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読んだら本が読みたくなる!? 『物語のカギ: 「読む」が10倍楽しくなる38のヒント』渡辺 祐真/スケザネ

突然ですが、皆さんは積読されていますでしょうか、買ったけど時間がなくて読めていない本はもちろん、ちょっと読んでみたけど書いてあることが難しくて諦めてしまった本が1冊や2冊眠っているのではないでしょうか。

特に後者は一度失敗体験をしてしまったため、もう一度読む気が起きにくいことでしょう、もちろん私も冒頭10ページしか読まずに本棚の隅の番人となってしまった者たちがたくさん存在しています。

しかしそんな本達を読みたいと思える本に出会えました。
それが今回紹介する、
『物語のカギ: 「読む」が10倍楽しくなる38のヒント』です。

本書はゲームライターをしながら書評家としても活動されている
渡辺 祐真/スケザネさんが物語を味わうための鍵を紹介する本になります。

『白鯨』から『呪術廻戦』までを味わう

ではそもそも物語を”味わう”とはどういうことを指すのでしょうか、

・ただ読むだけではダメなの?
・感想を持たなきゃいけないの?
・何か意見を出さないといけないの?

 など思うことがあるかもしれません。しかし、本書において”味わう”とは
純粋に「楽しむこと」だと考えています。その上で楽しむためには「視点」が必要だというのです。この視点が書名における鍵、その結果得られた味わいが錠前に当たるというわけですね。

 さて、本書では実際にどのようにして物語を味わえばいいのか、具体例が多数紹介されているのですが、その際に使われている物語が、例えば19世紀のアメリカの作家ハーマン・メルヴィルの名作『白鯨』であったかと思えば人気の漫画・アニメである『呪術廻戦』を用いての説明が始まります。その他にも『源氏物語』『ドラゴンクエスト』『バケモノの子』など、時代も地域も媒体も違う様々な物語を縦横無尽に巡りながらも、一貫して物語への向き合い方を丁寧に提示してくれています。
 自分が知っている物語にも、こんな味わい方があったのかと発見があるのも本書の面白いところです。

全人類のための鍵

 ではそんな味わうための鍵はどのようなものなのでしょうか、具体的な中身は是非本書を手に取って確認してもらいたいのですが、それらに共通して言えることは全く説教臭くないということです。国語の授業と結びついてしまうからでしょうか、例えば作者の気持ちに寄り添いなさいとか、この物語の教訓は何か、と考えさせられるのかと思っていましたが、本書ではむしろそれらは時には必須ではないとします。そして十人十色の私たちの本棚に合わせるように、「これはどう?こっちもいいかも」と一つずつ私たちに見せてくれるのです。

 中にはこれは私には難しいと思った鍵も正直ありましたが「これを使って物語を読みたい」と思えるものがいくつか見つかりました。
もちろん私が難しいと思ったものがちょうどいいと感じる人もいれば、私が選んだものが難しいと感じる人もいるでしょう。裏を返せば、誰にとってもその人に合った物語を味わう鍵があるということです。

本を読みたい‼︎

 本書を読んでいるとまさに鍵との出会いの連続になります。すでに出会った物語に対して「この手があったか、」と膝を打ったり、一度は諦めた名作に対して「これならいける」と再戦を誓ったり、逆に「この鍵を使いたいからこの本を買おう」とも思ったりします。

 物語に触れる機会を増やしたい、最初の一冊も買ってきた、でもなかなか1ページ目を開けない、という人は、本書を1冊目においてはどうでしょうか、読み終わったら無意識に2冊目に手が伸びる最高の1冊目になること間違いなしです。

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