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【特別対談】スタンフォード博士が教える!自己決定論に基づいた「目標達成の科学」

【概要】
本ページは、スタンフォード大学・オンライン・ハイスクール 星友啓 校長との対談記事です。

対談のテーマは
最新の脳科学に基づく「目標設達成法」
です。

2023年も2月になり、
立てたはずの目標が早くもやれずにいる方もいるはず。
そこで、スタンフォード大学オンライン高校の星校長に

・「新年の目標」はなぜ続かないのか?
・「いい目標」と「悪い目標」何が違うのか?
・要注意!間違った目標設定の「心」と「体」のリスク
・気をつけたい「Smart目標」の落とし穴
・目標達成する人が必ずやっている〇〇〇〇とは?
・幸福度を上げる!目標設定で持つべき「3つの視点」

など

モチベーションを維持し続けることができる目標設定のしかた

について伺いました。

【特別対談】スタンフォード星校長が教える!自己決定論に基づいた「目標達成の科学」

【長倉顕太(以下、長倉)】:今日は、スタンフォードオンラインハイスクールの星校長に「目標設定と目標達成」についてお伺いします。
星校長よろしくお願いいたします。

【星友啓(以下、星)】:よろしくお願いいたします。

【長倉】:収録しているのが2月の上旬ということで、多くの人が1月もしくは年末に目標設定をしたものの、既にそれが崩壊していたり、やろうと思っていたことを、なかなかできない人が多いと思います。

そこで今日は、目標設定と目標達成について星校長に伺いたいと思います。

一つ目にお伺いしたいのは、目標というと、例えば「いつ、どのように、何を達成しよう。売り上げをいくら達成しよう。」という形が多いと思うんですよね。ビジネスをやってる人だったら、「今年は1億円を目標にする」「1000万を目標にする」とか、いろいろあると思います。

そのような中で僕が感じるのは、やはり数値目標だけではどうにもならない、それでは続かないということです。もちろん一時的には続くのですが、どこかで続かなくなってしまう。もちろん、根性があるとか努力家の人はいると思うのですが、普通の人はなかなか数字だけだと続かないなと思います。その要因は、どういうものがあるのでしょうか。

なぜ数字だけの目標だと続かないのか?

【星】:ありがとうございます。
まず良い目標というのを考えると、「数値化」して、より「具体的」で、「現実的」な目標、というのが良い目標の1つの性質です。他にも重要な点があります。いい目標が持っている性質として、数値化、具体化、現実的、以外ですと、当たり前のように思えますが、「自分の興味」や「目的意識」に合ったもの。逆にそういうものでなければいけません。俗に「コアバリュー」と言われるものです。その場、その場で変わるような考え方ではなく、自分がずっと深く信じている、変わらない価値観、あと興味に沿った目標が、自分にとって良い目標ですよね。

なので「現実的で、具体的な数字」で目標を立ててしまうと、よくよく考えてみると自分の本当の興味や目的から外れてたり、外れていなくても、どのような理由で立てた目標であったか見失ってしまうときがあります。数値化すると、そちらの方(興味や目的から外れた方)ばかりを追いかけてしまうことがありますよね。

もうひとつは、目標というのはモチベーションを高められる、モチベーションを維持できるようなものでないといけません。
これは今いただいた質問のコアな部分だと思います。数値化して「売り上げをこれぐらいにしよう」や、例えば体重を減らすならば「1ヶ月で5キロ痩せて、ご褒美を自分に与えて、その後は一旦休憩」だとか、いろいろ数値化して、区切りをつけたりするわけですけれども、
そういった一時的に数値化したり、自分で報酬を与えたり、達成しなかったら罰を与えたりなどは、心理学の言葉で言うと「外発的モチベーション」となります。

