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【知的財産法】デジタルクリエイターが知っておくべき法律の話

エンジニア、デザイナー、ディレクター…
Web・広告業界には様々な職種がありますが、どんな職種にも共通して学んでおくべき法律があります。
それが「知的財産法」です。

なぜ知的財産法を学んでおくべきなのか
→身近な業務において炎上リスクを回避するためです。

とある企業アカウントが広告に使用した画像が実は無断で素材を使用していた、作成したロゴが実は他人のパクリだった…など、知的財産権の侵害をSNSで指摘され、大企業が炎上するケースは年々増加しています。

この記事では、日々の業務に潜む法律上のリスクや知的財産法とは何なのか、日々の業務で注意すべきことは何かについて簡単に解説します。


■自己紹介

こんにちは、Kenです。
私は都内のデジタルマーケティング支援会社に新卒入社し、現在は制作ディレクターと広告運用などを担当しています。
大学では知的財産法(商標関連)を専攻しておりました。
現在の仕事においても知的財産法の知識は不可欠だと感じ、特にWeb業界で働いている人、これから働く人にはぜひ知っていただきたい内容ですので本記事にてご紹介します。

■日々の業務に潜む法律上のリスク

日々の業務には様々な法律上のリスクがあります。たとえば…

  • ネットで拾ってきた画像や文章をそのままサイトやバナーに使用した

  • 似たようなロゴがないか事前に調査せずにロゴを作成した

  • 根拠がないのに他社製品より優れていると広告見出しを作成し、入稿した

実はこれ全部NGです。

それぞれ知的財産法に違反したり、違反する可能性がある行為です。
※画像の景品表示法に関する説明は今回割愛します。

悪意がないのに侵害してしまう可能性が高い点が、これらの法律を知っておくべき理由の一つでもあります。

では一体、知的財産法とは何でしょうか?

■知的財産法とは

知的財産法とは、「知的財産」について定めた法律の総称を指します。
知的財産とは、人間が考えたアイデアなどの無形のもので財産的な価値があるものを指します。
その知的財産を様々な種類に分けて権利として守るための法律が「知的財産法」です。

知的財産を守るためには様々な権利を主張することができます。
たとえば「著作権」や「商標権」、「特許権」などが挙げられます。
皆さんが身近に持っているiPhoneを例に、知的財産権について考えてみましょう。

実はiPhoneは「知的財産権の塊」です。
私たちが何気なく使用しているロック解除には「特許権」が、iPhoneのデザインには「意匠権」が、「iPhone」という名称には「商標権」が、iPhoneを守るスマートフォンカバーには「実用新案権」などが存在し、権利として守られています。

このように実体はないけれど、アイデアとして財産的な価値があるものに対しては「知的財産権」で守られているのです。

では、Web業界で働く人にとって特に意識すべき権利はなんでしょうか。
それは知的財産権の中の「著作権」と「商標権」です。

■著作権とは

著作権とは「著作物」を守る権利のことを指します。
著作物とは以下を指します。

思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの

文化庁「著作権制度の概要」より

文章ではわかりにくいと思うので、著作物に当たるものをまとめてみました。

たとえば小説や音楽、映画、写真、絵画、アニメ、ゲームなど…
人が苦労して作ったもの、工夫して作ったものの大半には著作権があるといっても過言ではないでしょう。
こういった創作物を守る権利が著作権といいます。

この著作権に関して、Web業界で仕事をする上で特に気を付けたいことが「他人の著作物の無断使用」です。

ネットで拾ってきた画像や文章をそのままサイトやバナーに使用した

先に挙げた事例が著作権に関してやりがちなよくあるミスです。

たとえばサイト制作には様々な画像やテキストを使用すると思います。
そこにはクライアントから指定されて使用するものがあると思いますが、使用するテキストや画像が他人の著作物ではないか注意しましょう。

もしネットで転がっている画像を権利所有者の許可なく使用した場合、納品先のクライアントの炎上に発展したり、最悪訴訟に発展する場合があります。

直近(2023年9月時点)ではNURO光のX(Twitter)広告炎上が話題になっていました。

また、SEO対策のためにオウンドメディアで記事制作をする際も著作権への注意は必要です。
記事の内容に無断で他サイトからコピぺしたものを使用するのは著作権侵害となります。
自分自身で気を付けていても、外部委託のライターがコピペして制作している場合もあります。
有名な事例としてDeNAのWELQ問題があります。

このように「多分大丈夫でしょ」といった気の緩みによって思わぬ事態に発展する可能性があるのが「著作権」という法律です。
一番意識すべきことは「他人の無断で使用しない」ことです。どうしても使用したい場合は権利所有者に許可を取るか、正しい引用をしましょう

著作物の正しい利用方法や引用方法については以下を参考にしてください。

■商標権とは

デザイナーやディレクターの方はもう一つ知っておきたい権利があります。
それが「商標権」です。

商標とは商品やサービスの「顔」であるマークや名称を指します。
たとえば企業や商品などの「ロゴ」が商標として挙げられます。

このような商品の名前やマークを他の商品と区別したり、品質を保証できたりする権利を商標権といいます。

商標権の侵害で最も日本を騒がせた問題といえば、東京オリンピックロゴ問題でしょうか。

デザイナーの方は日々の業務でロゴの制作依頼をいただいたり、クリエイティブにロゴを掲載したりする機会があると思います。

こういったロゴの作成や使用に関しては特に慎重になるべきでしょう。
特にロゴ制作に関しては、パクリではないと自分では思っていてもパクリとみなされたり、商標権を侵害しているとみなされたりする場合があります。

商標権を侵害しないために以下2つの注意点を意識してください。

①既存のロゴを使用する際は、ロゴの所有者に承諾を得ましょう。
使用する許可を得た場合も、デザインガイドラインやロゴガイドラインがおそらく存在するためルールに則って使用しましょう。

②ロゴの作成に関しては必ずJ-Plat Patで事前に調査しましょう。
商標とは特許庁に出願することで登録することができ、登録した順で商標権が付与されます。
この登録された商標がJ-Plat Patで確認できます。(出願中の商標も確認できます。)

作成するロゴの名称で検索して、類似するものがないか事前に確認することをおすすめします。

また、日本では商標は「先願主義」を採用しています。
先願主義とは商標を先に登録した人がその権利を持つという仕組みです。
つまり、自分が作成したロゴでも赤の他人に無断で登録されてしまう可能性もあります。

よって、ロゴを作成した場合はなるべく商標登録を行うことを推奨します。
※クライアントから依頼されて制作した場合は、商標登録については先方の法務部の仕事になることが大半です。

ロゴに関する業務を行う際は上記の点について気を付けましょう。

■まとめ

いかがでしょうか。
今一度日常の業務に落とし穴や問題点はないか、確認してみましょう。
思わぬところで他人の知的財産権を侵害したり、もしくはされているかもしれません。
炎上や訴訟リスクを少しでも減らすために、本記事の注意点を参考にしていただければ幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。

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