アカ_ヨシロウ

vol.5『アカ ヨシロウと園芸』

はじめに

 夫は今、野菜を育てている。

 育てている量は「家庭菜園」の枠を超えないが、自分が食べたい野菜、育ててみたい野菜を育てるのが本当に楽しいようだ。料理好きな夫は時々、調理中に家の外に出ては育てているローズマリーやシソ、ネギやニラを摘み、料理に加える。夫が育てた野菜は市販の野菜よりもワイルドな食感と香りが特徴で、これがまた美味しい。

 結婚してから3年間、仕事や家庭の都合で色々な場所を転々としてきたが、どんな場所に居を構えても、夫は近くのホームセンターや園芸店に行っては野菜の種や苗を買い、育ててきた。そう考えると「園芸」は、数少ない「夫が飽きずに続けていること」のひとつのように思える。

 月刊アカ ヨシロウvol.5『アカ ヨシロウと園芸』では、野菜を育てるだけでなく、ラクに家庭菜園が楽しめるように「自動散水機」の実験を重ねている夫を特集する。

 夫と園芸の特集。夫がハマっている家庭菜園の話。


アカ ヨシロウと園芸

アカ ヨシロウ
1988年千葉県生まれ。フリーライター。前職は食品卸売会社にて輸入肉の仕入れとシステム担当を歴任。趣味は登山と映画鑑賞。好きな言葉は「日々是勉強」「為せば成る」「ケ・セラ・セラ」。

ー「『アカ ヨシロウと園芸』というテーマで特集しよう!」と思い立ってから気づいたんだけど、よしさん結構「家庭菜園」好きだよね。

確かにそうかもしれないね。なんだかんだ毎年キチンと続いている趣味かもしれないなぁ。

ーいつから家庭菜園に興味もったの?大学生の時にはまだ野菜育ててなかったよね。

ええっとね、僕が社会人時代で新宿のマンションに住んでたときが最初だと思う。ベランダが南側で暑かったからゴーヤを植えたのが最初だなぁ。結構収穫できたし、食べたら美味しかったのが楽しかったんだね~。

ー引っ越すたび、家の近くのホームセンターとか園芸用品店で種とか苗をチェックしてる印象があるんだけど、何に魅了されたんだろう。よしさんにとって家庭菜園の魅力ってなに?

考えてみたけど、放置でいいところだと思う。僕はあくまで「食べれればいい」と考えてるから、「美味しさ」や「収穫率」より「どれだけ手を抜けれるか」の方が僕にとっては重要なんだなー。だから自動散水機を買ったし、自作でシステムを組もうと思っている。

あと収穫して料理に使えるのがいいね。シソとかネギを植えてれば、料理で「あ、薬味がほしい」ってなった時にすぐ収穫できるのが便利なんだよなぁ。

ーせっかくだから今育ててる野菜について教えてもらおうかな。まずは定番野菜シリーズから。

<ローズマリー>

完全放置の便利なハーブ。肉も魚も野菜もスープも。洋風のアクセントがほしい時に便利!

<ニラ>

コイツも切ったら生えるから便利。いっぱい食べるから、もっと植えてもいいかなぁ。

<ネギ>
先日、ホップを横に植えたら枯らしてしまった。ホップ強い。。鉢を独立させてデッカイの育てちゃおうかなぁ。

<パセリ>

たまに食べたくなる。スーパーで買いたくない。卵焼きにしてよく食べる。

<リーフレタス>
放置でOKだしどんどん生えてくるから便利なんだけど、うちにサラダ文化がないからたまに忘れて固くなっちゃうんだよね。

ー時々失敗するシリーズも紹介してもらおう笑。

<パクチー>

失敗というか、成長しすぎて固くなっちゃうんだよね※。まぁタイ料理屋いったら刻んでガンガンに使ってたから、今後は僕も使ってこうと思う。

※以前育てた際、食べずに放置していたら「木」のように硬くなってしまった(↓)。

<シソ>
コイツも気づいたら虫に食われてたり病気になってたりするんだよね。まぁ薬味程度でしか使わないからあんまり気にしてない。いつも元気なところだけ食べてる感じ。

ー今回初挑戦のお野菜は?今まであんまり挑戦してこなかったシリーズ。

<トマト>
カホさんの実家に居候することになったからね。いろいろ挑戦ができるようになったんですよ。今回は大玉でなくプチトマトでだけど、どうでしょう~。

<キュウリ>
これもこれまで水やりが大変だからやってこなかった。意外と繊細そうだから若干不安~。

<ナス>
「肥料喰い」というけど、本来どれくらい使うんだろうね。育てたことあるけど、肥料をケチってきたからあんまり収穫多くなかったんだよね。今年はいっぱいあげるかぁ。(お義父さんの液肥を見つけたから。)