自分が信じているプロダクトをみんなに共有する、ということだけで満足するのではなく、例えばこれが売れて、これぐらいの成果が出るという外発的な部分、いくらで売れたとか、いくらのお金が儲かったというのは、本来は副次的なことですよね。大事なことではありますが、実際その自分が信じるプロダクトを共有するということだけへの満足ではなくて、そこから派生する副次的な外発的なものによって動機づけられていることになります。体重を例にあげると「5キロ痩せたら」という数値目標があった場合に、「ケーキ1個食べてもいい」などの(副次的なことに)動機づけられていて、「痩せる」ということ自体に価値を見つけられないことを、外発的なモチベーションというわけです。

外発的モチベーションは、一時的には強いので、1週間くらいならばできたりします。ただし外発的モチベーションは長期的には続かないことが、今までの心理学の研究でもわかってきています。つい数値化や、報酬というものに走りがちですが、それだけではいい目標が立ちません。これらを大事にしながらも、他の要素も考えながら目標を設定していく必要があります。

SMART目標を最先端の脳科学から見てみると・・・

【長倉】:今の話を聞くと、「メンタルマネジメント」であったり、目標達成するための自身の「行動マネジメント」というものがすごく重要になると思います。行動するためには、やはり感情、メンタルの部分ですよね。メンタルの部分をよく知っておく必要がある。人間はこういうときに、このように動くということを、よく知っておく必要があると思います。

そう考えると、よく世の中で言われているSMARTの法則。一言で言うと、具体的であり、数値目標もあって、期限があるというのがSMARTの目標設定方法です。

<SMARTの法則>
S・・・Specific:「具体的で、分かりやすい」
M・・・Measurable:「計測できる、数字になっている」
A・・・Achievable:「達成可能である」
R・・・Realistic:「現実的」
T・・・Time-bound:「期限が明確」

何年か前にもビジネス書にはよく書いてありましたし、言われてることはよくわかるのですが、とはいえ出来ないと思っている人もいます。さらに、例えば僕が会社経営をしていたとして、目標設定でSMARTの法則を利用した場合、みんなわかりやすいし、それに向かいやすいですが、それが本人たちが本当にやりたいことなのか、それが本当に続くのか、というのは別のところにあるなと思います。

SMARTの法則は、星さんたちのように最先端の脳科学を知っている方々から見るとどのように映っているのでしょうか?

【星】:ありがとうございます。長倉さんが導入の部分で、「2月だが、1月に立てた目標が達成出来ていない」といったお話がありましたが、まさにそれだなと思います。

現実的だったり、数値化したり、具体的な目標に金銭的な部分がついてくることで、先ほどの外発的な動機付けが一気に入ってくるので、「1月は三が日(さんがにち)を休んで4日から頑張るぞ!」となっても、頑張れてしまうわけです。加えて、「やはりこのSMARTで目標を立ててよかったな」と思うわけですよね。
しかし、ある程度の時間(人にもよりますが1ヶ月、2ヶ月なのか)が経つと、やはり外発的なモチベーションだけでは、長続きしないということがわかってきています。なのでSMART目標はいいところもありますが、それだけではちゃんとした目標達成、長期的な部分には繋がりづらいということですね。

もっと言うと、そのSMARTの法則は大体1980年ぐらいから言われていますが、いくつか科学研究はあるのですが、実際には、基礎的な科学研究があまりないのです。SMARTの法則をやってみて、このくらいパフォーマンス上がった、上がらなかったみたいなことを、科学研究ではなく、準科学研究でやった例はいくつもあります。例えば、効果が出そうだが、脳科学的にはどうなっているのか基礎的な研究をした例があまりなくてですね、実はそんなに科学的じゃないと言われています。

科学的に紐解いていくと、今言った通り、外発的な欲求だけでは成り立たないと言われているので、SMART目標を使うにしても、それ以外の部分、何を達成しなくてはいけないのか、というところが大事になってくるかなと思います。

要注意!間違った目標設定の「心」と「体」のリスク

【長倉】:特にSMARTの目標だと、数値とか日付とかそういった意味での数値化ですよね。確かに、短期的に見ると目標を達成したくなると思います。
僕も最近、万歩計を入れたら歩きたくてしょうがなくなって、夜中とか無理やり一万歩まで歩くみたいなことをしていて、数値化ってすごいなと思いつつも、これが一生続くのかというと、そう思わないわけです。

実際、このSMARTの法則を実践した人がいたとしても、それを何年も続けられているという人もあまり見たことはないです。ということは、人間にとっての数値化の罠というか、数値化は短期的には効くが、ただ長期的には効かないとなると、人生に大きく影響を与えるという意味では、数値だけでは無理だということなのでしょうか?

