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アイディアだけでは良い商品は作れない(NEOTOKYO:HUD-2020レビュー)

自分でAndroid Autoを作ってみようと思うきっかけとなったHUD-2020のレビューです
自動車業界で働いてきた人間が、自動車開発ではどのようなことに注意して商品を開発しているのか?という観点を交えながらレビューを書いていきたいと思います

ハンドル操作の邪魔をしないこと

HUD-2020のリモコン
ハンドルに装着すると1㎝ほど飛び出すため、ハンドルを回した際に引っ掛かる

HUD-2020のリモコンはハンドルに取り付けると、上図のようにハンドルから盛り上がります。
結論から述べると、ハンドル操作時に手に引っ掛かることがあり、ハンドル操作に対する影響の検討が不足していると感じました。
F1マシンのようにハンドルを半周以上操作することがない車であればこのような形状でも良いかもしれませんが、市販車ではハンドルを1周以上回すために”持ち替え”という操作が発生します。この持ち替え操作は慣れてる人ならハンドルの表面上で手を滑らせるように操作します。このような操作を考慮して設計された市販車のハンドルでは、飛び出している部分はありません。
なぜ市販車の純正リモコンがハンドルから飛び出さないように設計されているか考えていれば、HUD-2020のリモコンもこのような設計にはならなかったと思います。

車の中は電波がいっぱい

HUD-2020の電源兼リモコン受信機

HUD-2020はリモコンのレシーバーが電源のシガーに内蔵されているそうです。ここで問題になるのがまず、なぜシガー部分なのか?ということ
最近はドラレコなど、シガーソケットから電源を取るシステムを装着する人が増えており、シガー電源を分岐して使用することが高いと思います。そして配線をスッキリさせるため、電源分岐はグローブボックスなどに隠したいですよね?
そうなると、シガーライターにレシーバーが内蔵されていると電波が届きにくくなります。

また、車の中は電波であふれています。各システムが高速でモーターやリレー制御するため、自動車の電線(ハーネス)から色々なノイズが電波として発生してしまうためです。これらが他の機器に影響しないかを確認するため、開発中に色々な電波障害の確認試験が行われています。

最近の機器はBluetoothなどの通信規格を使用することで電波の混信や障害を避けられるようになってきましたが、残念ながらHUD-2020のリモコンは一般的な周波数でのアナログ通信をしているようで、レシーバーから30cm以上離れると?間に他の機器がいると?操作を受け付けなくなりました。
ですので、写真ではハンドルに取り付けていますが、リモコン操作を受け付けないことが多々あるため、最終的にはレシーバーの目の前にあるサイドブレーキのレバーに取り付けました・・・。

この距離でやっとまともに操作できる

運転中の操作は直感的でなければならない

十字ボタンのようで十字ボタンではない

運転は常に車の周囲を監視しながらしなければなりません。
ですので、車の操作は直感的に操作パネルやスイッチを見ずに操作できなければなりません。
最近の車はエンターテインメントのインターフェースとして大型のジョグダイヤルなどを用いる車が増えてきていますが、基本的な操作はジョグダイヤルを回す・押す・スライドさせるでできるようになっており、ジョグダイヤルを見なくても操作ができます。

HUD-2020はどうでしょうか?
その名の通りヘッドアップディスプレイであるため、カーナビのように画面をタッチして操作することはできません。すべての操作はリモコンでしかできません。
リモコンのボタンのサイズは少し小さめではありますが、慣れればボタンの操作自体に困ることはありませんでした。
しかし、ボタンの種類には難がありました。

HUD-2020には十字ボタンがありません。そのためまず、地図の移動操作ができません。カーナビでは道に迷ったときや、道路の選択肢が複数ある場合に自車位置周辺の地図を表示して調べたりしますが、HUD-2020は画面の縮尺しか変更できません。そもそも縮尺変更の+/-にたどり着くまでも大変ですが・・・。

また、アプリの切り替えも左右でしかできないため、複数のアプリがインストールされているとアプリの選択に時間が掛かるなどの問題があり、リモコンの設計が十分とは思えませんでした。

まとめ

総じて、HUD-2020は色々な意味で世に出てくるのが早過ぎたのだと思います。他にもHUD内の画面は上側が切れてしまっており時計や電波などの情報が見えない、30分に一度フリーズするなど、設計不足な点が多々見受けられます。
メーカー側も失敗だったと感じているのか後継機を出す様子がありません。
アイディア自体は良かったと思いますが、おそらく自動車機器に対する知識や経験が浅く、また開発期間が短かったので十分な検証ができなかったのでは?と感じています。
しかし、HUDのカラー画面は意外と見やすく、個人的にはHUDタイプのナビは悪くないと感じています。これまでに上げた問題点が解決できているのであれば次機種を買いたいと思っています。
(もしくはHUDだけでもラズパイのナビ画面として再利用できないか・・・)

追伸

Yahooナビのリモコンはハンドルから飛び出さない形状で設計されており、十字ボタンでの操作も可能でよく考えられているなと思いました。
さらに通信はBluetooth規格を採用しており、一年以上使用していますが混信や不通は発生していません。
直近でスマホをナビにして使いたいという人にはYahooカーナビ+リモコンがお勧めです。
(Yahooカーナビは目的地が検索しづらいという問題がありますが・・・)

Yahooカーナビのリモコンと比較


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