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思い込みって大事な時は大事じゃないですか。その思い込みの力で上手くいくこともあるじゃないですか。でもその思い込みの力で悪くいくこともあるじゃないですか(©大森靖子)

子どもの頃、親が死ぬのが怖かった。自分が死ぬのが怖いんだけど、親が先なのは間違いないので。そしてそれはクリアした。二人とも。となると次は「告知」ですよね。子供の文化(特にコミック、姉が読んでた少女漫画の影響って大きかったなと思う)って一生に影を落とすね。おかげで一生「死」が怖いんだけど。

糖尿病は治らない。寿命が10年短い。
「告知」はある日突然やってきた。
それも妙にマイルドなかたちでやってきた(ガンではなかった)

ヤベー!と思って、とりあえず先生の言うことを聞き、処方されたお薬を飲み(ジャヌビアという)『食品交換表』に従い1600キロカロリーの食生活に変えて、ウォーキングを毎日欠かさず続け、3ヵ月過ぎたあたりから、とりあえず結果的に数値は正常に戻った(なんだ治るじゃん!)

「糖尿病は治らない」という根拠はどこにある?(探しに行こう)

「事実は、糖尿病は決して治らない。血糖値が正常化しても、一度なってしまったら糖尿病は決して治らない。血糖値が正常化するのは決して稀でなくよくあることだが、それはあくまで一時的であり、糖尿病は決して治っていない」

「答は、十二年のツケは回復不可能だ、ということだ。糖尿病はひと口でいうと、長年の不摂生のツケが溜まってなる病気だ(中略)したがって、糖尿病の治療を始めるにあたっては、まず治らないという事実を受け入れる必要がある。繰り返すが、この病気の進行に例外はないし、放置していて治ることは絶対にない」
(牧田善二『糖尿病専門医にまかせなさい』文春文庫 2009年初版 ※単行本は2006年刊)

ついに見つけました!(明確に述べてらっしゃる)
しかし!
今回この note で初回に引用するくらい激推しの、
『糖質中毒』の牧田善二センセイじゃないですか!よりによって。

それでもその後、2014年発行の本では…

「合併症は治る時代に入った」
「今は糖尿病治療の革命期」(『第一章』より)

「治らない」の断言についてはトーンダウン?して、 

「この『膵不全』の状態を『糖尿病』と呼んでいるのです。一度、『膵不全』になると、残念ながら、その機能を回復することはできません。つまり、糖尿病は治らない病気なのです」
(牧田善二『糖尿病で死ぬ人、生きる人』文春新書 2014年初版)

という感じにアップデートされてる。

ちなみに先に引用した『糖尿病専門医にまかせなさい』では「あとがきに代えて」として東海林さだおさんとの対談が載っていて、

牧田  それから、今は血糖値よりもヘモグロビンA1cという物質のほうが大事なんですね。
東海林 ヘモグロビンA1cって?

牧田  血液中の酸素の運搬役をつとめるヘモグロビンに糖がくっついたもの。この数値は一、二ヵ月間の血糖値の平均的推移を反映しているので、糖尿病の状態を見るのに理想的なんです
東海林 ふーん。

というように、東海林さんはヘモグロビンA1cをまだ知らないのだ(この文庫が出版された2009年ではまだそんな感じだったんだろう…ってのが言いたい)


(牧田先生はやはり第一人者。誠実と思う)

そしてついに、「糖尿病は治らない」を具体的に説明してくれる本がありました!長くなりますが引用します。

「糖尿病に関して、皆さん、よく耳にするのが「糖尿病で薬を飲み出したらやめられない」「糖尿病は治らない」というフレーズでしょう。これは、結論からいえば「本当」です。というのも、糖尿病と診断されたときには、一説によると、何と5割ものβ(ベータ)細胞が機能停止に陥っており、そのうちの約3割は気絶状態だと指摘されているからです。ベータ細胞は、すい臓にあるインスリンを分泌する細胞です。人体でインスリンを産生できる細胞は、このベータ細胞だけです。適切な対応をすれば、機能停止したベータ細胞が復活する可能性もありますが、おおよそ2割は死滅してしまっていて、それらの回復は不可能だと言われています。つまり、「あなたは糖尿病です」と医師から診断されたときには、ある程度ベータ細胞は減ってしまっているために、「頑張っても8割程度までしか戻らない」可能性が高い。ということです。さらに不摂生を続ければ、気絶状態の約3割さえも死滅していってしまうということは、容易に想像できます。ところが、実際には多くの人が、それまでの食生活を変えずにいるため、ベータ細胞を減らしていってしまいます。すでにお伝えした通り、この段階では痛みも不具合もないからです。そして、薬をやめたり減らしたりできず、ずっと飲み続けることになります。(水野雅登『糖尿病の真実』光文社新書)

この水野さんの本はホント素晴らしくて!
(でもやっぱオレは治りそうな感じするなぁ…)


想像をかるく超えてきたスゴい本!


