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【読書感想文】『死ぬまで生きる日記』(土門蘭著)

あらすじ
日常生活はほとんど支障なく送れる。「楽しい」や「嬉しい」、「おもしろい」といった感情もちゃんと味わえる。それなのに、ほぼ毎日「死にたい」と思うのはなぜだろう? カウンセラーや周囲との対話を通して、ままならない自己を掘り進めた約2年間の記録。

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ゲートキーパーという言葉をご存じだろうか?

ゲートキーパーは生きることに悩んでいる人の「命の門番」と言われている。
5人に1人が「本気で自殺を考えたことがある」という調査結果(厚労省H28年意識調査)もある現代、家族や職場の同僚、学校の友人といった周囲が、ゲートキーパーとなって、そのサインに気づいて支えていくことが重要であると謳われている。

最近職場の大学でも学生向けのゲートキーパー講座があった。
講演者が持ってきた資料には、「死にたい」と思ってしまう社会背景や気持ちを打ち明けられた時の注意点が書かれ、学生はロールプレイで対応方法を学んでいく。
なるほど…こんな風に対応するのか。ふむふむ。
学生と一緒に学んでいく。
いきなり「死にたい」なんて言われたらどうしたらいいか分からないと思っていた私にとって、そのHow to ~的な内容は、大変参考になった。

だけど…
「死にたい」って思うのは、どんなかんじなんだろう。
私がそう思ったことがないのはなぜだろう?
そんな当事者の気持ち面は語られず、少し疑問が残ったのも事実だった。

そんな時に見つけた本書。
内容がホットだったこともあり、ぐんぐんのめり込み、二晩で読んでしまった!

「死にたい」と思ってしまう著者の抱いている葛藤や苦しみを私は持っていない。
歯がゆいけれど、その苦しみに対して「分かります!その気持ち!亅とうなずくこともできない。

けれど…想像してみる。
例えば、どうしても消えない疎外感を「自分は火星からのスパイだ」と思うことで納得させていた小さな女の子のことを。
圧倒的なマイノリティという感覚。
差別や息苦しさ。
幼少時代の寂しかった記憶や自分のアイデンティティの問題。

考えれば考えるほど、胸が痛くなる。
苦しくて死にたいと思う気持ち、どうして私だけ?を誰にも打ち明けられず、抱えながら生きる小さな女の子が目の前に浮かぶようで、黙って背中を撫でてあげたいという衝動にかられた。
 
著者はカウンセリングを通して、自分の内面を掘り起こす作業をする。
カウンセラーから著者にかけられた言葉は、ポタポタと私の中にも入り、波紋となって自分自身に問いかけることになった。
その結果、自分の家族、気持ち、悩みと共鳴して、泣きそうになる。
それは当事者としての涙でもあり、どこか母親が子供を思っての涙でもあったように思う。

自分の弱さに向き合い、自分が選んだ言葉で語っていく著者の姿に強さを感じた一冊だった。
 

ゲートキーパーについてはこちら ↓


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