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日記的撮影/石川町〜山下公園

街撮りを日常的にやっていると日記的な組み写真になってしまうのが面白くて、「ただただ撮る」という行為を楽しむようになって久しい。
 
何故、この1枚を撮った?
この時、何を言いたくて(見せたくて)構図を決めた?
 
それは、目的無しにカメラを持って「感じるままに撮った結果」の「振り返り」。
勿論、撮った写真にはそんな疑問の答えが記録されている。
だからその答えを呼び起こし、アウトプットする際の演出を決めていく。
 
被写体が魅力的だった。
構図が面白かった。
色が素敵だった。
その瞬間が大切だった。
 
答えはいっぱいあるけれど、その1枚に答えは多く無い。
だから、その日撮った写真を全部見る事は面白いし、
日記という記録としての価値があると考えている。
 
その日、JR石川町駅近くに行く所用があった。
 
所用は1時間もかからないで終わるが、そこまでの移動にはそれ以上の時間が必要になる。それならば、街歩きしながらスナップを撮ってみようと思い立った。
 
今日のセットは最小。
R5にRF24-50mmを装着し、被写体によってRF16mm F2.8とRF35mm F1.8を使うべく、最小のショルダーバッグにその2本を投げ込んで、出かける事にした。

EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO400 f/7.1 1/800s 28mm

JR石川町駅は付近は、被写体としては、面白い場所。
海側へ向かえば元町や中華街、山下公園といった如何にも横浜らしい世界が見えるのに、反対方向へ向かうと「昔ながらの下町」が駅を境に存在する。
 
山手の丘は富裕層が住むエリアで昔ながらの下町とは対照的。
川向こうにはドヤ街とも言われる「寿町」があって昭和な時代には毎冬誰かが溺死する闇もあったが、高度成長期が終って姿を変え今では外国人のバックパッカーが集う安宿街に変化しつつある。
だから「そんな異空間の今を撮りたい」と、無意識に思ったのだ。
 
そんな石川町駅周辺でも昔ながらの店舗が減り、「今時のお洒落な店舗」が増えてきたのは言うまでもない。

EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO400 f/7.1 1/800s 50mm

この看板にもある「タギング」が描かれるようになったのは、何時からだろう。
 
「タギング」は元々ストリートギャングの縄張りを誇示するためのサインであり、アートとして捉える向きもあるけど、私から見れば落書きでしかない。
だからこれをモチーフとして選んだ事はあまり無く、文化の記録として構図に入れる事はあっても、追うような撮り方はした事がない。
 
ただそれでも、これも「今」を示す記号の一つ。
そしてこのチグハグな被写体は、その記号によって意識付けされているから撮ってしまうのだろう。

EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO400 f/7.1 1/400s 24mm

石川町駅を通り過ぎて海方向へ向かうと、途端に気配が変わる。
観光地へ向かうから・・と言うよりも、開港時から続く文化の発信地であった元町の光によって照らされて、闇だった世界が彩づいていくように変化する。
 
例えば歩道にあるベンチでさえ独特で、元町まで行く間の空間に特別感を与える役割を担っている。
でも同時に、コロナ禍の影響は傷跡として影を見せる。
長く営業を続けてきた店が姿を消し、跡取りが居ないまま営業を終了する店も加わって、空き店舗が増えて寂しい風が吹いていた。

EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO400 f/7.1 1/800s 35mm

街のスナップは、面白い。
被写体を決めていなくてもカメラを向けることで「変化した何か」を見つけ、それを記録する事ができる。
そしてその写真は、自分にとっての「何か」を考える時間を与えてくれる。
 
だから、こうやって撮る写真は、「日記」になるのだろう。
記録と記憶が一致するための「大切な鍵」にも、なるのだろう。

EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO400 f/14 1/320s 46mm

ウィークデイの散歩で楽しいのは、生活が見えること。
この日の元町では、山手の丘向こうにある北方小学校から帰る子供達の歓声が、楽しそうな色を纏って響いていた。
 
アーケードが無い代わりに店舗の1階部分を1.8m凹ませて歩道を広げ、歩行者の歩くスペースを広く取り雨や日差しを凌げる形にしたのは、各商店の自主的な行動だったと聞く。
そしてその行動は、日本初の「まちづくりルール」策定に繋がっている。

EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO400 f/7.1 1/250s 24mm

そんな街から中華街方向へ渡る橋は、観光客があまり通らない生活道路。
この子達は、この地に増えたマンション住まいなのだろう。
 
観光ポイントとしては赤レンガ倉庫などがある「みなみとみらい地区」や「新港埠頭地区」の人気が上がり、トップブランドのホテルも増えてきた。
代わりに関内地区から山下町地区では企業の使用が減って集合住宅は加速度的に増え、古い建物の多くは消えていく。
横浜は「古いモノ」と「新しいモノ」の共存が特徴的で面白かったのに、今では東京の1地区にしか見えないような建物ばかりになってきた。
 
とは言え、観光地と言われる中華街や山手辺り、下町エリアなら野毛等が昔の風景をどうにか保っているから、横浜らしさは辛うじて生き残っている。

EOS R5 RF16mm F2.8 STM
ISO400 f/7.1 1/400s
EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO400 f/10 1/250s 50mm

定点観測的に撮るこの1枚。
 
昭和4年に建てられたままの外壁が残り、コーニスの形などに古典主義の様式があって、今となっては希有な建物の一つ。(平成13年に大規模改修工事実施)
 
その質感に惹かれているだけではなく、壁にある時計と歩行者、そして立木の枝が織りなす構図が好きだから、ここを通るとつい撮ってしまうポイントになっている。
 
そうだ、久しぶりに山下公園へにも行ってみよう。
この前のリニュアルで「映え」を狙ったスポットを作ったり、「足湯」が楽しめる施設ができたりしたので一時期通ったけど、その後をちゃんと見てなかったりするしね。

EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO400 f/10 1/250s 50mm

こういった写真には、Nik-Collection 6のAnalog Efexを使ってちょっと古いトーンを被せてみる。
 
カリッとしたデジタルカメラっぽさをPhotoshopのプラグインで弱めて仕上げると、フィルムトーンをかけるのとは違った仕上がりになるのが面白い。
 
とは言え、「映えスポット」な狙いとしては成功しているのだろうか?
って思ってしまうのは、既に「映え」を意識しなくなった自分自身の感覚が古いからだろう。
 
ふと、空を見上げて、以前に比べて鳶が多い事に気づく。
コイツらが多くいると言う事は、まだ巣を作れる場所があるという事?
観光客から餌になるモノを巻き上げるつもり?
 
そう言えば、腹が減った事に気づいて苦笑い。
(撮影に没頭して食べるタイミングを外していた)
 
こんな日記的撮影は、これからもずっと続けるのだろうね。

EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO400 f/13 1/250s 50mm



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