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「転職」がすべてを変えてくれるわけじゃない

ぼくの友だちに、なかなかひとつのバイトが続かない人がいた。

理由は毎回同じで、『店長とモメたから』である。

ただ、いまやってるバイトはもう1年くらい続いていて、彼に『バイトの調子はどう?』と聞いたら『店長がすごく良くしてくれてる』と言っていた。

それで、今日言いたいのは『職場は人間関係が命だ!』ではなく(それもめちゃくちゃ大事だけど!)、『転職ですべてが好転するわけじゃない』ということ。

最近は日本でも転職が珍しくなくなってきて、キャリアアップとはまた違った観点の、『いまの職場が合わないのなら、転職して新しい環境でリスタートしよう!』という、良い意味での『逃げ』の転職を推す声もよく聞く。

ただそれは半分は正解で、半分は不正解だ。

理由は、人間関係も仕事で発揮する価値も、『その人自身』と『環境(周囲の人)』のかけ算によって構成されているから。

SNSに流れてくる、良い意味での『逃げ』の転職を推す言説は、どうも前者の『その人自身』の存在を矮小化しすぎているような気がする。

もし仮に環境を変えて万事が好転するのであれば、ぼくの友だちは少なくとも2つ目の職場ではうまくいっていたはずだ。

けど実際は、2つ目の職場も出勤1日目に店長へタテついて、勤怠記録のつけ方すらわからないまま退職してしまった。


ぼくの友人、申し訳ない。

いままでバイトがなかなか続かなかったのは、歴代のバイト先店長がたまたまみんなハズレだったからではなく、少なくともあなた側にもなんらかの原因はあったと思うんだ。

いまのバイト先ではすごくイキイキ働いてるようで、ぼくはうれしいよ。


人間関係も仕事で発揮する価値も、「その人自身」と「環境」のかけ算によって構成されている

最近、エンゼルバンクという『転職』がテーマの漫画を読んだ。

そのなかで『転職がすべてを解決してくれるわけではない』といった趣旨の言葉が出てくる。

その言葉は、文脈としては『キャリアアップ』の意味合いが強くて、いまの職場は雑務ばかりでつまらないと不満を漏らす転職希望者に対して、キャリアプランナーの人が『次の会社でいきなり自分のやりたい仕事をできるとは限らない。キャリアというのは常に地続きで、結局は経歴でしか語れない』といった旨のアドバイスをしているのだけど、根っこで言いたいことは『逃げ』の転職でも同じだ。

『転職』が、自分のすべてを変えてくれるわけじゃない。

最近、スキしてくれたときに出てくる一言(最大10個まで設定できる!)を、エンゼルバンク中でいいなと思った言葉に一新しました!(その前はキングダムだった)
みんなどんどんスキボタンを押してね!!

あと、ぼくがいままで読んで最も影響を受けた本のひとつに私とは何かーー「個人」から「分人」へというものがある。

そこでは、この本の著者で小説家でもある平野啓一郎さんが、『個人』に変わる『分人』という概念を提唱している。

これはひとことで言うと『この世界にたったひとつの”本当の自分”なんてものは存在してなくて、過ごしている環境や相手によって、ぼくたちは複数の分人を使い分けている』という考え方だ。

ぼくたちのキャラや発揮する能力というのは、自分のなかにある『それら』と『環境』との相乗効果によって表出される。


逆に言えば「環境」によって大きく変わる可能性もある

ただ、だからぼくが『転職』に意味がないと言いたいわけでは全くない。

人間関係も発揮する価値も『その人自身』と『環境』とのかけ算によって決まるということは、逆に言えば『環境』が変わればそれらも大きく変わるかもしれないからだ。

怒りぽかった友人が、あんな得意げにバイト先の話をするようになったのはいまのお店のおかげだし、ぼく自身、生まれて始めてやったバイトが4ヶ月しか続かなくて『おれ社会人に向いてないのかな...』とちょっと自信を失っていたけど、2つ目はとても楽しい職場で1年半続いたという経験もある。

(2つ目のバイト先を退職したのは、休学して東京に行くためだったから)

だからまず大事なのは『転職ですべてが好転するわけじゃない』ということ。

『転職』に過度な期待を背負わせるのは禁物だ。

『思い描いていた生活と違う...』と、あとあと自分を苦しめかねない。

ただ、本当にもうダメだと思ったら(理想はそうなってしまう手前で)、転職する(もしくは辞める)こと。

新しい環境が、新しい自分や思い描いている自分を、引き出してくれる可能性だってあるから。

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