【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1449.喰うか喰われるか
げんなりした表情を浮かべる二人に現実を語る口は止まる事を知らない。
「そもそも毒沼ばっかりのこんな場所に綺麗な泉があるとかさ、不自然だとは思わなかったか?」
「そう言われれば……」
『罠なのだ、馬鹿なモンスター共なりに餌を誘き寄せようとしていたのだぞ』
「あっ、そーゆー?」
「なるほど、ですね」
「まあ水か食い物、後はこっちの同種を囮に使ったりもするな」
「ほへー」
「結構賢いじゃないっすか」
『でも最初から警戒してればおいそれとは引っ掛からないでしょ? レイブお兄ちゃんが言った通り不自然だし』
「確かに……」
「勉強になります」
既に二人からは捕食に対する忌避感は消え失せている。
クルン=ウラフの結界に守られて、文字通り温室育ちの二人には慮外の刺激、それが現実の厳しさを伝える事に一役も二役も買ったらしい、結果オーライ、レイブ先生はしめしめだなコリャ。
トレントが見捨てて去った哀れなドングリ達をあらかた平らげたレイブは気持ちも新たに出発を宣言する。
「ゲップ、んじゃ水汲みを再開すっか、グェーケッップ!」
あまり新たでは無かった様な満腹レイブにブロルが答える。
「そうですね、でも残りの木や草、花なんかも警戒しながらって事は結構しんどくなりそうですよね」
「あー確かにブロルの言う通りだわー、まっ、仕方無いっすけどねー」
ミロンの同意に答えたのはまだ散乱したドングリを拾い食いしているペトラだ。
『多分だけどそう手間取らない筈よ、ここのモンスターって割と賢そうだもん』
賢そう? それが何に関係するのだろうか?
私の疑問が聞こえた訳ではないだろうが、キョトンとしている二人にギレスラが解説の補完をしてくれる。
『こう言う事だ、ペトラ、水場の位置はどちらなのだ?』
ペトラはドングリから顔を逸らさないままで前肢の蹄をびしっと指して答える。
『こっちに真っ直ぐ、レイブオお兄ちゃんの足で大体四百歩かな? しっかりブレスの射程範囲だわね』
『なるほど、レイブ、良いか?』
「ああ、勿論だぜギレスラ! 焼き尽くして灰も残すなっ! 秒読み開始だっ! 五、四、三――――」
レイブのカウントダウンに合わせて腰を落とし目標方向に正面を向いたギレスラは大きく息を吸い込むと口中でチリチリと鳴く火球を生成し始める。
こんな密着した林の中で炎をぶっ放すとか正気なのだろうか?
森林火災が火炎旋風を産み出す事はオーディエンスの皆さんも良くご存知だろうし、ここに生えているのは只の木では無くモンスターなのだ。
いざとなったら先程見逃された個体みたいに逃げ惑い、パニックを起こしてとんでもない激甚災害に繋がる事だとて無くはない話だろう。
同じ懸念を感じたのかミロンが慌てた声を発する。
「何を、ギレスラさん、駄目ですってば――――」
『しっ! 黙って見ていなさいっ!』(コソッ)
ペトラの叱責に思わず黙り込んでしまったミロンの耳に、レイブの声が無情な時間切れを告げる。
「ゼロっ! ファイヤーっ!」
『ごおおぉぉー、なんちゃってな、グフフフ』
「なははは♪」
次の瞬間、大口を開けたギレスラとレイブの愉快そうな笑い声が場を包んだ。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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