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ライフワークは、禁煙とダイエット。 ゴールのない旅はここにもある。それもまたよしとお気…

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ライフワークは、禁煙とダイエット。 ゴールのない旅はここにもある。それもまたよしとお気楽に、本や漫画、映画のことなどざれごとをつづります。

マガジン

  • 子どもが出てくる映画の話をしよう

    子ども向けの映画もすきだけど、子どもが出てくる映画がすごく気になります。子どもの年齢は幼児~ハイティーンまで。ドキュメンタリー、ホラー、ファンタジー、現代ものなどなど。おすすめ映画の紹介も大歓迎です。

  • オリジナル創作ショート『動物園的。』

    創作小説のコーナーです。日常ファンタジーがらみの短編・中編など。よろしければお茶のおともに。

最近の記事

子どもが出てくる映画の話をしよう⑲嘘をつくひとびと『怪物』

最初な、つらかってん。 と、なぜか関西言葉ではじめてしまう。 カンヌ映画祭で脚本賞を受賞した、あの、例の、話題の、是枝監督の映画『怪物』を見たときの話。 是枝監督の作品で、とくに子どもが出てくる映画は好物だ。 なにしろ子どもに演技感がない。 基本脚本を見せないという監督の話は有名で、それでなしとげる日本の子役がすごいのか、瞬間瞬間を逃さない監督がすごいのかわからないが、どれもすばらしい。 『万引き家族』も、とくに最後の安藤サクラさんは圧巻だったけれど、やっぱり少年少女のとこ

    • 地図にない島へいく

      胃酸があがってきそうなほど船が揺れている。 薄い毛がへばりついた頭に手拭いをまいた船頭が、酒臭い息を吐きながら、back numberや秦基博なんかを熱唱しているからか。いや、問題はこの状況だ。井の頭公園じゃあるまいし、曲がりなりにも太平洋のど真ん中で手漕ぎボートはないだろう。 などと愚痴っていてもはじまらない。もはや頭を360度回転させても、東西南北青い空と海ばかり。航海、あとにたたずとはこのことだ。 ふ。うまいこといった。だろ。 ヤマジはこたえない。目を閉じて丸く

      • 深夜1時のきみへ

        • 子どもが出てくる映画の話をしよう⑱ 中国の”今”『シスター 夏のわかれ道』

           2022年日本公開の中国映画『シスター 夏のわかれ道』を見た。 新聞かなにかで紹介されていたときから気になっていた。タイトルだけみると、まるで修道女の話のようだが、ここはもうその名の通り「姉」の話なのだ。原題が『Sister』なんだな。  物語は、交通事故のシーンではじまる。  やってきた若い娘アン・ランは、警察に「君はだれ?」といわれて答える。「私は(事故にあったあの人たちの)娘です」  そして場面が切り替わり、両親の葬儀のシーンへ。  ここで、彼女は、まったく自分はあ

        子どもが出てくる映画の話をしよう⑲嘘をつくひとびと『怪物』

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        • 子どもが出てくる映画の話をしよう
          13本
        • オリジナル創作ショート『動物園的。』
          4本

        記事

          生き直しの実験をはじめてみた。

          朝、6時に起きる。 着替えて、部屋の窓をあけて空気をいれる。 朝ごはんをつくる。サーモンピンクのランチョンマットの上には、ガーリックトースト、オイル焼きエリンギ添え。 写真もとっておく。 「いただきます」 おお、なんと美しき朝のはじまり。 いや、ちょっと待った! 朝ごはんは、我の毎日の生活で一番がつくほどすきなものだけれど、このつくりこんだようなモーニングワークはなんだろう。演じている感が強い。 たしかに世の中には、日々の生活への愛が深く、毎日の衣食住が素朴でありながら