そしてさらに…凄い本が!

1.砂糖税の導入2.子どもへの砂糖、異性化糖を添加した飲食物の販売の規制
3.病院での砂糖、異性化糖を添加した飲食物の販売の禁止
4.厚生労働省の食事摂取基準からの糖質の摂取目標量の撤廃

「勝手な提言」(『「糖質過剰」症候群』(清水泰行『「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因』光文社新書より)

という素晴らしい本に出会えたのも今週のこと。何がどう素晴らしいかって、この3~4ヵ月、素人の私ごときが考えたことなんぞ、すべてここに詳しく書かれれていたからなんですよ!あらゆる既存の業界や体制に忖度なしの本気な筆致!が出色で。先の『糖尿病の真実』の水野雅登さんと並んで、とにかく「ガチ」なんですよ!(この本についてはまた触れてみたい)

わたしが今回言いたいのは、全文を読めとか前後の文脈を無視するなとか、そういう話ではなくて…

それで言うなら、例えば『プレジデント』(2023年6月2日号)特集「間違いだらけの健康常識100」『命を縮めるクスリ、のばすクスリ」和田秀樹さんの対談者である鳥集徹さんは和田秀樹さんの…

「実は私は重症の糖尿病です。血糖値が高いときで660あって、今は300でコントロールしています。普通なら300でも許されないですが、代わりに半年に一度は眼底の検査をして、3ヵ月に一度は腎機能の検査をしています。糖尿病で怖いのは目が見えなくなることなので、それが防げれば血糖値が高くても問題ない」

という発言を受けて

 「若い人や働き盛りの人たちが清涼飲料水を毎日3~4本も飲んで血糖値が高い状態になっているのなら、生活習慣を改める必要があるでしょう。しかし、年齢を重ねるほど、食事制限や血糖コントロールにこだわりすぎないほうがいい」

と寄せていくわけです。


和田秀樹さんは東大医学部出身の医師だけど(昔から、最近はまたさらに)本が売れまくっているベストセラー作家だし、たしかラーメン大好き人間だし…

「かくして、糖尿病、高血圧、心不全を抱えながら、薬はほどほどにし、美食はやめず、毎日、ワインを飲んでいる。それで寿命が短くなっても、これが自己決定だと思っている」
(『和田秀樹が『生と死』に挑む!「苦しまない死に方」の分かれ道』サンデー毎日 7月2日‐9日合併号より)

和田秀樹さんは(記事によれば)コロナ禍が始まる前の2019年の正月に血糖値が660もあることがわかって糖尿病が発覚し、死を覚悟し、残りの人生を充実させるほうが大切だと考えたとのことなんだけども、これってわりと最近のことですよね。いくら売れっ子作家でバリューがあるからって、『プレジデント』にせよ『サンデー毎日』にしても、こういうストーリーを一般化してはダメなんだと思うわけです。


活躍して、売れてても、みんな大変なんだよな…


 
わたしは子どもの頃から書店や古本屋が大好きで、90年代に「ブックオフ」が登場してからは、土日のどっちかはかならず出かけるブックフェチ(週末ディガー)となった私ですが、それを続けてわかったことは、書籍って、本にしてもらえるくらい内容のクオリティはあるにせよ、だからといって特別に偉いわけでも何でもなく、人の数だけ考えがあるのと同じで、その人の考えを(その本が発行された時点での)本という形で喋ってる述べたりしてるだけってことです。それは古いものも、新しいものも。両論併記?評価の分かれる意見についても。その結果、情報というものが思い込みを生むことの危うさについて、改めて考える必要があると思うのです。



美味しいものを食べることが人生で推され過ぎてる


「(映えてるものも最近は美味しくつくられてるんですね、映えてるものは美味しくないって決めつけてた2,3年前の私もさようならってことで)思い込みって大事な時は大事じゃないですか。その思い込みの力で上手くいくこともあるじゃないですか。でもその思い込みの力で悪くいくこともあるじゃないですか…っていうすごい今当たり前のことを言いました」
 
俺が言いたいことなんて全部、
大森靖子さんが言ってくれてたわ(ポロっと、いとも簡単に)



うわのそらで生きてたい僕らが、現実に殺られてしまう前に
(本や雑誌に書いてあることなんて信用するなよ~)

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