【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1442.野生
食事や野営、立ち止まるタイミングで幹部連が自然と集まってくるレイブの周辺だが、次に発せられた声にも旅慣れない集団らしさが滲み出ていた。
「レイブさん、水が足りなくなりそうなんですけど」
声は大柄で筋骨隆々な狼顔の獣人から発せられた、アイユの里では見掛けなかったワイルドなキャラだ。
「そっか、じゃあ休憩のついでに補充しておかなきゃな」
「レイブさん、これ少し先で見つけたんですけど、飲めませんかね? 見た目は綺麗そうなんですが」
「ほー、どれどれ」
ワイルド狼の隣を歩いて来たこれまた野生丸出しな虎顔のキャラが皮袋を差し出してレイブが受け取る。
虎獣人は狼より背丈こそ低いが、引き締まった肉体にはネコ科の猛獣らしいしなやかさを感じさせ眼光の鋭さも肉食獣のそれ丸出しである。
こちらもこれまで見ていない顔であった。
皮袋から直接水を口に含んだレイブは残った分をペトラに渡し、受け取ったペトラは皮袋を凝視しながらスキルを発動する。
『『鑑定』…… うん駄目ね、猛毒のパリトキシンよ、残念だけどこれは飲めないわ』
パリトキシン様毒は海洋魚類に含まれる毒物だがこの時代には淡水の湿地にも存在しているらしい、つくづく物騒な時代である。
ゴクンっ!
「なるほど、やけに不快な金属味が強かったがパリトキシンだったか…… 確かに俺やギレスラ、ペトラ以外が飲んだらヤバイな……」
えっ? お前等スリーマンセルは、だ、大丈夫なのか?
びっくりな私の声は例の如く届けられる事もなく、割と落ち着いたシュカーラの声が代わって響く。
「へー、じゃあ皆に飲まないように伝えなければなりませんね、任せて良いですか? ブロルさん、ミロンさん?」
「判った」
「伝えて来よう」
え、えーっ!
こ、このフィアースドッグとビックキャットが、ミロンとブロル? 三日前とは別人なのだが……
男子三日会わざれば、とか何とか言うが、刮目どころか瞠目だよ、これ!
しかし、改めて良く見てみれば獣人たちの姿には総じて顕著な変化が見られる気もする……
なんと言うか、全体的に野性味プラスと言うか、元になった獣の獣性が豊かになっていると言うべきか……
「私が他の里の長達に伝えて来よう、お前達は暫らく休むと良い」
そう発言した黒熊っぽい奴は体長三メートルを優に越え、鋭利な爪が覗いた掌も滅茶苦茶巨大で凄まじい破壊力を帯びている事が窺われる。
言葉の内容から察するに、恐らくこいつは黒熊マッチなのだろう、三日前までは割とクレバーで常識勢だった筈だが今やゴリゴリの武闘派、捕食者若しくは殺戮者にしか見えない。
良く見れば力強い足音を残して歩き去る虐殺者の向かう先でヒシの実を頬張る農夫の姿も何やら様子が変わって見える。
正に農夫っぽかった牛顔の獣人が今や闘牛みたいな強靭な筋肉に包まれて頭の角なんかも大きく変化しているではないか。
表現するならカウではなくブル、脱乳牛を果たした感じだと言えばご理解頂き易いであろうか。
馬顔は炎の如き鬣を靡かせ、狐顔は狡猾そうな薄い笑みを浮かべ、ヤギやヒツジまでが小声で闇属性っぽい呪文めいた呟きなんかを洩らしている。
まあ、やっている事と言えば一心不乱に茹でたヒシの実を頬張っているだけなのだが、傍目には中々に恐ろしげな集団と化してしまった様である、なんと言うかサヴァトっぽいのだ。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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