          生き直しの実験をはじめてみた。

          子どもが出てくる映画の話をしよう。⑰韓国発ゾンビ×ジュブナイル『今、私たちの学校は……』

           世の中には、「ゾンビものがすき!」という方々がいる。別にゾンビ好きじゃなくても、映画を観ていれば「たまたま」でも一度ならずゾンビものに出会うはず。  それよりも、映画をつくるという設定の映画では、かなりの確率でつくっている映画はゾンビものではないかと思う。『スーパー8』しかり『カメラをとめるな!』や『キツツキと雨』もそうだったような。  おそらく、低予算でできるとか(ほんとうか?)理由はあるんだろうけれど、たぶんやっぱり、そういう映画がすきなひとがつくるからなんじゃないかと

          子どもが出てくる映画の話をしよう。⑰韓国発ゾンビ×ジュブナイル『今、私たちの学校は……』

          子どもが出てくる映画の話をしよう。その⑯ 中国・香港合作『少年の君』

           久しぶりにミニシアターで映画を観た。  映画館を出て、しばらくまだ映像の中にいた。  そんなことってあるよね?   それは、いい映画を観た証。  この日みたのは、中国・香港発のジュブナイル映画『少年の君』。  2019年制作で、日本での一般劇場公開は2021年。  さらにその1年遅れで観たわけです。  正直にいいましょう。実はあんまり期待してなかったのです。タイトルも、「優等生の少女と不良少年の出会い」という少女漫画的な設定も、年を重ねてすっかりやさぐれちまった身には、ち

          子どもが出てくる映画の話をしよう。その⑯ 中国・香港合作『少年の君』

          PLASTICA

           世の中には、ぼくたちが知らないうちに起こることは無数にある。  君はいつでも細い細い塔の先端に立っている。  君が知っていることは、足元に降り積もったできごとだけ。それすらもぼろぼろと崩れていく。  足の裏以外の場所に地面があるかどうかは、一歩踏み出してみなければわからない。  そういう不安定な場所に君は立っている。  君はいったよね。あると信じなければ、それらは存在しないと。  君自身すら、君の存在を確かめられるわずかなものの中でのみかろうじて存在しているというのに。  

          PLASTICA

          滅びのものがたり。エストニア発ファンタジー『蛇の言葉を話した男』

          ーー森には、もう誰もいない。 物語はこの一文ではじまる。 語り手は、森に暮らし、蛇の言葉を話すことができる。その言葉で森の動物たちを意のままに操ることができるのだ。 と、ここまで読めば、お、どうやら広大な森を舞台とした神秘あふれるファンタジーに違いないと思う。 が、ページをめくるにつれ、予想は裏切られていく。もちろん、いい意味で。 少年をはじめ森の住人たちは、小屋に暮らし、狼を飼い、肉のみを調理して食べるという、野性味あふれた生活を送っている。 だがすぐそばに、教会があ

          滅びのものがたり。エストニア発ファンタジー『蛇の言葉を話した男』

          鍵が開くものがたりの扉。台湾発『雨の島』呉明益

          しばらく古めの本ばかりを紹介していたので、最新の本をとりあげたい。 呉明益の『雨の島』(河出書房新社) 原題『苦雨之地』。 日本での初出は2021年の10月。 あの『歩道橋の魔術師』や『複眼人』などを書いた呉明益氏である。 即買いである。 そして、本を手にして、最初のページを開いたときから、至福の時間がはじまった。 この本は、6つの中短編で構成されている。 物語について、簡単に説明しよう。 遠くない近未来。 世界的に蔓延するコンピュータ・ウイルス<クラウドの裂け

          鍵が開くものがたりの扉。台湾発『雨の島』呉明益

          ハインラインのジュブナイルSF『大宇宙の少年』は、あとがきまで魅せる。

           タイムトリップSF『夏への扉』で知られるR.A.ハインライン。    そんなハインラインのなかでも、夏とジュブナイルがすきな我のイチオシは、こちら。      『大宇宙の少年』(創元SF文庫)  ハインライン1958年作で、日本では福島正美の訳で、SF児童文学のジャンルとして発行されていたそうな。  創元SF文庫での初版は1986年。  最近新装版がでたらしい。  かんたんにあらすじを説明しよう。  宇宙にあこがれ自分で納屋を改造して研究室までつくっていた高校生のキ

