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男爵Mとワタシ・第二話

2022年11月1日の今日は男爵M宅での初仕事。ワタシの住むクイーンズ区からEとFラインのサブウェイに乗ってマンハッタンの最寄り駅までむかう。問題なければ1時間弱で到着予定。デリで買ったホットコーヒーのラージサイズを片手に45分前に近所にいた。携帯の電源が少なくなっていることに気づき、サイドウォークに設置してある街案内用電子タワーに付いている差し込み口へUSBケーブルをつなぎ少し充電しておいた。これは、コロナ中にストリート上で見たホームレス達から学んだ知恵だった。

あらかじめ教えられていた暗証番号でビルのドアのロックを解除し、ワインレッドのカーペットが敷き詰められている三階まで階段をあがった。自らドアを明けたグレーのウェイビーなヘアの細身に黒いシャツとパンツ姿の小柄で粋な男爵さまが、ワタシを部屋のなかへ招き入れくれた。

そこには、彼の生活空間を兼ねたロフトがあり、寝室となる一角もあれば、反対側にはデスクのある事務所的なエリアや、キッチンがある。キャンバスや額縁に入った様々なアーティストの作品群が所狭しと壁や床に置かれていた。数々のエレキギターからオーディオや撮影機材も壁に沿って無造作に並べられ即興も可能にした。

木製のステップを数段あがり窓から屋上へ出られる。その窓の隣にベッドが置いてあり、ヘッドボートに面した壁にはビンテージのグレーの羽織が飾られている。左脇にはマネキンに着せた白いペンキで塗られたよろいが立っている。マーク・ジェイコブスがイベント後に置いていったそうだ。ベッドの左側並行に障子4枚で開く2畳ほどの大きさのクロゼット・スペースがありその奥のドアをスライドするとバスルームがある。

そのスペース内の壁二面には、天井から床までワイヤー製のシステム家具が敷き詰められている。そこで、各棚や引き出しから散乱しているジャケット、シャツ、パンツをハンガーに掛けたり、たたみ直した。あちこちに脱ぎっぱなしになった靴や使った小物やアクセサリーを整理整頓する間、同時に男爵さまから直々に全自動の洗濯機と乾燥機の使い方も伝授した。

そして、そこがワタシのメインの作業場になった。


48歳から人生の本編スタート。「生きる」記録の断片を書く活動みならず、ポエム、版画、パフォーマンス、ビデオ編集、家政婦業、ねこシッター、モデル、そして新しくDJや巨匠とのコラボ等、トライ&エラーしつつ多動中。応援の方どうぞ宜しくお願いいたします。