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研修病院選びの原則!

みなさんはどうやって臨床研修先の病院を選んでいますか?

地域枠とかでなければ、おそらく実家のある県など地域をまず決めて、
ポータルサイトを利用し、ハイポーハイポなどの指標でスクリーニングし、
過去の見学者のクチコミなども参考にして見学する病院を5、6個まで絞り込み、見学の印象をもってマッチング順位を決める、というのが一般的でしょうか。

1、地域決定
2、スクリーニング
3、クチコミ、レビュー参照
4、病院見学
5、マッチング順位登録

部活の先輩などがいる場合はより生きた情報が手に入っているかと思います。

しかし、最後まで迷って迷って仕方がない、という方もいますよね。

これは学生の立場で得られる情報をどれだけ集めても
キャリアパスが明確に描けないため、どの病院が自分にとって最適かの判断ができない、つまりゴール設定がぼやけているために生じる迷いです。

ホ◯トなどは参考にとどめて

 ほとんどの学生がホ◯トの口コミやレビューを参考にしているようですが、正直に言って「あくまで学生目線でしかない」と感じました。

 ハイパーだハイポだとか当直回数だとか雰囲気がどうかだとか給料がどうか、などの分かりやすい指標で研修病院を分類するというのは長い医者人生を左右する重大な選択において、いささか短絡的に思います。

 学生が学生にアドバイスしていてもどんぐりの背比べのようで、本質からずれた議論や評価が蔓延しているな、というのが感想です。

 評価というのは、多角的多面的客観的に行われて初めて意味を持ちます。
 360°評価というやつですね。

 学生目線の評価は「学生」にとっての評価です。
 極端な話、学生として振る舞う上でどうか、という評価に寄せられてしまうのです。(ラクで早く帰れて単位は確実にとれるのがいい!など)

 これは一方向評価であり「医師」にとっての評価として正確ではありません。

 正確な評価というのは難しいし骨が折れます。
 信頼関係のあるロールモデルとなる先輩がいれば一番いいです。
 そういう人の意見には存分に耳を傾けてくださいね!

マッチングは医学生が社会によって評価される最初の機会

 いきなり失礼ですが、学生のみなさんには社会的信用はほとんどありません。
 組織に属して良い作用を生み出す力、事業を興し経済を回す力、それらをもって社会貢献と成すなど、多くの学生においてそのポテンシャルは未知数であり量ることができません。

 大学名はどうでしょうか?という声が聞こえてきそうですが、医療経済の中で臨床医を評価するという意味では実はほんの少ししか価値がありません。大学入試は「学力」という尺度でしか評価されていないためです。

 臨床研修マッチングはみなさんが「社会において受ける最初の評価」です。この評価は臨床医として働く以上、大学名以上について回るもので、「どの病院で臨床研修を受けたか」が人材としての価値を保証するものとなってきているのです。


ぶっちゃけ何のために臨床研修?

 臨床研修の目的は、陳腐ながらやはりプライマリケア能力をつけることです。

 まずは臨床研修制度ができた経緯について。。

 30年以上前は、診療科といえば、内科、外科、小児科、産婦人科、整形外科など、数えるほどしかなく、医師であればそこそこ全科の診療ができました。
 ひとりの外科医が腸管切除も骨接合術も帝王切開も開頭血腫除去もやっていた漫画ブラックジャックの世界ですね。

 しかし医学の高度化が進み、医師の臓器別専門分化が進んだ結果、肛門外科や、リウマチ内科、胆膵内視鏡科などスペシャリストが社会のニーズを満たす時代に変わってきたのが現状です。

 しかも昔はストレート研修と言って、卒後そのまま眼科に入局する、など「眼以外は一生診ません診れません」という医師を作っていた時代です。

 するとどうなるか、自分の専門外の領域が多くなりすぎた結果、まだ診断の付いていない救急外来や一般初診外来に来る患者を見ることにストレスを感じるようになります。
 ましてや具合の悪い時間的猶予のない患者であればなおさらです。

 誰しも得意でないことをやるのはストレスな訳です。しかも相手は物を言う人間なので、「こわい」「不安」「面倒」と感じます。

 その結果、とりあえず「診ない」「(救急車は)受けない」という医師が増え、救急車のたらい回しなどが社会問題となりました。

 そういった経緯があり、まず医師となったからには基本的診療能力をもち、プライマリケアができなくてはいけない、と医師臨床研修システムができたのです。

 少しかたい話になってしまったので戻しますが、

 きちんと臨床力をつければ、働き方、稼ぎ方、働く場所、診療科選択、など自由自在に選択できますし、risk offになります。
 学生の視点からだと医師たちのレベルの差が分からないと思いますが、
ヤバい医者、世の中にめっちゃ多いです!