【星】:そうなんですよね。確かに万歩計など運動系の目標に対しては、数値がかなり大事で、モチベーションに繋がるわけですが、なかなかその外発的なモチベーションだと長続きしないはずなのに、中には続く人もいます。

その続く人の方の研究についても様々な蓄積がありますが、外発的なモチベーションを2年3年、10年など長期的に続けてしまうと今度は心に色々なリスク、例えばうつ病になってきたりとか、あまり幸福を感じにくくなったりというリスクが上がってしまうことがわかってます。心だけではなくて実は体の面でも、(ストレスからでしょうけれど、)成人病になる率が上がったりとか、体の健康のリスクまで増えてきます。

だから、外発的モチベーション、つまり数字だったり報酬とか罰とかに動機づけられてる場合、 長続きもしないし、したとしても色々なリスクが出てきてしまう。ということなので、数値だけの目標設定だと目標達成しにくい。もし、できたとしても色々なリスクを抱えてしまうということになるので、外発的なモチベーションではなく、内発的なモチベーションの方が大切です。先ほど人間の心、メンタルの部分と言いましたけど、もっとメンタルを見つめていくような、目標設定のサポートの仕方というのも加えていかないと、それ(外発的モチベーション)だけではやはり上手くいきにくいということになります。

【長倉】:そうですね。やはり色々な方がいて、特にビジネスを頑張ってる人だと、「常に自己更新」 僕もそういうことを言いがちなんですけど、短期的な部分でいうと。

ただ毎年、「自分を更新していなきゃ気が済まない」という人たちを見てると、悲壮感を感じます。さらに、よく言われているのが、絶対自己更新し続けることはできないので、どこかで駄目な時がきてしまい、メンタルをやられることもあります。例えば、実際に毎年「自己更新し続けよう」となって、それをやり続けてる人というのは、どこかでメンタルにひずみが起こる可能性が高いということですよね。

【星】:そうですね。やはり可能性としては高いです。さらに、もちろんその自己更新の仕方が、さっきおっしゃられたように人間の心のメカニズムみたいなもの、つまり、これまでの心理学の研究結果から良いとされているものにあってるような形で出来ていればいいのですが、そうじゃない形、つまり、数値化であるとか、外発的なモチベーションに頼っていると、長期的に色々なリスクが出てくるということです。

幸福度を上げる!目標設定で持つべき「3つの視点」

【長倉】:そのような中で、星校長がよく本の中にも書いてくれている、「自己決定理論」というのが、僕自身もすごくしっくりきています。それはなぜかというと、内発的モチベーションの重要性というのは、多くの人が気づいていると思うんです。でも、どういう場合に内発的にモチベーションが出てくるのかということが分からなかったと思います。それが自己決定理論が発表されてからどのようになったのか、という説明を何度もしていただいてますが、お願いできますでしょうか。

【星】:とんでもないです。自己決定理論というのは、今ご紹介いただいたように、大体1990年とか80年後半ぐらいから人気が出てきて、今となってはメインストリームの一つになってるような心理学理論です。

先ほど申し上げたような外発的なモチベーションとか内発的モチベーションというのが1個のキーワードで、内発的なモチベーションはどのように生まれるのかというのを説明しており、大事なコンセプトとして、「心の三大欲求」というコンセプトがあります。先ほど長倉さんに言っていただいたように、「立てた目標が心の根本の部分でちゃんとあってないと」というのは、メンタルに合った目標を立てないと、ということです。

