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夕暮れ時

学園祭の日、演目が終わって三々五々。
皆でその日楽しんだ出し物とかを話す、祭りのあとの夕暮れ時。

言わなくちゃいけない、お別れの言葉を。

その日に引っ越す事は先月に言われた。親の都合で引っ越すことなんて珍しい事ではなく、ましてやオレは中学の時にも転校しているから初めてじゃないし。

学園祭は楽しかった。多少のハプニングもありつつ演目もやり遂げ、そこそこの拍手も頂いた。

みんな明日の振替休日の事とか話してるのかな、オレはその時どうやって切り出そうかもじもじしていた。言いたくなかったんだろうな。

「あの、そろそろ帰るんだけど、その、オレ今日までだから」と言った自分に視線が集まる。続けて言う。
「あの、ありがとうございました。それじゃ」簡単に、簡単すぎる別れの言葉に「おー元気でなー」「お疲れ様~」などの声をクラスメートからかけてもらって教室を出る。

あっけない別れに涙が止まらない。止まらないまま下校の道を歩いていると、普段は全然愛想の良くない友達の女子が後ろから追い越してきて、すれ違いざまに「今日は楽しかったね」と言われた。その背中は震えて少し泣いている様に見えた。

堪えきれず自分も大声をあげて泣いた。

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