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欧州サッカークラブの賃金トレンドとビジネス主要指標

こんにちは。Kid.iAです。

まずは昨日のnote7周年、本当におめでとうございます。

昨年末から創作させて頂き約半年とまだまだ初心者クリエイターですが、今後とも宜しくお願いいたします。

さて、今週からUEFAチャンピオンズリーグのノックアウトステージ準々決勝が始まりました。

昨日はエムバぺの2ゴールの活躍もありパリ・サンジェルマンがアウェイでバイエルンを撃破。その他カードも含めて白熱のゲームが来週以降も続きます。サッカーファンとしては楽しみですね。

今回はUEFAの「Club Licensing Benchmarking Report」シリーズの7回目、レポート内容の中から8章「Club Wages(クラブ賃金)」にフォーカスします。

⬇️ シリーズの過去投稿はコチラ


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前回までの投稿で取り上げた各種「収入」とセットで考えていきたい「費用」ですが、その中でもサッカークラブ関連の主要素であるのが「Club Wages(賃金)」です。

欧州サッカーの最前線で活躍するような選手は沢山のお金を稼いでいます。そして当たり前の話になりますが、そうしたクラブに所属する選手やスタッフの給料を雇う側であるクラブが「賃金」として支払っているわけです。

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今回のテーマを「欧州サッカークラブの賃金トレンドとビジネス主要指標」として、以下のような構成で自分なりにまとめて書いていきたいと思います。

1. 欧州サッカークラブの賃金の「トレンド」は?

つい先日ある記事を読んで知ったのですが、そこにはスペインのビッグクラブの一つバルセロナのリオネル・メッシ選手が4年総額5億5500万ユーロ(約705億円)でクラブと契約したと伝えられていました(金額の正確性は定かではありません)。

これを時間単位ごとに換算してみると、それぞれ以下のような金額となります。

1秒:4ユーロ(約507円)
1分:265ユーロ(約3万3000円)
1時間:15875ユーロ(約201万円)
1日:38万1000ユーロ(約4837万円)
1年:1億3900万ユーロ(約176億円)
4年:5億5500万ユーロ(約705億円)

なんと日給換算で約4,800万円。

もちろん全てのサッカー選手がメッシ選手のような収入かというとそうではありませんが、スポーツビジネス界隈の情報を収集していると選手の給料は増加傾向と目にしたりします。

実際はどうなのでしょうか?

以下は2009年から2018年の10年間に渡る欧州クラブ全体の「収入と賃金の成長率」のトレンドです。

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直近2018年の賃金成長率は前年比+9.4%と過去11年間で最高の伸びを記録しています。

2013年からは5年間の内4回収入の増加と比べ賃金の増加を抑えられています。これはそれまで(2009~2012年)とは逆のトレンドでした。

ただ2018年に収入の成長率が大幅に落ちた一方で賃金成長率が増加、結果としてトレンドが再逆転しています。

次に、この賃金上昇の要因を探るべく欧州各国・リーグ別のデータをみてみます。以下は「一クラブあたりの平均賃金額」が多い順に並べた国・リーグのトップ10です。

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イングランド(+13%)、スペイン(+20%)、ドイツ(+11%)、イタリア(+5%)、フランス(+15%)といわゆるBIG5と呼ばれる国・リーグは軒並み前年比で賃金が上昇しており、その成長率全体の90%を占めています。

逆にいうと、TOP10外の中低所得リーグの賃金も上昇傾向にあるものの、BIG5以外の国・リーグの賃金増加率は全体の約1割しかないということです。

そうした中でもクロアチア、セルビア、スロベニア、コソボ、ジブラルタルの5つは、後述する「Wage to revenue ratio」が100%を超えており過度な賃金増加となっているデータもあります。

2. クラブが重要視すべき「主要指標」とは?

