「刑事・型破捏造 白石家殺人事件」


白石麻里絵は矢で頭を撃ち抜かれて死んだ。

矢は外部から飛んできたものらしい。兄の多美男、妹の沙絵子が麻里絵の叫び声を聞いて彼女の部屋に入ろうとしたらドアには内側から鍵がかかっており、合鍵がなかったので多美男がドアを蹴破って入った。室内に入ると麻里絵は矢が飛んできたと思われる窓側に足を向けて仰向けに倒れていた。風呂あがりに窓を開けて涼んでいたのだろうか、裸にバスタオルを巻いただけの格好だった。窓は開いており、2月の寒気が室内に入り込んでいて震えるほどに寒かった。

「沙絵子、警察を呼べ」多美男が沙絵子に指示した。しかし、沙絵子は姉の骸を見た衝撃でブルブル震えるばかりで身動きできずにいた。
「ちっ」沙絵子の様子を見た多美男は舌打ちして、電話がある階下に走った。多美男が警察に連絡すると、10分ほどで多摩村交番の吉村巡査が警ら用のスーパーカブに乗ってやって来た。吉村巡査は24歳の麻里絵の死体を見て驚いた。
「お嬢さん、亡くなっているじゃないですか、 一体何があったんですか」と聞いた。
「それを知りたいのは僕たちの方ですよ。僕たちは階下の居間にいたんですが、麻里絵の叫び声を聞いて急いで部屋の前まで来たのです。ところが部屋のドアには鍵がかかっていて…。それで仕方がないから僕がドアを蹴破って室内に入ったんです」
「部屋のドアには鍵がかかっていたんですね」
「そうです」
「えっ、それって、密室殺人じゃないの!」
素っ頓狂な声に一同驚いた。いつの間にか後ろに背の大きな女が立っていた。いや、つぶさに見れば男だ。身長は180センチ以上はあるだろう。背中まで伸びた長い髪の毛。黒のワンピースに黒のジャケット、そして黒のストッキングにパンプスと、葬儀の帰りのように陰気臭くなりがちな格好だが、逆に派手なオーラのようなものを全身から放出している。女優の黒木瞳のような美しい顔をしているが、やっぱり元が男だからゴツイ。全体の印象が交通整理できない交差点のようで異様だった。
「あ、失礼こいちゃったわね。アタシは多摩署の型破捏造って刑事さんよ、ウフフフ」
「かたやぶりねつぞう…さん? 」
「そうよ、こう見えても立派な男だわさ、チンチン」と、自分の股間を突き出して叩いた。
そう、彼こそ多摩村署の名物刑事、型破捏造であった。
「あ、型破刑事、お疲れっす」吉村巡査が思い切りの笑顔で敬礼すると、型破は「まぁ、吉村くん、相変わらず可愛いわね。チンチン」と、吉村巡査を抱きしめてキスをしながら彼の股間を撫でた。
「あ、型破刑事、現場じゃマズイっす」
「ふふふ、ほんじゃあ、あとでユックリと可愛がってあげるわよん、チンチン」
型破が吉村を解放すると、彼の口紅の跡が吉村の口を覆うように残っていた。
「ほんで、死んじゃったこの彼女は誰なの?」
「は、白石家の長女、麻里絵さんです」
「あなたたちは?」
「長男の白石多美男です」
「次女の沙絵子です」
「多摩村交番巡査の…」型破の目が輝いた。吉村を抱き寄せて「吉村くぅーんでしょ?可愛い」と言った。
「ありがとうございまっす」

いつになるかわからないけど、つづく

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