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表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

旅先では日頃閉じ込められている素直な感覚が自由になる。

キューバ、モンゴル、アイスランドを旅した若林さんのそれぞれの旅先での感覚が伝わってきて、
日常を手放すのは、なんて自由で、おもしろく、そして清々しいんだろう。

旅先でただ散歩するのがあんなに楽しいのは
「見たことない」に溢れているからなんだ。

目に映る見たこともない植物
どんな味がするのか想像もつかない色味のお菓子
現地の人が通う年季の入った商店
言葉も通じないのにやさしくしてくれた笑顔の人たち

この街で生まれ育っていたら、私はまったく違う私だったんだろうかと空想する。

それでも、それを私の日常にそのまま持ち込むことは出来ないのだ。

旅で違う国に来ても自分が違う人間になったりしないように、自分の普段いる環境は自分の内側にしっかりと根付いていて、
結局はどこへ行こうが逃れることは出来ない。

俺はボンネットを開けて欠陥の構造を自分なりに理解した時に、これからもずっと生き辛いだろうし、そして、これからも大切な価値にたくさん出逢うだろうという諦心と感謝が同時に生まれた。

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
あとがき

私も彼と同じようにいつも自分の内側ばかり見ていた。

そんなことをしなくてもいい仕様の人たちが、いつも羨ましく、私がこうなのはどこがおかしいんだろうと、事あるごとに内側を眺めながら思っていた。

なんか違うとしか思ったことがなかった私は、
本を読むことで救われた。

誰かに自分の内側を見せることなんて、まずない。それはスカイダイビングするくらいの勇気が必要だ。

でも本は、私が手を伸ばせばいいだけだ。

自分が傷ついたことや、隠していた思いや、誰にも言えないと思っていたことが、
誰かと共鳴した時の感動が、私を癒してくれた。

そこに同じように悩んだり、苦しんで来た人たちがいる。それは分かち合えるものだと知った時、
こんなに憩える場所を私は絶対に手放さないと誓った。

生きづらく、めんどくさいのは変わらない。
それでも外に目を向けてみると、思いがけず素直になれる自分が見つかる。
そしてこの本の中で「隠しコマンド」と呼ばれる、私にとっての本のような没頭できる世界がある。

若林さんの手に入れた価値は、彼を強くしたんだなと思った。
だから私を含めた多くの人が見せたくないような自分の内側を書いてくれた。
彼の内側のはずなのに、そこに私の内側も垣間見たような気持ちになった。

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