之が降板。
さすがに、子供番組なのにこのハードすぎる展開にムリがあると判断されたのだろう。福田氏が構想をしていた結末を見ることなしに、突如番組は路線変更となる。

ドラマが放送されたのは全話が完成した後なので、製作陣が自己規制したと思われる。
それに呼応するように番組の大人部門の担当だった、渡辺文雄の森村記者と、ロックの佐藤博もここで退場する。
妥協なき福田善之氏構想のバンパイヤが見たかった。
手塚自体もバンパイヤの続きが書きたがっていたようである。

「仮面ライダー」の原点? バンパイヤ対原人の変身ヒーローもの

20話以降になると、番組はこれが本当に同じ番組? というほどカラーがガラッと変わった。
トッペイが活躍する変身ヒーローものに変わったのだ。

戦う相手は人間を野生化させるマッドPAという薬によって、原人に改造された人間と戦うことになる。
原人化されるのはプロレスラーだったり空手家だったり、森村記者のかわりに登場した石井竜一扮する林記者も武道の達人なので一大アクション巨編になる。
同じ属性の者同士が戦う図式はのちの「仮面ライダー」を彷彿とさせる。
そう言えば、「仮面ライダー」元々怪奇特撮だったのだから、似ているのも納得だ。
仮面ライダーが2号の登場から、怪奇から明るいアクションものにカラーが変わったのと同じ印象。
満月を見ないと変身しないはずだったトッペイもいつの間にか、ピンチのときにはすぐに変身できるようになっている。

この辺りも仮面ライダーと似ている。
手塚作品では変身アイテムを使って巨大になる「ビッグX」がウルトラマンに影響を与えている。
1つ1つの作品でエポックメイキング的なことを行っているが、1つの路線を踏襲することなく、次々と新機軸を打ち出している。
アイデアの出し惜しみや自己模倣を絶対やらないのが「漫画の神様」たる所以である
映画「ミクロの決死圏」が鉄腕アトムの1エピソードを元にしているは有名な話。
というワケでドラマ「バンパイヤ」はこの作品しかない唯一無二の魅力を放っている。

「早く人間になりたい!」当時の倫理感・平等感の限界?

ネタバレになって申し訳ない。
最終的にはヒューマンSという薬が開発されて、トッペイたちは普通の人間になってめでたしめでたしとなるのだが……(ちなみに原作漫画には全くない展開)
ちょっと待てよ。
「やっと普通の人間になれてよかったね」
これって、本当にめでたしなのか?
バンパイヤであることが異常で、平凡な人間が正常という考え方。
現代の多様性=ダイバーシティ
「みんな違ってみんないい」
という倫理感・平等感とはまるで違う。

「妖怪人間ベム」の「早く人間なりたーい!」の価値観と同じだ。
これでは「いや、じつはお化けの方がよくない?」
水木しげるの「楽しいな、楽しいな、おばけは死なない!」
お化け=マルコムX的には勝てない。
ひょっとしたら、福田善之路線のままだったら、「本当に正しいのはバンパイヤの方かもしれない」という結末だったかもしれない。
手塚怪奇ものは「どろろ」「バンパイヤ」「きりひと賛歌」にせよ、異形の能力は「病気」あるいは「呪い」のようなものとして描かれている。
その呪いをいかにして解除するかという軸で物語が展開する。
呪いが解かれたときに物語は終わる。
漫画版も未完だったし、ドラマ版も予定調和を超えた正真正銘の結末を見たかった。
本当のラストを迎えてモヤモヤが残ったのは、テレビ版の「新世紀エヴァンゲリオン」の最終回のようだった。
いつか別の結末を迎えたロックとトッペイを見てみたいと思う。

庵野秀明さん、樋口真嗣さん、今度「シン・バンパイヤ」なんてどうでしょう?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?