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欧州サッカークラブの「放映権収入」の特徴を考えてみる

こんにちは。Kid.iAです。

本日は4月1日ということで、新生活が始まるシーズンとなりました。我が家の息子たちもそれぞれ小学生、幼稚園と新しい環境に飛び込みます。

気温もあたたかくなり桜も綺麗に咲くこの季節。

私自身も気持ちも新たに過ごしていければと思います。

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さて、現在投稿が続いているUEFAの「Club Licensing Benchmarking Report」シリーズですが今回で5回目の投稿です。

⬇️ シリーズの過去投稿はコチラ

毎回情報を軸とした問いを立て考えたことを書いている本note「Toi Box」ですが、レポート内容の中から前回に引き続き7章「Club Revenue(クラブ収入)」にフォーカスします。

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前回投稿で大まかに書いた「収入源」をより深堀りするため、今回はその内の一つである「TV放映権収入」にフォーカスして書いていきます。

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1. 放映権収入が大きい「国・リーグ」はどこ?

まずはTV放映権収入が全体の収入に対してどの程度を占めるのか、欧州上位8ヶ国を対象にして「収入源別の割合」を見ていきましょう。

apple to appleの比較はできないものの、日本のJリーグとも比較できるようにまとめてみました。(比較的TV放映権要素の強い「Jリーグ配分金」をグラフ左に置いています)

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真っ先に目に入ってくるのがイングランド等を含む欧州上位5ヶ国リーグ、通称BIG5「TV放映権」割合の高さです。特にイングランドのプレミアリーグはその額もさることながら、割合が唯一50%を超えています。

この数字は「プレミアリーグの試合をTV視聴したい!」と思える人が国内・世界中に沢山いることを裏付けていると言えそうです。

一方で日本のJリーグ「スポンサー収入」の割合が高く(グラフ上は物販収入と合算)、その収入源別構成はロシア比較的近い状態と言えます。

昨年契約内容を見直したDAZNとの放映権契約(2017~2028年の12年間で約2,239億円)は「均等配分」や「成績」「DAZN視聴者数」等、様々な切り口を元にクラブへ配分されています。

それでも全体の10%の枠内ということからも、スポンサー収入への依存度合は高いと言わざるをえません。

2. 放映権収入の「配分方式」で一体何が変わる?

続いて、このTV放映権収入を「一クラブあたりの平均収入額」という切り口でも見てみましょう。

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ここでもプレミアリーグが圧倒的な金額でトップです。

その額なんと一クラブあたり143Mユーロ(約184億円)。これがどれくらい高いかというと、2019年にJリーグ史上最高額を記録したヴィッセル神戸の全収入114億円を「TV放映権収入のみ」で超えるというレベルです。

そうしたこともあり、クラブ別の収入ランキングでもTOP20の内17をプレミア勢が占めています。

では、なぜこういうことが起こるのでしょうか?

それはTV放映権収入の絶対額の大きさもさることながら、その収入の「配分方式」が要因の一つに挙げられます。収入配分の仕組みはそれこそ国によって異なり、クラブへの配分額にもバラつきが生まれるのです。

以下グラフは2018年のTV放映権収入のトップに位置するクラブ中央値に位置するクラブとの差が何倍あるかを示しているものです。

また( )の数字は10年前の2009年の数値です。

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左から2番目に位置するイングランドのプレミアリーグは、前述したその甚大な放映権収入をほぼ均等に配分していることがこのグラフからわかります。

トップクラブ中央値クラブとの差が1.4倍程度で10年前とほぼ同数値であること、これがTOP20の殆どをプレミアリーグクラブが占める理由です。

リーグの成績が多少悪くても放映権収入の配分が大きいので、それだけで他国のビッグクラブを超える(並ぶ)収入となるわけです。

この配分方式、数年前まではスペインラ・リーガはクラブが個別で放映権の交渉を行っていたこともあり、バルセロナレアル2強にかなりの金額が渡るような仕組みでした。

それを2015年からリーグの一括管理に変更し、その50%を各クラブに均等配分すること等、放映権収入分配を工夫したことで直近10年間でクラブ間格差が改善されているデータが出ています(トップクラブと中央値クラブとの差が7.6倍から3.1倍に縮小)。

そして、グラフ右端のポルトガルですが、実は以前のスペインと同様にクラブによる個別の放映権交渉がなされています。それゆえにクラブ間の格差が助長されており、なんとトップクラブ中央値クラブとの差が約10倍から15倍と圧倒的に開いてしまっています。

このあたりはUEFAもレポート分析結果から何かしら改善に向けた対応を行うのではないでしょうか(既に行っている?)。

3. 放映権の「契約更新スパンと伸び率」は?

ここまでTV放映権の各種データを見てきましたが、そうした放映権の契約を各国は一体どの程度のスパンで行っているのでしょうか?その金額の伸び率にも注目して見ていきたいと思います。

以下は2012/13シーズンから向こう2022/23シーズンまでの主要国のTV放映権契約収入金額をシーズン毎に分けて記載した表です。

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グラフ内グリーンにハイライトした箇所が「現在進行形の放映権契約(レポート当時)」であり、ここから各国「何年スパンの契約なのか」が分かります。

例えばイングランド、スペインやイタリアは3年スパン、ドイツやフランスは4年スパン等がわかります。

グラフを分析してみるとBIG5はTV放映権収入の全体比率が高いだけでなく、どうも「放映権更新毎に販売額が大幅増加している」ことが読み取れます(各国それなりの金額規模にも関わらず)。

一方で、伸びてはいるもののクラブ個別放映権管理のポルトガルや、9年間というスパンでの長期契約型のオランダはその販売額が比較的小さく収まってしまっている現状も同時に読み取れます。

JリーグもDAZNと10年という長期契約を結ぶことで従来にない大きな収入源を得ることができましたが、このグラフをみるに「契約期間はなるべく短くし、リーグの価値を上げつつ、更新毎に販売価格を上げていくこと」がかなり重要なポイントな気が個人的にはします。

まとめ

今回は「TV放映権」という欧州サッカークラブ最大の「収入源」について様々なデータを用いて書いてきました。

改めて自分でも情報を整理・まとめていく過程で感じたことがTV放映権のリーグ一括管理及び戦略の重要性です。(従来から様々な場面で多くの方が指摘されている点だと思います)

それを上手くマネジメントできているのが欧州のBIG5(特にプレミアリーグ)であり、独自の路線を進むためにアレンジする必要はあるもののJリーグは引き続き参考にしていくべきだと思います。

「Club Licensing Benchmarking Report」シリーズですがまだまだ続きます。

次回は「収入源」の一つである「Gate Receipt(チケット収入)」にフォーカスして投稿予定です。

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今後の創作の活力になります。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

(追記)他にも執筆したスポーツビジネス関連投稿を以下にまとめています。


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