「同意(肯定)できなくても理解(共感)はできるということ」と幼児期のごっこ遊び

保育士や幼稚園教諭を目指す学生さん相手に、カウンセリングの初歩的な心構えやテクニックを教える授業を担当しています。そこでよくある質問に
「『カウンセリングのときは相手の話を否定しないで聴く』とのことですが、どうしても同意できない考えが相手から出てきた場合はどうするのですか?」
というのがあります。


『同意(肯定)』できなくても『理解(共感)』はできます。
例えば、『サンタさんはいる』と信じている幼児に同意することはできませんが『この子はサンタさんがいると信じているんだ』と理解してそのファンタジーを共有することはできます。
おそらく、真摯に耳を傾けて聴けば、その子はその子が信じている『サンタさん』と『サンタさんが存在する世界観』について語ってくれるはずです。
『この子は世界はこう捉えているんだ。確かにその世界観ならば、サンタさんがいても不思議ではない』
と理解したうえで、その世界観に基づくファンタジーを一緒に楽しみ、共有するならば同意できなくても否定しないで話を聴くことができます。
(もちろん他者の世界観に基づくファンタジーを共有するのはとても難しいことですので、慎重に行い、自分が理解したことを伝え返して確かめ、違う点がありましたら、そのつど修正する必要はあります)


こう説明すると、幼児教育や保育を専攻する学生さんは
「なんか、カウンセリングって特別なテクニックを使うのかと思っていましたけど、幼児教育でよく強調される『遊びの時のファンタジーの共有』とか、そういうのと似ていますね。ままごと遊びとかごっご遊びで『うそっこ』だけど、その『うそっこ』を共有して真剣に向き合うみたいな感じ…」
とだいたい納得してくれます。(厳密に言うと、カウンセリングの場合は話し手も『うそっこ(ファンタジー)』と思っている場合と、そうでない場合があります。また、その境界があいまいなこともあります。あ、でもよく考えたらこれは幼児のごっこ遊びでもそうですね…)
カウンセリングは特別なことではありません。
皆さんが幼児のとき遊びのなかで体験したことです。
また、大人になってからも音楽や演劇でファンタジーを楽しんでいるときにしていることです。

普段の会話においても、同意できない他者の考えも否定せず『理解』しようとするならば、ちょっとだけ人間関係が楽になるかもしれません。

また、否定する必要がある場合でも、相手の話をよく聴いて自分が理解したことを伝えて、それがあっているか確かめ(違っていたらまたよく話を聴いて、また伝えなおして…を、相手が『私の言いたいことをあなたはちゃんと理解してくれた』と言うまでくり返して)、その上で理由をつけて否定すると相手も納得しやすかったりします。

お試しあれ(*^▽^*)

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