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【コラム】地球沸騰化時代とサルの出没

 最近、北部九州であるニュースをよく目にするようになります。

 それは、サルの出没情報です。

 福岡県那珂川市では、男児がサルに噛みつかれるという事件も起きています。

 このニュースを見て、ある言葉が頭をよぎりました。国連のグテーレス事務総長が発した「地球沸騰化の時代」という言葉です。

佐賀で広範囲に145回の出没

 佐賀県には「防災ネット あんあん」という、防災情報や防災情報、火災情報などが流れてくるアプリがあります。外国人への災害情報の発信なども担当しているので、私もスマホに登録しているのですが、最近、通知が来るとほとんどが「猿の出没について」。

「猿の出没について」の情報が並ぶ「あんあんメール」

 今年1年、どのくらいサルの出没情報が佐賀県で出ているのか、少し調べてみました。誤差もあるかもしれませんが、あんあんメールの情報を転送している佐賀県危険動物情報というサイトの情報をもとに、出没情報を数えてみたところ、2023年10月12日現在、2023年1月1日以降で、145件の出没情報が見つかりました。

各月での佐賀県での猿出没情報

 昨年との比較はできていませんが、明らかに増えている気がします。特に、9月は43回もの出没情報が。

 さらに言えば、例えば同じサルが複数の人に目撃されたのではなく、佐賀県の東部や西部など、いろんな場所で見つかっていることから、かなり多くのサルが佐賀県内を走り回っているものと思われます。

「地球沸騰化の時代」とは?

 一方、「地球沸騰化」とは何か。2023年8月、世界気象機関(WMO)と、EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は、「2023年7月が人類史上最も暑くなる」とのデータを発表しました。「世界の平均表面気温は16.38℃で、1991年から2020年の9月の平均を0.93℃上回っていました」とのこと。

 この発表を受けて、グテーレス事務総長は、以下のように発言しました。

地球温暖化の時代は終わりました。地球沸騰化の時代が到来しました。もはや空気は呼吸するのに適していません。暑さは耐えがたいものです。そして、化石燃料で利益をあげて気候変動への無策は容認できないものです。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長

 私もSDGs(持続可能な開発目標)に関するセミナーなども担当させていただきますが、その中で、地球温暖化により、北極の流氷が溶け出している▽海面上昇をすると、佐賀県が海水の下に沈む恐れがある▽大型台風が襲う▽日本でおコメが収穫できる緯度が上がり、北海道でしかコメ収穫ができなくなる―などの推測の話などを紹介してきました。それがさらに、「地球沸騰化」という新たなステージに入ってしまいました。

動物とも共生できるのか

 サル出没のニュースを見て、地球沸騰化のワードがよぎったのは、「里山で餌が取れなくなり、サルが市街地へ出てこざるをえなくなっているのではないか」ということ。サルの交尾時期は8月の終わりから1月にかけて、とのこと。活動が活発化する中、餌を求めて市街地に出てきたのではないか、と考えました。

 もちろん、サルの生態についてはド素人ですが、例えば2021年8月には、国際研究チームが「アフリカ大陸の熱帯雨林にすむゴリラなどの大型類人猿が、地球温暖化や土地開発など人間の経済活動の影響で、今後30年間で生息地の9割以上を失う恐れがある」とのシミュレーション結果を公表しています。

 いろいろと外国人との「共生」を訴えてきたこのnote。人口減なども課題ですが、この地球温暖化も、大きな地球規模の課題です。動物とヒトも、共生ができるのか。この沸騰化の右肩上がりの”角度”をなるべく緩やかにするため、少しでもエコな生活を心がけようと思ったニュースでした。

山路健造(やまじ・けんぞう)
1984年、大分市出身。立命館アジア太平洋大学卒業。西日本新聞社で7年間、記者職として九州の国際交流、国際協力、多文化共生の現場などを取材。新聞社を退職し、JICA青年海外協力隊でフィリピンへ派遣。自らも海外で「外国人」だった経験から多文化共生に関心を持つ。
帰国後、認定NPO法人地球市民の会に入職し、奨学金事業を担当したほか、国内の外国人支援のための「地球市民共生事業」を立ち上げた。2018年1月にタイ人グループ「サワディー佐賀」を設立し、代表に。タイをキーワードにしたまちづくりや多言語の災害情報発信が評価され、2021年1月、総務省ふるさとづくり大賞(団体表彰)受賞した。
22年2月に始まったウクライナ侵攻では、佐賀県の避難民支援の官民連携組織「SAGA Ukeire Network~ウクライナひまわりプロジェクト~」で事務局を担当。
2023年6月に地球市民の会を退職。同8月より、個人事業「人とヒトの幸せ開発研究所」を立ち上げ、多文化共生やNPOマネジメントサポートなどに携わる。


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