BIG5を中心に全体的に選手賃金は毎年「増加傾向」にあることはわかりましたが、どうやら比較的「健全に」伸ばしているクラブと「不健全な」伸びをしているクラブに分かれるみたいです。

それではクラブは自らの財務に影響する「賃金」をどのようにして管理しているのでしょうか。その答えの一つが以下の折れ線グラフが表している数値です。

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その数値というのが「Wage to revenue ratio」つまり「全収入に対する賃金の比率」です。

これは(欧州に限らずですが)サッカークラブの主要財務指標の一つとされています。

分かりやすい指標ですよね。ビジネス的には極々当たり前のことで「稼いでいる以上に費用は掛けず利益を出しましょう」ということです。

グラフを見ると2012年の65.2%から減少トレンドとなっていて、これは各クラブの経営努力もそうですが2011年から段階導入された「ファイナンシャル・フェアプレー」の影響が大いにありそうです。

しかし、2017年には10年ぶりに最低値の61.3%を記録するも翌年2018年には再び上昇しています。

このグラフには入ってませんが、2018年TOP20以下の13リーグはこの「Wage to revenue ratio」が80%を超えるというレコードを記録しています。

続いては「クラブ別」の切り口で、TOP20クラブの「金額」及び「Wage to revenue ratio」を見てみましょう。

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画像右端、トップのバルセロナクラブ初の500M€超え(529M€=約688億円)を記録しています。

また、マンチェスターユナイテッドとユベントス以外の18クラブ全て賃金額が前年比で増加しています。当然要因は一つではないのですが、各クラブ毎にリーグ戦やチャンピオンズリーグの成績が影響しているはずです。(よい成績を残せば当然選手やスタッフの給料にも反映されます)

そして一つの事実として、20クラブ中15クラブ「Wage to revenue ratio」が70%以下となっています。(決して70%以下が「健全」というわけではありませんが)

3. 欧州各国クラブ間の「賃金格差」はどの程度ある?

最後に、各国リーグの上位・中位・下位のクラスター毎の平均賃金と、各国リーグ間それぞれの「格差」を比較できるようにまとめたグラフを紹介します。

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まず個人的にも興味を引いた点としては、イングランドのプレミアリーグの上位5~8位の平均賃金がドイツ、イタリア、フランスのTop4クラブと同額であることです。

過去の投稿でもプレミアリーグの収入金額規模の大きさ(特に放映権収入)は書いてきましたが、その分上位クラブの選手・スタッフ賃金も他国・リーグと比べて高いことがここからわかります。

また、スペインのラ・リーガTopとBottomの差が他国と比べて大きい結果になっています。放映権収入のリーグ一括管理で収入格差は改善傾向にはあるスペインですが、まだまだ賃金格差是正には至ってないことがわかります。

画像左下、BIG5以下のクラブに目を移してみるとポルトガルは最も賃金格差が大きいリーグ(TopとBottomの差が22.9倍)となっています。この結果は放映権収入のクラブ間格差と同じものになっています。

ポルトガルの賃金格差を改善するためには、まず放映権収入の配分方法をリーグ主導で改善する必要があると考えます。

まとめ

こうして読んでみると、やはり「賃金(費用)」は前回までの「各種収入」とセットでデータを読むことでより理解が深まるなと思いました。

また今回対象としたUEFAレポートのデータは2018年までの情報が中心ですが、コロナ禍を経てビジネス環境が大きく変化している現在の欧州サッカークラブ事情を加味するとすれば、収入がダウンするクラブが数多く生まれることは必至であり、それは今後のサッカークラブの賃金(選手・スタッフの給料)も抑える方向で動かないと一気にクラブの経営状況が悪化する可能性が高いと言えます。

コロナ禍前後で比較できるデータが整うのはまだ少し先になると思いますが、スポーツビジネス・サッカークラブ経営に興味のある方はそのあたりどのように推移していくのか注視してみてはいかがでしょうか。

UEFAレポートシリーズも残すところあと3回です。

次回は収入と費用と書いてきたところでその二つと関連性のある「Profitability(収益性)」について書く予定です。

もし記事に少しでも共感頂けたなら「スキ」や「フォロー」をしていただけると嬉しいです‼️

今後の創作の活力になります。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

(追記)他にも執筆したスポーツビジネス関連投稿を以下にまとめています。


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