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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

あらすじ・目次 


第三部 六章

リベルタドーレス ~解放者たち~

1440.ヒシの実


 私、観察者が、蛇の成長に心を砕いてやっている間に流浪の民の行進には、何やら変化が生じたらしい。
 具体的には全体の進みが先の方で停止したらしく、ぐんぐん詰め込まれる感じで集約した群れの全長は行進時の十分の一、皆さんの単位で言えば凡そ百メートル位の長さまで短くなっていたのである。

 先頭から歩いてきたのだろうキャス・パダンパがレイブ達スリーマンセルに向けて、持ち前の人懐っこい顔を浮かべて声を掛ける。

『叔父さん叔母さん、そろそろ昼食にしませんか?』

 こいつもまあ空気を読まない正論好みな所は兎も角、頑張り屋で素直な所はそれなりに評価できる若者、いや若獣と言えるだろうな。

 レイブはゲッコー顔の三つ子をあやしながら笑顔を返して答える。

「おう、そうだな、今日は何にするかなぁ」

 横からぺトラの声だ。

『レイブお兄ちゃん、ここまで来る間にヒシの実がいっぱいあったでしょう? 皆に歩きながら拾って貰っていた筈だからそれで良いんじゃない?』

「お、そうだな! んじゃ岩塩でも削るかな…… 良しっ、じゃあ鍋の準備を頼むぞ皆っ! ギレスラは鍋ごとに周って火を着けてやってくれな」

『了解だ』

 どうやら今日のお昼の献立はヒシの実の茹でたヤツ(選択肢は無し)で決まったらしい。
 ホクホクして甘く、割と美味しいメニューだと言えるだろう。

 とは言え、この集団にとって食事とは生きる為の手段に他ならない。
 ほんの三日だけの道行きの中で味とか食感とかの生意気発言をする馬鹿は駆逐されていたのだ。
 だから当然下拵えなんかはする筈が無い。

 灰汁あく抜きなんかは論外中の論外だ、灰汁の分量が減るから寧ろマイナス扱いなのだ。
 臭おうが苦かろうが問題なし、子供も老人もおかまいなしで、ウマミに続く第七の味覚だと言わんばかりにエグミを堪能するのである。

 ギレスラが最後尾から順に火を着けて回っていると、反対に先頭方向からガトが歩いて来る。
 獣部分の種族ごとや家族単位で囲んだ鍋には着々と火が灯されていく。

 ガトはギレスラ同様、口から炎のブレスを吹いている、恐らく獣人達には鮮やかな赤竜に見えているのだろう、彼女のスキル『偽神デミウルゴス』を発動しているのだ。

 ぺトラは突如として身に付けた料理好き特性を発揮して、獣人達にアドバイスを与えている。
 ただ茹でるだけでは? そうでもないらしい。
 水から茹でるとか、一つまみの土を加えるだとかそれなりに気を付ける部分があるらしい。
 これが各鍋の調理を担当している面々には意外に好評な様で、かなりの人数が取り巻いている姿ももうお馴染みの景色になっている。



お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です('v')
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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