          ハインラインのジュブナイルSF『大宇宙の少年』は、あとがきまで魅せる。

          世にも美しい語り部 ジョン・クロウリー『エンジン・サマー』

          『エンジン・サマー』は1979年に書かれ、日本初版は1990年が初出。福武書店から発行された近未来を描いた幻想文学であります。  手元にあるのはむかぁし入手した中古の単行本だが、のちに文庫版が出て平積みされていたには「おお!」と思った。表紙画に初版の単行本と同じ絵がつかわれていたからだ。こうでなくっちゃ。 ――あなたの物語をきかせて。はじまりからはじめて、終わりまで話し続けるの。 物語は、<しゃべる灯心草>という名の少年が、天使とよぶ少女に問われるまま、語りだすところか

          世にも美しい語り部 ジョン・クロウリー『エンジン・サマー』

          逆走する未来へ。テッド・チャン『あなたの人生の物語』

           よく「今こそ読みたいSF本」的な企画で必ずといっていいほど取り上げられるのが、この本。  テッド・チャン氏の『あなたの人生の物語』だ。  初出は1998年。日本では2001年の『SFマガジン』が初のお目見え。わたしの手元にある早川書房の文庫初版は2003年となっている。古いっちゃあ古いが、近年この作品が『メッセージ』という名で映画化されたし、めちゃくちゃ久しぶりに新刊『息吹』(早川書房)も出たし、SF好きじゃなくても目にした人は多いはず。  本作は、このタイトルを冠した

          逆走する未来へ。テッド・チャン『あなたの人生の物語』

          臨死体験を科学する! コニー・ウィリス『航路』

           コニー・ウィリスの『航路』。翻訳:大森望。  今はハヤカワから出ているけれど、私が読んだのは、ソニー・マガジンズの『ヴィレッジブックス』から出ている文庫の初版(2004年)。(タイトル画がそれ)多分内容は変わらない。  いったいどうしてこの本を買ったのか、最初のきっかけが思い出せない。なにしろ、この本はブ厚い。約600ページにわたる文庫本2冊分だ。でも、これは紛れもない名作だし、私はこれをきっかけに、アメリカのSF作家、コニー・ウィリスの世界にずぶずぶはまっていくことにな

          臨死体験を科学する! コニー・ウィリス『航路』

          【短編SF】ブラックホールできみとあう

           その日、彼女は握りしめた手で胸をおさえてつぶやいた。 「ぽっかり穴があいちゃったの」  黒いワンピの胸をぐいと持ち上げるようにあてた白いこぶしは、まるでさっき供えた花のようだ。  緑が幾重にも重なり幹が黒々として奥深く、木漏れ日が彼女に降り注ぐ。すぐそばを選挙カーの雄叫びが走り抜け、近くの中華料理屋のファンから油ぎった匂いがただよってこなければ相当にいい舞台設定だったけど、そんなことかまわない。  ぼくはちぎった線香の巻紙を迷わずそこらに放り投げ、彼女の細い腰をひきよせたん

          【短編SF】ブラックホールできみとあう

          夢でみる子らは、いつでも子どものままなのだ。

           息子がいる。  以前、美容院でまあごくふつうのごあいさつ会話として、「うちにも息子が2、3人いてねー」といったら、とても繊細な対人配慮のゆきとどいた美容師さんは「そう、ですかあ」といった。その「そう」と「ですかあ」のあいだのコンマ1秒に満たない空白にはっと気づいた。つい数字を適当にいうクセがある我は、わが子の数まで適当にいって、相手をムダに当惑させてしまったらしい。いかんいかん。「いや、正確には3人」といいなおすと、ほっとした笑顔を浮かべて「3人のお母さんなんですね」とい

          夢でみる子らは、いつでも子どものままなのだ。