【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1452.呼び掛ける声
『下にー下にー、はい、到着っと』
ペトラのわざとらしい明るく弾んだ声が終りを告げると、周囲の色彩も同時に光を取り戻していた。
数秒遅れで到着したレイブ達の目の前には林の外の湿地とはまるで違う清廉な泉が美しい水を湛えている。
一見して、ここまでのトレントの林とは趣を違えた美しく荘厳な古木に囲まれた泉の姿は、これまでの人生でレイブが見たどんな池や湖よりも不可思議な神秘に溢れていたのだ。
スリーマンセルは並んで息を飲み動きを停止させたが、次の瞬間、無言のままで動き始めた。
具体的にはそそくさとペトラの背から皮袋を下ろし始め、美しい泉の縁に並べて給水の準備を始めたのである。
対岸の大樹の下から声が掛かる。
「やあ、君か」
「ギレスラ、もう少し先まで広げてくれよ」
『判ったのだ、ペトラの位置はここら辺でいいかな?』
「ああ、そこで良いだろう」
『了解だわ』
声が聞こえなかったのかスリーマンセルは仕事に夢中な様子だ。
「久しぶりだね、戻って来ていたんだね、最も君の実力なら当然だろうけど」
「良し、積むぞペトラ、踏ん張れよ」
『ブヒ、楽勝よ』
「おーい、ギレスラぁ、台座が少し緩いじゃんかぁ、ちゃんと縛り直してやってくれ」
『お、そうか、済まん済まん』
「頼むぜ、おい」
再び声を掛けられた気がしたが仕事に夢中なスリーマンセルには聞こえなかったらしい。
まあ対岸も結構遠くだしな、聞き取れなかったのなら仕方無いだろう、悪気は無いのだろうし。
しかし、最近耳と鼻が鋭敏になった二人、狼顔と虎顔はそうではなかった様だ。
「おーい、聞こえないのかーい?」
「レイブさん、あっちの男が何か言ってるんですけど?」
「お知り合いみたいな感じですよ? あっ、ほら、笑って手を振っていますし」
レイブは泉に浸けた皮袋の口から目を離さないままそっぽを向いて答える。
「馬鹿、無視しろよ! あんなの相手にしても碌な事にならないぞ」
「え?」
「何でです?」
ギレスラもペトラの背に着けた輸送用の台座を縛り直しながら続ける。
『考えても見るがいい、モンスターに囲まれた泉にたった一人でいるニンゲン? 怪しすぎるとは思わないか? 得体が知れん……』
ペトラも姿勢を変えずに地面を見つめながら続く。
『あれじゃない? 人型のモンスターとか悪霊や幽霊の類とかでしょ? 気味が悪いわよ』
レイブは次の皮袋を取りながら繰り返す。
「だな、大体そーゆーのってあんな感じで話し掛けて来たりするんじゃね? んなのに引っ掛かるかよ、そもそも見ず知らずの他人なんだしっ、親しげに話し掛けられたらかえって気持ち悪いだけだろうに…… 可哀想に、それ位の事が判る知性すら無いみたいだな」
「酷い言い様ですね、何千年ぶりだって言うのに」
「うあっ!」
『いつの間にっ!』
『ひいぃ! お化けよっ!』
「失礼な!」
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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