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香り、音、感覚を研ぎ澄ませ

朝1番に出勤をする。

日も昇らず、真っ暗に出勤する冬に比べると、日が上るのが早いから明るくなった空のなか、まだ人気の無い道を歩いて出勤する。


朝ごはんも食べずに、起きてすぐに出勤をするので、オープン作業をしながら頭を起こす。

朝早くから準備をされたキャビネットのサンドウィッチやクロワッサンなどを横目にコーヒーマシンの準備をする。

コーヒー豆をグラインダーに入れる。

サラサラと音を立てながらグラインドの中に入っていくのだが、高いところから入れるというのもあって、コーヒー豆の香りが広がる。


それと同時進行で、フィルターコーヒーを作る。

コーヒー豆の量を測って、中粗挽きに。

日本と同じでマシンだけれど、湯気を立てながらポットに入っていく。

このブラックコーヒーの安心感は日本で何年も匂いを嗅いできたからだろう。


そして、昨日のクローズで使った洗浄液を機械から取り出すためにコーヒーショットをロングタイムで作る。

コーヒーマシンが温まりきったら、外の席の準備をして、時間になったらオープンする。



朝7時という早い時間にオープンするのだが、意外と人はたくさんくる。

ただ、その多くが出勤前の人でテイクアウェイをするか、新聞読みがてら少し飲んでからいく人、朝ごはんを食べる人。

大抵の人が常連さんなので、毎朝のルーティンなのだろう。

「やぁ、今日もおはよう!」

といった笑顔で挨拶をしてくれる。


私も同じように、

「おはよう!今日は調子どう?」

と話す。知っている顔だと聞かなくてもコーヒーはわかるので、今日もこれでいい?と聞くことも多々ある。

ほとんどがNZならではのコーヒーのフラットホワイトを頼んでいく。


ガリガリとグラインダーでコーヒー豆を細かく砕いたものをタンピングでしっかり平行にして固めたら、コーヒーマシンでショットを作る。

この時、1番コーヒーを作る過程で好きなのがグラインダーでコーヒーを砕く時の音だ。

今から美味しいコーヒーを作るために砕いていて、香りが弾けていると思うとたまらない。

この時に美味しいコーヒーのイメージが作れる。


それと同時進行でミルクを作る。

ジャグにミルクを注いで、ノズルを中心から少しずらしたところに位置させたらスチームをする。

一見簡単そうに思うが、ミルク系のコーヒーを作るためには1番重要な過程だ。

しっかり泡を作ったら、口当たりを良くするためにフォームミルクとスチームミルクを混ぜて大きい泡をなくして、きめ細かくなめらかな泡を作る。


そして温度は60-65℃を目安に、ミルクの回転を見ながらジャグの角度を調節して、音・ジャグの温度・香りを元にスチームをやめる。

体の神経といった神経を使う。

まだまだ未熟な私も日々鍛錬しているけれど、研ぎ澄まされた感覚でやっているのがわかる。

作り始めた4ヶ月前に比べるとかなりいい。


コーヒーショットの抽出時間を確認し、可能ならクレマを均一にして注ぐ。

しっかりと部分部分にミルクやショットのかけらが出ないように、均一な表面を作る。

ある程度注いだら、残りのフォームミルクでラテアートを作る。


この瞬間はバリスタの遊び心である。

チューリップにしようか、ハートにしようか、ロゼッタにしようか、スワンにしようか、はたまた新しいラテアートに挑戦してみるのか。

美味しいコーヒーを心がけながらも、ファーストインプレッションでお客さんの心を楽しませて、コーヒーが美味しいと飲む前から感じれるようにする。

ラテアートが成功すると、自己満足がすごい。

でもそれをサーブするとお客さんも喜んでくれるので、私も幸せになる。

これが幸せの伝染だ。


毎日コーヒーを作ることがいつもの繰り返しにならないからこそ面白い。

日々鍛錬しつつも、でもコーヒーとの対話である。

一お客さんの好みがあればそれに合わせなければならない。

そして、それに合わせて研ぎ澄ました感覚を元にコーヒーを作る。

簡単そうに見えて難しい仕事なのだ。


どうして毎日安くないコーヒーにお金を払うのか。

4.5ドルというお金は決して安くはない。

私たちはプロフェッショナルという名の下で働いている。

1日の始まりを作るのも私たちの仕事で、その人の1日を作るといっても過言ではない。


決して誰かから認められる仕事ではないだろうけど、誰かがいないとみんなの1日が始まらないのも事実。

どんな仕事だって、AIだけでは成り立たないのだ。

どこにも人情が溢れているから。


だから今日も私は鍛錬する。

全ての感覚を研ぎ澄まして、最高の1日をお客さんに届ける。

ご支援いただいた分は海外移住への未来の投資とコーヒーの技術向上に使わせていただきます。