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「寄り道しますか?」嬉野温泉旅館大村屋のWeb活用が規格外だから見てほしい

こんにちは。ライターで、株式会社なかみ代表の大塚たくまです。

2022年9月23日。本日、西九州新幹線が開業しました。ぼくも沸き立っている嬉野温泉駅へ行って、動画を撮ってきました。

沸き立つ嬉野に、江戸時代から営業を続けている老舗旅館があります。旅館大村屋です。

ぼくが旅館大村屋と出会ったのは2019年。佐賀豪雨で佐賀県内に甚大な被害が出たときでした。

「大変だな」と思ったぼくはニュースに注目していたのですが、こんな報道を目にします。

豪雨被害で「佐賀が水没」したような、極端な報道が全国で行われたことにより、キャンセルが相次いだというのです。

被害がないところにまで経済的な被害が出てはいけない。そう思ったぼくは、何かできることはないかなと思い、嬉野温泉や武雄温泉の緊急特集記事を企画しました。

「どこを取材しようか」とあたふた探しているときに見つけたのが、旅庵大村屋のこのツイートでした。

このツイートを見て、ぼくは旅館大村屋に取材を敢行。そして、お出かけ情報メディア「SPOT」に記事を寄稿したのです。

ツイートが9月2日。取材が9月5日。そして、記事の発表が9月7日。そのスピード感もあって記事は拡散。Twitterでは3500を超えるシェアとなり、多くの方に読んでいただけました。

翌年の5月、ぼくがビートルズ好きという縁もあり、旅館大村屋の15代目北川健太さんがMCを務めるラジオ番組「Let's Beatles! on Radio」(FM佐賀)に出演。

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SNSを通じて、その後も関係性を深めていくうちに、noteでの連載の話が浮上しました。


旅館大村屋の規格外なWeb活用①採用目的でまち情報発信

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これから新規採用に注力したいという相談内容だったので、ぼくはスタッフのインタビューや、一日に関する取材などを提案。旅館大村屋でいきいき働くスタッフの姿を楽しく見せたいなと思いました。

しかし、妻に「新しく旅館大村屋の採用の仕事をするよ」と話したら、「観光業界で働きたい若者が、嬉野を就職先に選ぶものなのかねぇ」とボヤいたのです。

「なんてことを言うんだ」と思いつつも、問題の本質な気がしたのも事実。ぼくは北川さんにその話をしてみたところ、議論は盛り上がり、最終的には「働く場所として嬉野を選んでもらえるような発信をしよう」ということになりました。

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ぼくは月に1度は嬉野温泉に訪れ、旅館大村屋に宿泊しながら、嬉野で活躍するいろんな方のお話をうかがってきました。かなりディープで濃厚なお話をたっぷりと。

ニッチすぎるトピックでこんなに濃厚に話し込んで「誰か読んでくれるのかな」と不安でしたが、次第に反響が多く届くようになりました。

まずはじめに、ぼくが嬉野の方々と仲良くなり、自然に溶け込んでいったこと。取材すればするほどお知り合いの方が増え、嬉野への愛着が深まっていきました。

そして、記事を読んだ方からの反響があったり、記事がきっかけで新しい企画が生まれたり、様々な出来事が起こるようになったのです。やっぱり、Webは面白い。そして、ついに拡散する記事が生まれたのです。

「テーマがニッチでも、内容が良ければ、伝わるんだ」

「一人の読者でもいいから、確実につかむことが大切なんだ」

そんなことに自信を持つようになった頃、北川さんから旅館大村屋に新入社員が入社したことを伝えられました。

詳しくお話をうかがったところ、ほぼ全員の新入社員が、採用試験を受ける前に連載記事を読んでいたとのことでした。

志望意欲を高めることに貢献できていたようで、当初の目的は達成されていました。

それにしても、旅館の宣伝のような内容をほとんど出さず、街の人の主役にしたコンテンツに予算をかけ続けた姿勢には驚かされます。だからこそ、記事は絶対に面白くなければならないと思い、緊張感を持って執筆していました。