<ゴーヤ>
水さえあげていれば元気に成長するから、自動散水機と相性がいい。不味いきゅうりはあっても不味いゴーヤはないから気軽で好き。

<ホップ>
こいつも実は初挑戦シリーズ。今のところ元気だけど、この後どうなることやら。どこ収穫すればいいかもイマイチ分かっていない。笑

<ヘチマ>

カインズホームでツルムラサキを買ったつもりがヘチマだった。ヘチマどうしよう。食えるのか?ヘチマ水でも活用してみようかね。(ツルムラサキ食べたいなぁ。)

ーよしさん的に今まで育ててきて「楽だったな〜」って野菜と「あると便利だな〜」って野菜を教えて!

「楽だったな~」は断然ローズマリーだね。夏にも冬にも乾燥にも強いから、彼に至っては完全に放置してる(笑)。まぁ放置しすぎて枯らしたこともあるんだけどね。

「あると便利だな~」もローズマリーかなぁ。あとシソ。彼らがいると料理のアクセントになるから、今欲しいってなった時に便利なんだよなぁ。強い植物だから基本放置で育てられるのもオススメだね。

ー正直な話・・・よしさんもわたしも、植物の世話するのあんまり得意じゃないよね笑。手のかからない野菜を育てることが多いけど、今まで育ててきた中で「これは失敗したな〜」とか「もっと面倒見ればよかった」って後悔してる野菜はあるの?

自動散水機を買ったから「よっしゃー、もっと放置できるぞ~!」って放ったらかしてたら、水のやり過ぎでローズマリーを枯らしてしまったのがそれだね。土は乾燥気味ぐらいのほうが良いってのは分かってたんだけど、ゴーヤ・きゅうりと同じ1日2回散水で放置してたら根腐りしてしまったよ。今はコツをつかんだから問題ないけど、放置過ぎるのはダメだね~。

ー今は実家の空いているスペースにプランターで育ててるけど、いずれは畑で育ててみたかったりする?

畑で育ててみたいとは思うけど、そんなに大きくはしないかなぁ。あくまで個人使用の範囲でやりたいかな。

ー家庭菜園に興味ある人は結構いると思うんだけど、「めんどくさそう」とか「虫が嫌い」とかハードルも高いと思うんだよね。よしさんからのアドバイスってある?

大変かどうかは目的によると思う。僕みたいに「ハーブや野菜を食べれればいい」と思ってる人だったらとても簡単だ。植物なんて土と水と太陽さえあればプランターで育つんだ。程度にもよるけど、虫が嫌いだったら殺虫剤を使えばいい。

目的が「園芸で綺麗な花を咲かせる」や「売れるクオリティの野菜を作る」だったりするともう少し大変だと思うけど、そうでない限りは趣味レベルで完結できるのが楽しいよ。


アカ ヨシロウの自動散水機計画

 夫は今、自動散水機に夢中だ。およそ1年前、自動散水での水やりの魅力について夫が書いた記事がある。

 夫はこの記事を書いた後、「水やりをうっかり忘れても安心」と自動散水システムを1年活用した。

(↑)たくさんのプランターにつなぐための散水用ホース。

(↑)散水用ホースをプランターに差し込めば、ホースの先から設定された量の水が自動的に出る。

 確かに「水やりをうっかり忘れても安心」だった。プログラムさえすれば、毎日決まった時間に、機械が勝手に水やりをしてくれる。だが突然の雨やカンカン照りに対応できるわけではない。そのため、水が不足したことで枯れてしまったり、逆に水を与えすぎて元気がなくなったりしたのも事実。「自動に頼りすぎるとうまく育たない」ということを学んだ。

 が、これで「自動散水」の技術を諦めるような男ではない。

 月刊アカ ヨシロウvol.3『アカ ヨシロウと勉強』でも紹介したが、夫は5月下旬まで「電子工学系」の学校に通っていた。そこで学んだ技術を応用し、自宅の家庭菜園で使用する自動散水をよりいっそう便利なものにしようと、なんと自分で自動散水機の改造を進めている。


<ヨシロウ自動散水機の仕組み>

 プランターに刺しといたセンサーで土壌の水分量を測り、数値がある一定度まで下がったら(乾燥したら)散水するプログラムを授業で作ったよ。

(↑)写真中央、鉢の下。「コの字の部品」が水分量を測るセンサー。

(↑)センサーを土にぶっ刺す!

