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『海の都の物語』の舞台へ!

ヨーロッパがなぜだか好きで、大学生になったら行けるだけ行こうと夢見ていた高校生の頃。
胸高鳴らせながら読んでいたのは、塩野七生さんや藤本ひとみさんの本。
彼女たちは、ヨーロッパを舞台にした小説やエッセイを数多く書いています。

特に塩野七生さんの本は、一時期、貪るように読みました。
『ローマ人の物語』では、もちろんローマに思いを馳せ、『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 』では、フォレンツェを思う。
そして、夢中になって読んだ『海の都の物語』は外せない!

ヴェネツィア共和国の一千年について描かれたこの本は、まるでそこにヴェネツィアの男たちの息遣いが聞こえるようなリアルさがありました。
文字通り夢中になり、ヴェネツィアに行ってみたい!と何度も何度も思ったものです。

パリには大学時代に留学をしたし、イギリスにはニューキャッスルという街にある州立大学のサマースクールに参加し、そこを拠点にあちこち旅しました。
イタリアには、パリへの留学帰りにローマ、フィレンツェ、ミラノと回りました。しかし、時間や予算の関係でその時はヴェネツィアには行かずじまい。
社会人になった私は、今度は仕事に夢中になり、やがて結婚し、子供が生まれ……。仕事と育児、新しい趣味に忙殺され、海外に旅することをやめてしまいました。

実は、そこには呪いがありました。呪いの話は、いずれ語り尽くしたいことの一つです。
呪いから解放された私は、17-8年ぶりにヨーロッパの地を踏むことを決めました。学生時代、限られた時間でしたが暮らしていたパリには、もちろん再訪したい。そして、今度は、今度こそはヴェネツィアに行きたい!その思いは強くパリ、ヴェネツィアありきで旅程を組むことに。

パリ、マルセイユとめぐり、ヴェネツィアに入る旅。
本当は鉄道で行きたかったのですが、あえなく旅程上、飛行機でヴェネツィアの空港に降り立ちました。なぜ鉄道かって、それこそエッセイにあったのです。鉄道でヴェネツィアに向かうと、海の向こうにぽっかりと都市が浮かび上がってくる様が最高だ、と。

残念ですが、心残りは再訪の動機になります。私は今回、短い三日間のヴェネツィア滞在で、たくさんのやり残しがありますから、必ずあの水の都をもう一度訪れると決めています。心残りも、悪いことばかりじゃありませんね。

ヴェネツィア空港からヴェネツィア本島まではバスで向かいました。長い長い橋を渡り、私は、ついにローマ広場に到着したのです。
何年も焦がれていた水の都。人波に吸い込まれるようにして、ヴァポレットに乗り込み、サン・マルコ広場を目指しました。

時刻は11月の17時ごろ、あたりは夕暮れから夕闇へ移り変わって行く頃。少しずつ闇が広がり、代わりに灯りが灯ります。大運河はヴァポレットと水上タクシー、ゴンドラが忙しく行き交う。両岸には、水から生えているような、古い古い建物がぎっしり。
ここは時が止まっているのか?きっと、950年前のヴェネツィアのドージエもこの光景を見たのではないか?変わったのは人々の服装と船の形状だけなんじゃないか、と錯覚するほどの古めかしさ。
運河を滑るように進むヴァポレットから、私は夢を見ているような心持ちで焦がれたヴェネツィアの街を見つめていました。

ついに私は、あの水の都にきた!ヴェネツィアに降り立った。
夢が叶う瞬間は、人生において格別なものです。
これからも、何度でもこんな思いをして行きたい。呪いを解いてよかった、と思った瞬間でした。

この日から三日間、ベネツィア本島や、島を歩いて、歩いて歩きまくりました。どの路地もどの水路も、『海の都の物語』で空想したその場所。数々の歴史の舞台なのです。迷い子になることすら、楽しくて仕方ない。

パリに住んだこともあるし、いくつかヨーロッパの都市を訪れた経験がありますが、ここは格別。ヴェネツィアを訪れた人がよく、あそこは特別だというのを聞いていましたが、それも納得の不思議な不思議な都市。人がこんな海の上に都市を築いて、暮らすなんて。

テーマパークにいるような気持ちになるくらい、不思議な感覚なのです。テーマパークがここを模しているのだけれど。まるで完璧なテーマパークのようなのです。
現実って、どうしても生活の積み重ねですから、テーマにそぐわないものを置くことになるもの。ヴェネツィアでは、その生活臭ささえ、昔のままのようで完璧なのです。
ヴェネツィアがヴェネツィアであるために、並々ならぬ努力があるのか。単に水の都である不便さを許容して生きると、この完璧なテーマパークになるのか。

街を歩いている間中、ふわふわとした気持ちになりました。ここで現実に人が暮らしてきたのか。今は、観光に訪れる人がいるから成り立つような街だけれど、変わらぬ姿で海に浮かんでいる。

地上60メートルの鐘楼にも登り、高いところから街を眺めました。あいにくの雨で、強風に襲われましたが、あの眺めも忘れられない長めになりそうです。
これがヴェネツィア。この素晴らしい景色を見に、私は再びここを訪れる。
『海の都の物語』の舞台を訪ねた今、その思いしかありません。

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Yuka Shibayama
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