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雨の念仏

昨日の朝方は
うちつけるような雨音に雷と
激しい嵐のような天候だった。

読み進めていたのが
宮城道雄の随筆集「雨の念仏」

近代日本の伝統的な音楽の世界の大御所・・
としたざっくりしたイメージしかなかったのだが
果敢に独自の世界を切り開いていった
新進気鋭の芸術家だったことがよくわかる。

バイオリンや笙などの楽器にも挑戦し
数々の海外の音楽家たちとの共演。

レコードを通して海外の音楽を貪欲に聴き、
積極的に自身の作曲にとりいれていった。

彼の処女作は「水の変態」という曲。

道雄は明治40年、14歳のころ
父の商売の都合で朝鮮に呼び寄せられたのだが
好きな箏を勉強することに余念がなかった。

師匠がいなかったので、
曲を弾きつくしてあきてしまい
作曲を始めたのだという。

「水の変態」は
小学読本にあった以下7首の和歌で構成されているものだ。


小山田のきりの中道踏みわけて
人来と見しはかがしなりけり

明け渡る高瀬の雲にたなびかれ
光る消えゆく弓張の月

けふの雨に萩も尾花もうなだれて
うれひ顔なる秋の夕暮

更くる夜の軒の雫の絶えゆくは
雨もや雪に降りかわるらん

むら雲のたえまに星は見えながら
夜ゆく袖に散る霰かな

白玉の秋の木葉にやどれりと
見ゆるは露のはるかなりけり

朝日さす片えは消えて軒高き
家かげに残る霜の寒けさ


霧、雲、雨、雪、霰、露、霜と、
水の七変化を表している。

自発的な作曲への試みは
弾くものがなくなってしまったことと、
住んでいた環境で
自然の四季の風情を感じていたことだった。

目が見えなくなってから

この道をゆくよりほかはない。
迷ったりする余地はない。ただまっしぐらにこの道を進んで行こう。
その一念が私を今日あらしめてくれたともいえるのである(「箏と私」)

日本的な感性を保ちながら
ご自身の命を全うされ、音の世界を追求。
全世界に名をとどろかせ、
今に遺る数々の名作を生みだしたのである。



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