 ビジネスで成功している医師、著名人医師、youtuber医師、大学出世街道の研究医、神の手臨床医、、なんでもいいですが、成功してる人は臨床の基礎力も高いことが多いです。(振り切れてる例外ももちろんいますw)

 希少性の高い「医師免許」の価値をまず育てることが、進路によらず非常にコスパが良いことを分かっているからでしょう。

 どんな業界で活躍するにせよ、前提として質の高い(臨床)医師であること、が足を引っ張る事はまずありません。


研修医 vs 病院

避けるべき病院スクリーニング

  令和の臨床研修では、いろいろな特色を持った病院が臨床研修医を募集しています。

 ハイパーからハイポまで、100床の小さな病院から1000床のマンモス病院まで、民間病院、公立病院、大学病院、、

 それもそのはず、ほとんどの病院は研修医を「欲しい」と考えています。その理由は

 社会人1年目で組織最下層なのに医師免許を持っている、研修という名目でどんな仕事もさせられる、特に当直など敬遠されがちな仕事、時間外手当を出さず安い賃金で使える、マジメなタイプが多く時間外に自発的に無給労働することもある、など

 あとあまり知られてないですが、研修医1人につき110万円/年ほどの補助金が病院に入ります。


 ・・・。

 何となく危険な構造に見えませんか?
 文句も言わず自己研鑽という名目でいくらでも働かせられる、賃金も抑えられて、オマケに補助金までつく、、、 

 体力のない病院、経営の厳しい病院にとってみれば
 研修医は「格好の搾取の対象」になりかねません。

 ということで、搾取されても構わない、無給でも勉強になるなら休日も賃金も要らない、という方は別ですが、そうでない正常な方は

 健全な経営で、中規模以上で、病床数に対して医師数が多め(3割が目安)、ある程度人気のある病院(マッチング協議会のデータから)、若手〜中堅医師の安定供給がある、増床や指定追加など病院機能が拡大を続けている、災害対策へ投資できている(災害拠点病院)
などから選ぶと良いと思います。

 逆に言えば避けるべき病院は以下です!
・100床未満の小規模病院
・医師数/病床数 < 30%
・フルマッチでない
・医師などスタッフが高齢化傾向
・病院機能が縮小傾向
・災害対策されていないような古い病院

立地の良さにカムフラージュされたクソ病院も存在しますのでご注意を。。


まだそこまで多くありませんが、JCEP(卒後臨床研修評価機構)という一定の客観的評価基準をクリアしている病院なども、まあ間違ったことにはなりにくいでしょうと言えます。スクリーニングに使うにはちょっと雑になってしまいそうですが。ご参考まで。


積極的に選ぶべき病院

 研修医が2年間で会得しなければならないこと、最も優先順位が高いのは基本的手技(スキル)です。

 一般的に「スキル」は、個人に帰属し 半永久的に 奪われることもなく 人材の希少性を高めるがために市場価値を持ちます。

 例えば大型牽引免許などイメージすれば良いですが、普通は自動車学校に30万円くらい支払ってその対価として会得しますよね?
 そういった意味では後述しますが臨床研修中はボーナスステージに近いです。給与を得ながら指導を受けて責任までも取ってくれます。

 もちろん手技習得だけでなく、医療面接から診断・治療にいたるまでの一連の流れを組み立てられることや、チーム医療の実践、社会福祉構造の理解などももちろん大事ですが、こちらの成長はある程度自己完結ができますのでそこに研修病院の質はそれほど問いません。

 目の前に病める患者がいれば、「救いたい」と考える医師がほとんどだと思いますが、脱臼整復ができる、気管挿管ができて急場をしのぐことができる、などといった手技(スキル)は社会通念上、医師を医師たらしめる価値を持っているからです。

 スキルを多く獲得することで医師の中で”わかりやすく”抜きん出ることができます。

 ではどうすれば手技を獲得できるか。
 大事な順に、

①やる機会(chance)が多いこと
②適時適切な指導・feedbackがあること
③技術習得のステップに従っていること👇画像参照
 (見たこともない手技をいきなり独りでやる、ような飛躍がないこと)

 何を隠そう指導医にとって、手技を教えることはとてもツライです、、、
 時間はかかる、労力もかかる、成人教育として頭は使う、リスクを伴う、責任は生じる、実は嫌々やってる子もいる、過干渉と迷惑がられているかもしれない泣、なのにインセンティブはない。。。

 心臓血管外科がしんどい科の代表格となっているのは、ストレスをかけることでトレーナー側の指導医が手塩にかけて育てるに値するトレーニーを選別しているのかもしれません。

 そのような中で研修医が2年間でメキメキ手技を獲得できている、余裕があり懐が深い病院は積極的に選ぶべき病院と言えます。

 病院見学に行った時、救急外来やICUなどの急性期部門で研修医が主体的に動けていて手技を実施できているか、それに対してきちんとfeedbackを受けているか、などをぜひ観察してみてください。

 参考に技術習得のステップを載せておきますね。

研修医バージョンに置き換えると、、

まず、手技を見る(レベル1)
つぎに、本で手順を学ぶ(レベル2)
シミュレータでやってみる(レベル3)
指導者付きで実施する(レベル3-4)
ひとりでできる(レベル4)
後輩に教えられる(レベル5)

といった具合ですね。

このステップを飛ばせば飛ばすほど、患者と指導医とあなたの医師免許を危険にさらすことになります!

いきなり独り立ち、みたいな病院は論外ですがw

見学先の2年目研修医が何月頃でどのレベルなのか、というのは見どころのひとつかと思います。

個人的には大学病院研修はオススメしません。
キャリアの自由度を著しく狭めてしまうからです。
その話はまた別でしますね。


最後まで読んでいただきありがとうございました!


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