あなたならサッカー観戦にいくら払う?欧州サッカークラブの「チケット収入」分析
こんにちは。Kid.iAです。
久々の二日連続投稿です。(最近またちょっとずつ頑張りはじめております。ちょっとだけ)
今回はUEFA「Club Licensing Benchmarking Report」シリーズの6回目、レポート内容の中から前々回・前回と同じく7章「Club Revenue(クラブ収入)」にフォーカスします。
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突然ですが、皆さんはサッカーの現地観戦にいくらまでなら払えますか?
家でゆっくりTV観戦もいいのですがサッカーに限らずスポーツの魅力は「ライブ」であり、たまにはコスト(お金や時間)を払ってスタジアムで観戦したいと思う方も少なくないと思います。
ちなみにデロイトトーマツ社が毎年発行している「Jリーグ マネジメントカップ2019」によると、2019年度のJ1リーグの平均チケット単価は「2,345円」でした。
答えはそれぞれあると思いますが、この「チケット価格」とそれを「購入しようとする人の数」によってサッカークラブの収入が変わってくる事実があります。
前回投稿では「収入源別」の深堀りとして「TV放映権収入」について書きましたが、今回は「Gate Receipt」いわゆる「チケット収入」にフォーカスしてまいります。
日本に住んでいる人からすると中々イメージできないことですが、欧州各国現地のサッカーファンの方々は実際にどの程度の金額でチケットを購入してスタジアムに足を運んでいるのでしょうか?
そんな問いを頭に置きながら、今回は以下のような構成で書いていきたいと思います。
1. 一クラブ当たりのチケット収入が高い国は?
まずは大きな括りで、欧州の「国・リーグ別」にチケット収入金額を比較したらどうなるか。それぞれ一クラブ当たりの平均を取って分析した結果が以下です。
トップのイングランドが一クラブ当たり36.2M€(約47億円)、ドイツが28.4M€(約37億円)、スペインが27.8M€(約36億円)と全体を牽引しています。
イタリア、フランスは先の3ヶ国と比較すると少し差が開いていますが、流石BIG5に含まれる2ヶ国といえます。
そして、そのような中注目したいのがスコットランドです。欧州BIG5に次いで堂々の6番目に位置しています。
「放映権収入」ランキングでは上位に入ってこなかったスコットランドリーグですがそれもそのはず。「チケット収入」の全収入における割合がなんと43%という依存傾向なのです。
かって中村俊輔選手が在籍したグラスゴーを本拠地とするセルティックFCのホームスタジアム「セルティック・パーク」における熱狂的なサポーターの雰囲気が記憶に残っている方も多いと思います。
放映権収入とチケット収入どちらが高い方がいいという話ではなく、それはあくまでバランスの話。それぞれがそのクラブの特徴と言えます。
いずれにせよ前回投稿の「放映権収入」に続き、ここでもイングランドのプレミアリーグの強さが目立つ結果になりました。
2. 欧州で最もチケット収入が多いクラブは?
続いて今度は切り口を変えて「クラブ別ランキング」からチケット収入を分析してみます。
以下が「欧州TOP20」のクラブとその規模を表したグラフです。
まずこの上位20クラブで欧州クラブのチケット収入全体の50%を占めます。
また上位6クラブ(バルセロナ、レアル、バイエルン、アーセナル、マンU、パリ・サンジェルマン)が100M€(約130億円)を超えています。
前回放映権収入でも例に出しましたが、この100M€という金額は2019年にJリーグ史上最高額を記録したヴィッセル神戸の全収入114億円を「チケット収入のみ」で超える規模感です。
次に上位クラブと中位クラブの差額を見てみますと、丁度比較しやすい位置にいるのが4位アーセナルと11位ユベントスでその差が約2倍となっています。
ユベントスもかなりの人気クラブですが、アーセナルのエミレーツ・スタジアムのキャパは約6万人、一方ユベントスのユベントス・スタジアムは約4.1万人と最大キャパに2万人の差があること、かつ後述する観客一人あたりの「チケット単価」でもアーセナルがユベントスを上回っていることでこの「2倍というチケット収入差」が生じています。
チケット収入を上げていくにはスタジアムのキャパ及びそこを満員にすることだけではなく、一枚一枚を購入いただく観戦者の方の「チケット単価」を意識して戦略を立てないといけないということですね。
3. 観客一人当たりのチケット平均単価は?
ここまでの話を踏まえて、最後にスタジアムに足を運ぶ「観客一人当たりのチケット平均単価」について2つの切り口で見ていきます。
一つ目は「クラブ別」の切り口です。
欧州トップ20のクラブを見てみると、フランス リーグ・アンの人気クラブであるパリ・サンジェルマンが93 €(約1万2000円)でトップです。サッカーのチケット1枚の平均単価が「1万2000円」。すごい。
また、スタジアム投資の恩恵を受けるクラブもいくつかあります。
3位のレアル、8位のリヴァプール、13位にランクインしたスペインのUD Las Palmas等は、スタジアム改修や座席のアップグレード、VIP席等による「チケットのプライシングを見直すこと」で観客一人あたりの収入を増やしたクラブです。
二つ目は「国・リーグ別」の切り口です。
欧州トップ20の国・リーグを見てみると、イングランドのプレミアリーグが38.6 €(約5000円)でトップです。
各国国内リーグ及びUEFA大会も含めた観客一人当たりのチケット単価平均は27.3€となっています。
上位3つにはBIG5の国・リーグが位置するものの、全体の成長はその他の中規模リーグ(スウェーデン、ノルウェー etc.)が牽引しています。
参考までに、日本のJ1リーグを当て込んでみると2019年J1リーグの平均実績は約18€で上から15番目のフィンランドより少し高いくらいになります。
こうして比較してみると、まだまだチケット単価を上げる余地はありそうですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後まで読んでみると冒頭に提示した日本のJ1リーグ平均チケット単価「2,345円」がなんだか安く見えてきましたね。
それほど「欧州各国のチケット単価が高い」と言えます。
そしてそれは同時に、欧州各国サッカーの価値、スタジアム観戦の価値が高いということなのかもしれません。
日本でも近年、試合日程や席種・天候・個人の嗜好などに関するデータ分析を基に、購入するタイミングによって価格の変更を自動的に行なうチケットの価格変動制「ダイナミックプライシング」を採用しての販売が浸透してきたりしています。
また以前にも投稿した「サッカースタジアム開発」もいくつかのクラブで行われており、そうした一連の価値の創造が将来的なチケット収入の拡大にもきっと繋がるでしょう。
やっと今回で「Club Revenue(クラブ収入)」パートが完結です。
次回は、収入とセットで考えていきたい費用の中でもサッカークラブ関連の主要素である「Club Wages(人件費)」について書く予定です。
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今後の創作の活力になります。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
(追記)他にも執筆したスポーツビジネス関連投稿を以下にまとめています。
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