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きままにエッセイ。呪いの言葉と魔法の言葉

先日、芦沢央さんの「今だけのあの子」という小説を読んだ。女友達をテーマにした短編集で、「わかる、わかる」と頷きながら読み進めた。

人生の中で、一生繋がっていられる友達は少ないのかもしれない。人はそのときどきで生活が変わり、住む場所も変わり、価値観までもが変わってしまうからだ。

そんなとき、10年ぶりに友達と会うことになった。ネイルの学校に通っていたときの友達で、SNSは繋がっていたものの会うことはもうほとんどなかったけど、たまにするDMのやり取りをきっかけに久しぶりに会おうということになった。ちなみに、彼女は本当に素晴らしいネイリストだけれど、私は途中で挫折してしまった。

さて、私は10年で順調に10キロ太った。
学生の頃は「細い!」「羨ましい!」などと言われていたために、久しぶりに会う友達には「あれ、太った…?」なんて言われることもしばしば。
言われなくても、「このひと私のこと太ったって思ってるんだろうな」と被害妄想をしてしまうので、久しぶりの友達には意識的に会わないようにしていた。会うことが嫌すぎて結婚式を断ってしまったこともある。(ごめんなさい)

そのために、今回もかなりドキドキしたし、緊張した。彼女のご自宅にお邪魔することになり、駅まで迎えに来てくれるという。

そわそわしながら待っていると、私の名前を呼ぶ懐かしい声が聞こえた。「久しぶり~!」と思わず駆け寄ると、彼女は言った。「久しぶり!相変わらず綺麗だね!」。

うれしかった。自分が綺麗かどうかは置いておいて、肯定の言葉がまっすぐに自分のなかに飛び込んできて、そわそわした気持ちは一瞬にして消えてしまった。

言葉の力と呪いを、同時に思い知った瞬間でもあった。マイナスな言葉というのはある種の「呪い」だ。そこから人は、少なくとも私は、また言われたらどうしよう、という念にかられてなかなか動き出せなくなってしまう。

いやもちろん太ったのは自分が悪いのだが、ただ、自分で意識していることと、人から言葉にして言われることはやっぱり違うのだ。

彼女にはふたりのお子さんがいて、その日は2歳半になる娘さんが家にいた。そしてその子も、私のピアスを見ながら「すごくかわいいね」「きれいだね」「かわいいね~!」とこれでもかというくらい褒め倒してくれた。

いくつになっても、そしていくつの人から言われても、プラスの言葉はうれしい。振り返ってみると、私も、マイナスの言葉を吐かないように気をつけてはいたけれど、プラスの言葉を投げかけようとしたことはあまりなかった。

マイナスの言葉が「呪い」なら、プラスの言葉は「魔法」だ。次に誰かに会うときは、プラスの言葉を投げかけてみようと、10年振りにあった友達と、2歳半のかわいい姫が教えてくれた。

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