まず人間の心というのは、モチベーション(欲求)として3つ根本的なものを持っています。

1つ目が、まず人とのつながりです。
2つ目が、有能感というもので、「できた」「できる」と思えるような感覚です。学んで楽しいとか、「できた」ということだけで楽しいとかですね。そこから発生するお金や、そこから発生するステータスとかではなくて、「できた」ということ自体に満足できる、それを求めているということですね。
3つ目は、自発性です。何かにやらされてると嫌だけれど、自分からやってる、やりたいからやってるという感覚を持てる。
この3つを人間の心は求めていると、仮説を立てて色々研究してきたわけです。

最近では脳科学的にも、つながりを感じるとき、ドーパミンが出て、脳が学びやすい、集中しやすい、幸福感を感じる状況になっていることが分かりました。また、有能感を持ってるときも、人にやらされてるというわけではなく自分からやっているという感覚(自発性)を感じているときも、実際に脳が同様の状況になっていることが分かってきています。

この3つの「つながり」「有能感」「自発性」を心は求めています。それであれば、それに合うような目標設定が大切です。数値化している部分も大事だけれど、数値化の裏にある「なぜ」を求めろと言います。

その「なぜ」という部分で、つながりでは、どういう人との繋がりが持てるのか、社会へのインパクトを持てるのか。いいことができるというのは、人のためとか他の人と繋がってるということですよね。

それでいて、「できるのか」ということなので有能感。自分にとってどのような「できた」って感覚ができるのかとかですね。

そして、本当に「自分でやりたいから」という自発性なのか、それとも何かに突き動かされているのか。例えば「会社の目的だから実はあんまり気が向かないんだ」ではないか、というところです。

この3つがしっかりちゃんと自分のSMART目標の裏にあるかどうか、ということを考えながら、目標を設定してそこに向かっていくことが必要だということになります。

科学的方法であれば誰でもまねできる!

【長倉】:そうですね。ということは今までの目標設定方法は、どうしても外発的欲求によりがちだった、偏りがちだったということですね。もちろんそれで達成できる人もいると思います、続くかどうかは別として。

僕もよく本に書いたりするのですが、例えば自己啓発書で根性論みたいなのは、なんだかんだ多いです。でもそのような人たちは、何らかの現体験だったり、何らかの強烈なコンプレックスがあったりします。そういう人は意外と外発的欲求でも突っ走れるなと思います。これは科学的ではないかもしれないし、僕の体感的なものかもしれませんが、そのように僕は思っていて。じゃあ普通の人が、その人(多くの著者)が言うようなことができるのかというと、結構できないなと思ってたりします。

それが例えば、世の中の情報として、SMARTの法則で言われているように、数値化して具体的で期限を決めれば(目標達成)できるんだ、みたいな単純な論調が広がりやすいと思います。実際それで達成してきた人が、本を書くというのが世の中なので。

ただ、普通の人=凡人が実際にそれができるのかというと、できない。そうなったときに、やはり今星校長がおっしゃってくれたように心の三大欲求みたいなのを知っていれば、「なぜ目標を設定したけど達成できなかったのか」という原因がわかりますよね。多分そこで、できなかった原因として、内発的欲求、心の三大欲求とか、脳のしくみを知らなかったら、自分は駄目な人なんじゃないかと思い込んでしまい、どんどん落ち込んでいくだけですよね。そこでまたメンタルがおかしくなってしまうと思いました。

ということで、今回星校長に目標設定、特に今、2月上旬に収録してますが、多くの人が1月に設定した目標がなかなか達成できなくて、もう既に挫折して、こんなことも考えたくないというような人もいると思うのですが、実は、星校長による「スタンフォード式 目標達成の科学」という形で講義をしてもらった動画があります。

そして今回、こちらもぜひ皆さんに紹介したいなと思っていますので、僕からの連絡を引き続き待っていてもらいたいなと思います。ぜひそちらの方を期待していてください。ということで、星校長に今日は目標設定についてお伺いさせていただきました。どうもありがとうございました。

【星】:どうもありがとうございました。


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