バスターミナル東京八重洲は思っていた以上にはカオスだった。
地べたに座る人たくさんのたちを横目に、
迷子になったら困る…と1時間も早く着いてしまったことを後悔する。

久しぶりの夜行バス。最後に乗ったのはいつだったか。

最後に乗ったのも大阪行きだったか。忘れてしまったけれど。
カオスと文句をつけたものの外で待つよりずっといい。

とにかく私はとても久しぶりに夜行バスに乗って大阪にいく。

来ない連絡をぼんやりと待ちながら。

昨日の夜はあまりよく眠れなかったから、きっと席に座ったらすぐにでも寝付けるに違いないと自分に言い聞かせる。

昨日からやけにジェルネイルがはがれる。今まではがれたことなんてなかったのに。

来ない連絡をぼんやりと待ちながら、はがれそうなネイルをおさえつける。

私がいまおさえつけているものはなんなのか、考える。
迷子になっては困ると1時間も早く着いてしまったから。

米沢行きのバスがディズニーランド渋滞で遅れているらしい。

行き先のアナウンスが流れるたび、その場所に行ったときの記憶の匂いがわずかによぎる。
鼻の奥がツンとする。

なにも後悔なんてしていないのに
私のからだは何に反応しているのだろう。

笑顔のきおく。
新しく更新されることはないきおく。

地べたに座っている人も少なくなってきた。
私は1時間も早く着いてしまったけれど。
みんなそれぞれの行き先へと立ち、向かっていく。

私もそろそろ行くんだ。
別のきおくを更新しにいくんだ。