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万年筆を買って、モノの値段について思ったこと

万年筆を買った。今まで、文具店のショーケースには入れてもらえない、3000円ぐらいのを使っていたけれど、ほぼ日手帳にロイヒトトゥルム、仕事からプライベートの思いつきまでなんでも書く用のノートと、日々万年筆を使うことが多く、そろそろペン先が金でできている、ちょっと本格的な万年筆が使ってみたくて手に入れた。手に入れるまでにあれこれ検討して感じたことを書きます。

国内外に色々な万年筆のブランドがあって、それぞれのブランドに色々なモデルがあり、そのモデルの中でも色々なバリエーションがあり、と色々な選択肢がある。使い道もそうだけれど、個人の感覚や好みによって違うので、万人に共通する正解があるわけではないところも面白い。

今回買う万年筆の条件は、ペン先が「金ペン」と呼ばれるもの。値段は1万円前後、ぼくのふだんの使い方を広くカバーできるもの。この価格帯で「金ペン」となると、メーカーはパイロット、セーラー、プラチナの国産メーカーにしぼられる。パイロットは今まで使っていて、プラチナはともだちが使っていて親近感があったのでこの2つに。

モデルは、「金ペン」の入門モデルの定番、パイロット・カスタム74、プラチナ・#3776・センチュリーに。つぎはペン先の太さを決めないといけない。ネットでAmazonのレビュー、ブログのレビュー、Youtube、Instagramやtwitterでも散々しらべて、実際に書いて見ないと決められないな、ということで、試筆台と呼ばれる自由に全種類のペン先を試せるサンプルで、持参したノートや手帳にふだん通りに書いて好みの太さを探した。とはいえ、カスタム74は会社から15分ぐらい歩いたところにある文具店で、#3776はビックカメラと、両方を揃えているところがなくて別々の店に行った。

見た目はシャルトルブルーという透明ブルーの#3776が気に入ったが、レビューなどの受け売りだと、どうも品質にばらつきがあるとのことで、カスタム74にしぼった。が、まだまだ決めることがある。次はペン先の種類。

書いた字がちょっと太めな方が、本格的な万年筆な感じがするので、自分の使い道にあう中でなるべく太いものが欲しかったのだけれど、実際書いてみると、今まで使っていた「中字」より、もうちょっと細いのがしっくりくることがわかった。ややこしいのが、細字と中細、中字には、それぞれ普通のと、軟らかいペン先が選べる。力の加減で線の太さがコントロールできる、ということらしい。そう聞くと軟らかいほうが欲しくなったけど、利き手ではない右手で使うことを考えると、そこまで細かいコントロールは無理そうなので中細に。

ここまできて、このペン先なら、同じ値段でカスタム・ヘリテイジ91、これの透明、かつコンバーターなしでボトルインクが扱えるカスタム・ヘリテイジ92というのが3千円ぐらい足すと買えることがわかった。

カスタム74は、丸っとした先端に黒に金メッキのパーツで、なんだかオジサンくさいのが気になっていたけれど、ヘリテイジはパーツ先端がフラットで、パーツがクロームメッキなところが気に入ってしまった。が、伊東屋のショーケースにあるのはチラ見したけれど、候補ではなかったのでじっくりはみていないし、試し書きしたのはカスタム74だしで、こちらを買うことにした。

つぎはどこで買うかが問題。Amazonでは7,200円ぐらい、ビックではポイン9,720円+ポイント10%、伊東屋では定価の10,800円。一番安いAmazonか、値段は中間だけれど、会社帰りにすぐ買って帰れるビックカメラか、知識が豊富で、自社で万年筆の修理や調整できる職人まで雇っている専門店の伊東屋か。

こんなことを悩んでいるときに、伊東屋に見に行ったときのことが浮かんだ。ぼくがショーケースをながめていたときに、あれこれ調べる前のぼくぐらいの知識の人が、お店の人にあれこれ質問しながら、キャップレス万年筆の試し書きをしていた。この万年筆も軸やペン先の材質、太さなど、色々なモデルがあるので、お店の人はお客さんのニーズあいそうなものを、丁寧に説明しながら接客していた。

Amazonの価格と伊東屋の価格差は3600円。ぼくが「カスタム74の中細」に決めるまでに2週間ぐらい、毎晩眠い目をこすりながら、ひたすらネットでレビューをみたり、35℃もあるなか、貴重な昼休みに試筆に行ったり、なんども伊東屋やビックカメラに行った時間を考えると、パッと伊東屋に行って店員に相談して決められるのなら、3600円はとても安いと思った。調べたりしている間も楽しかったのでいいのだけれど、そこをショートカットしたい人には、価格差分の価値があるな、と思った。


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