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UPLOAD「考えることが生きている証」

暑い日は苦手だ。私はただでさえ汗っかきなのにシャツがビショビショになって大変だし、食べるのは趣味なのに食欲が落ちる。しかし最悪な気分の折に道端に落ちている死骸のセミをみかけると、「生きていてこそ暑いと感じるのだ」という気持ちが湧いて、むしろ暑さに感謝し始める。

Amazon prime videoで配信されているアマゾンオリジナルドラマの「UPLOAD」は、テクノロジーが人の生命を無限に延長させる未来を描く。私は健康のために週に1度は湯に浸かるのだが、今日は湯のお供にAmazon Prime Videoを開いた途端に、UPLOADのサムネイルが目に飛び込んできた。説明文を見て仰天した。今オリジナルドラマとして製作費をかけるには、時代を先取りしすぎているテーマだと感じた。でも、これがもし大衆に受け入れられるなら私にとっては「嬉しい誤算」だから、アマゾンの挑戦を喜んだ。UPLOADに対する聴衆の反応を調べるのはしばらく楽しみになりそうだ。

なぜ嬉しい誤算なのかと言えば、答えはシンプルで、生命を半永久的に延長できる選択肢が個人に与えられるような未来が来るべきだと個人的に思っているからだ。

UPLOADの説明を改めて載せておこう。

2033年の世界では、死が目前に迫った人々は6つのテクノロジー企業が経営する仮想現実のホテルに”アップロード”されることが可能となった。金銭的に余裕のないノラはブルックリンで暮らしながら、贅沢な死後の世界、”レイクビュー”の顧客サービススタッフとして働いている。ネイサンはロサンゼルスに住むパーティー好きのプログラマーで、彼の自動運転の車が事故を起こした際、彼は自己主張の強いガールフレンドにアップロードされて仮想現実の世界で永久に過ごすこととなり、ノラと出会う。「アップロード」の制作指揮は「ザ・オフィス」のグレッグ・ダニエルズ。(Amazon公式より)

このUPLOADの第1話には素晴らしい点が3つあった。

「考えていることが、生きている証」というメッセージ

一つ目は、作中で主人公に繰り出された「エンジェル」のセリフ。
「意識があるからこそよ。考えていることが、生きてる証なの」そういうニュアンスのセリフだった。忘れてしまいがちな大切なことを思い出させてくれる。10代の頃にこういうテーマで思いに耽ったことはないだろうか?

「テクノロジーがこういう未来をもたらすかも」というメッセージ

二つ目は、人間の生命を延長させるための手段が、ただのファンタジーではなく現代のテクノロジーの延長にあることを前提にして考えられていることだ。もちろん、作中のアプリケーションに技術的根拠は提示されない。この作品をスライドに入れて事業計画書をプレゼンしても投資を受けられることはない。でも、「ひょっとしたら」と想像するリアリティーは備えられている。人間の死は必然などではなく、テクノロジーで立ち向かえる課題なのではないか?という仮説設定を行う人数が増えて欲しいと思う。

「本当に移動する」というアイデア

三つ目は、仮想世界にアップロードされる主人公が、「本当の意味で」移住するという部分だ。なんのことを言っているか分からない人もいると思うが、現実の世界には「意識をコンピューターにアップロードする」スタートアップが存在する。しかし今提唱されている技術では、本人は一度死んでしまい、「本人の複製」がコンピューターに作成される。それは主観的な死を克服していないので、本質的なソリューションにはなっていない。過去に流行ったSFアクション作品「GANTZ」でも同様に「複製」が採用されている。私の知る限りでは、主観的な死の回避をもたらすテクノロジーを描く作品は多くない。


私がこの作品にキャッチコピーをつけるならこうする。
「死は時代遅れになった」


以上のような小難しいことを考察せずとも、UPLOADは純粋に心から楽しめる作品にもなっていると思うので、Prime会員の方はぜひ観て欲しいと思う。今流行りの「AI」や「VR」がふんだんに登場してエキサイティングだし、Facebookが買収されていたりサムスンとGoogleが合併したりしていて笑える要素も盛り込まれている。なにより人間の感情を上手に描き出していて、「自分だったらどうするだろう」と登場人物になりきって考えさせられてしまう。主人公を死に追いやった黒幕を探すミステリー的な楽しみ方ができる工夫も施されている。エンタメ作品としてもかなりオススメできる。

感想をぜひ交換したいと思う。


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UPLOADをもう観たことがあるという方は、その世界観が現実の延長戦でどう実現されていくのか、下記のサイトでAI技術事例を調べながら想像してみてくださいね。また、実際の文献をもとに、近しいテーマで記事を書いてくれる理系のライターがいれば連絡ください。


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