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い・け・な・い好奇心

 怖い物見たさ、とは不思議なもので、二十代後半となった今となっても、そんな子供じみた感情に捉われる事がある。それぞれ恐怖の対象というのは異なるでしょうけど、ホラー映画等は『怖い物見たさ』でよくDVDを借りて来てしまいますね。特に夏の暑い日なんかには。

 中には、変な物に恐怖を感じる人もいる。変な物というのは語弊があるかも知れないが、私の友人がまさしくそれです。例えば外出先から帰宅した際、押入やベッドの下の隙間、トイレ風呂に至るまで、何者かが潜んでいる様な気がして一々扉を開いて確認するんだという事。
まぁ施錠はしっかりしている筈だし、映画とかドラマの見過ぎじゃないの?とも思うけど、彼曰く、誰もいない事は分かっているが、万が一斧を持った男がいたら......と考えると、いても立っても居られなくなるみたいである。
怖いですね、色々な意味で。
そこで扉を開けてしまうのも一種の『怖い物見たさ』になるのかもしれない。

 こういう話を周囲にすると、彼と同様帰宅時の隙間に恐怖を抱く方が、意外にも沢山いる事が分かった。ある女性はもっと極端で、人が絶対に隠れる事が出来ない様な食器棚とかも、調べてしまうみたいです。感情とは難しい物だなぁと思ってしまう今日この頃。

 などと散々言ってる私ですが、私の恐怖の対象も友人に言わせてみれば変わっている様で。巨大建造物が怖いというのは、普通ですよね?
巨大建造物恐怖症 –– 多分こんな言葉はないです –– にも色々種類があって、例えば牛久大仏(茨城県牛久市)の様な巨大像専門の方とか、スカイツリーみたいな巨大塔専門の方とか、それは様々な要因があるんでしょうけど、私はもれなく全てが怖い。幼い頃、大阪万博公園に建った太陽の塔を見た時、あの不気味な顔と塔全体から漂う無機質さで、トラウマにでもなってしまったのかも知れない。写真で見る分には問題ないけど。

 今までで一番怖かったのは、東京都田無にあるスカイタワー西東京(通称:田無タワー)を下から見上げた時。上京したてで、近所の散策に出かけた私は、普通の街並みの中に建つ、明らかに異質な鉄塔を見つける。東京タワーや通天閣の様に先細りしていない寸胴の田無タワーは、高さは200mにも満たないけれど、かなり怖い。夜ライトアップしてる姿など、嫌がらせとしか思えない!(個人の所感です)

 昼に下から見上げれば、悠然と建つタワーの背景にある青空、それに吸い込まれてしまう様な感覚に陥る私。これは決して詩的表現でも何でもなく、本当に下半身がフワッと浮き上がる様な感覚になるんです。分かって頂ける方も多いとは思うけど、そういう時は身体を動かす事や声を出すのも少し難しくて......。蛇に睨まれた蛙というやつです。でも、そんな恐怖心が自身を興奮させるのもまた事実で、急に思い立って田無まで足を運ぶ事もあるのだから、『怖い物見たさ』とは不思議ですね。

 共感してくれる同志が集って、皆で巨大建造物を見ながら足を竦ませる、というのもかなり面白そうですが、幸か不幸か、未だ同志は見つかっておりません。
いつかはサークル等を作って、日本各地へ遠征に行ったり、その恐怖心由来のドーパミンを効率良く得る方法など議論したいなぁと思っているのだが......そんな暇な人いないか。
という訳で、この土日はまたホラー映画でも借りてゆっくりするしかない様です。
ある意味、気楽といえば気楽ですが。

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