 自動で散水するのはもちろん、パソコンのモニタで遠隔操作ができるのと、青梅市の天気をリンクして雨の日は散水しないプログラムまで組んで、随時液晶モニタで見れるんだ(!)。


<現時点での自動散水機の難点>

 授業で作ったものだから、まだ使えていないのが現状だ。電子部品のダイオードを壊しちゃったから、こんど秋葉原行くとき買いに行く予定だよ。水をせき止める電磁弁でホースから水を制御できたのが進展かなぁ。

(↑)電磁弁(写真左・指が触れている黒い部品)のオン・オフで、ホースから水が出る・出ないをコントロールできる。

 現時点でわかっている難点は「機器をどこに置こう」だね。外に置くものだから、機器をタッパーとかに入れて防水にしないと壊れちゃうんだけど、電源が遠くて考え中だ。


<今後の改造予定>

 授業ではWEB上での操作までできなかったから、ここまで進めたいと思っているよ。散水が終わったらLINEで完了連絡を貰えるようにもしたいかなぁ。どうせだったら画像も一緒に見たいよね。

 ArduinoRaspberry Piって機器を使っているんだけど、今後はそれぞれのインターネット通信をもっと幅広く出来るようにする予定だよ。


<改造すると、どう便利になるのか>

 これまでは「◯時間に1回散水」とか「◯日に1回散水」みたいに時間でしか制御ができなかった散水を、「土壌が乾いたら散水」とできるのがメリットだよ。水をいっぱい欲しがるゴーヤと水をそんなに必要としないローズマリーをそれぞれで制御することも可能だしね。

 センサーで取得したデータを蓄積することもできるから、水分量だけでなく温度や湿度、天気や画像をデーターベースといてとっておくことも出来るよ。使いみちはまだ考えていないけどねー笑。

 正直「土壌水分量にあわせて散水する」ぐらいのプログラムは簡単だから、いずれは

・「種を植える」
・「経過を観測する」
・「画像認識で雑草は排除する」

といったシステムにも取り組みたい。

 実はこれFarmBotとしてもう出来上がってて、プログラムも公開されているんだよね。僕にはまだアプリと機械側の勉強が足りないけど、いずれは取り組みたいと思ってる。道のりは長いかなぁ。


アカ ヨシロウ、今後の野望

 妻も知らない、夫の家庭菜園計画について書いてもらった。ここからは編集一切なしの、夫の心の声でお送りする。

・・・

 おっと、LINEがきた。先日仕掛けておいた罠に動物が掛かったらしい。画像を開くとイノシシのようだ。朝食を食べたら仕留めに行こう。
 今日の朝食はパン・サラダ・卵焼き・ソーセージ・ヤギのミルクだ。小麦の収穫と製粉が手間そうだからパンは市販品だが、それ以外は自家製である。イノシシで作ったソーセージはクセがあるが最高だ。

 奥多摩に越してきて5年。修復が大変だったが山付きのボロ屋が安く買えたのがよかった。
 自分たちが食べる分の野菜しか育てていないが、最近はほぼ自給自足が出来ている。植物は種植から収穫まで基本全自動でラクチンだ。

 ドローンが起動しだした。どうやら放牧していたヤギが遠くまで行ってしまったようだ。
 さてと朝食も食べたことだし、ヤギはドローンに任せてイノシシを見に行こうかな。今夜は焼肉だ。

・・・

わたしたち夫婦は将来、山の中でIoTの力も活用しながら自給自足な生活を送っているのかもしれない。


編集後記

 土いじりを楽しむ夫の姿はイキイキとしている。

 ここのところ、晴れた日はいつも家の外に出て、新しい苗を植え替えたり、自動散水機の調節をしたりと大忙しだ。

 食べることが好きで、実験や新しいことに挑戦するのが大好きな夫にとって、園芸は楽しくて仕方のないものだろう。

 冒頭でも書いたが、夫は野菜を育てるだけでなく、育てた野菜を使って料理をするのが好きだ。夫が振る舞う肉料理にはローズマリーが欠かせない。暑い季節になるとそうめんが食べたくなる。そんなときには育てた大葉をたっぷり刻んで薬味にする。青々としたパクチーやリーフレタスはそのまま口に放り込む。独特の風味や苦味がたまらなく美味しい。この間はたっぷり育ったニラを収穫して豚キムチをつくった。市販されているニラ以上にたくましい味がして、シャキシャキとした食感が楽しい。

 夫の園芸を楽しむ姿があまりにもイキイキとしているので、夫といわゆる「デート」を楽しむことより、「次は何を育てようか」と話しながら、ホームセンターの園芸用品売り場をくまなく歩き回るほうが楽しくなってしまった。夫と一緒に野菜を育てることのほうが、ウィンドウショッピングの数百倍、数千倍楽しい。
 
 いつか夫がより園芸を楽しめるよう、立派な畑を持ちたいものだ。

 次回は6月末に刊行予定。

photo / sentences / edit: Kaho Katayama

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