旅館の宣伝のような記事が書けたら、どんなに安心で楽だったでしょう……。


旅館大村屋の規格外なWeb活用②野良クラウドファンディング

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旅館大村屋に宿泊して、取材を継続する毎日を続けていく中で「旅館大村屋の公式サイトをリニューアルしたい」という話が出てきました。

北川さんから構想を聞いて、ぼくは驚きました。


「嬉野のWebメディアをやりたい」


いち旅館が?Webメディア??

前代未聞です。ただ、いちライターとしては「暮らし観光案内所」の手応えから、そこまで考えてくださったことがとても嬉しかったです。

旅館大村屋がやる、嬉野のWebメディア。絶対に面白くなければならない!

ただ、Webメディアをやるには、とにかくお金がかかります。デザインもしっかりこだわって、ユーザーに届くものをつくりたい……。その結果、生まれたのが「クラファンで応援してもらう」というアイディアでした。

Webを立ち上げるためのクラファン。面白そうだし、みんな参加できる。そんなに楽しみにされて生まれるWebメディアなんて、あんまりないんじゃないかな。ぼくはワクワクしました。

そして、そのクラウドファンディングは既存のプラットフォームを使わず、noteの告知だけで始めることになったのです。

旅館大村屋の北川さんには勝算がありました。以前、コロナ禍で旅館の大村屋が苦境に立たされたときも、自主的に何のプラットフォームも使わずにクラファンを企画したことがあったのです。

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コロナ禍で絶望しきった雰囲気の中、北川さんの前向きな取り組みは旅館業界のみならず、多くのビジネスマンに希望を与えたと思います。

「よし、なにかやってみよう」

そんな気持ちにさせるような企画だったんじゃないかと思います。そうなんです。クラウドファンディングに重要なのは、プラットフォームではありません。人の心を動かすような、自身の想いが現れている「企画」なんです。

そして、結局今回のクラウドファンディングもnoteでの告知だけで、100万円以上の応援購入を集めることに成功したのです。


旅館大村屋の規格外なWeb活用③CVから遠ざけさせてくる公式サイト

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そして、西九州新幹線が開通した本日。旅館大村屋の公式サイトが正式にリニューアルされました。

トップページを開くと「宿へ行きますか?」「寄り道しますか?」と尋ねられるようになっています。

これはWebの常識からすると前代未聞です。旅館の公式サイトが抱える至上命題である「予約」から遠ざける行為「寄り道」をすすめてくるわけですから。だって「寄り道」ですよ。Webに「寄り道」という概念はない。

「寄り道」をクリックするような、ちょっと変わった方は大歓迎。Webメディア「暮らし観光案内所」のトップページが現れます。

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暮らし観光案内所は、単なる観光案内のWebメディアではありません。それは、独特なメディアのカテゴリ名が明確に示しています。

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「話しかける」

「味わう」

「見つける」

「戸惑う」

この4つが、嬉野で暮らし観光を楽しむキーワードとなります。とくに独特なのが「戸惑う」ではないでしょうか。おもしろくて、楽しい違和感。

いつまでも笑い話にできるようなお土産話を生み出す「戸惑い」って、けっこう大切なんじゃないかなと思うんです。

これからは、この最高のWebメディアで嬉野の面白さを存分にお伝えしていこうと思います。


さあ、一緒に嬉野を楽しもう!

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嬉野温泉駅が開業。もう、嬉野を楽しむ障壁は何もありません。

ぜひ旅館大村屋のサイトへ行って、お家の中から嬉野を楽しんじゃってください。ぼくたちがWebの中で、あなたをおもてなしします。

さあ、嬉野へCOME TOGETHER!!


サポートをいただけた場合は、今後の取材活動のために使用させていただきます。