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日本人は苦手!?サッカーは生産性が命/河内一馬(鎌倉インターナショナルFC 2021シーズン監督)

一馬をゲストに迎えて、鎌倉インテルFMを放送してきましたが、延長戦をやっていきたいと思います。
※前回までの話とプロフィールはこちら。

アルゼンチンの学校では何をやっているの?

(四方健太郎/以下、ヨモケン)
ここからはリラックスモードで話しをしていきたいと思います。
先ほど話しにあったアルゼンチンの養成学校ですが、もしかすると自分も受けたいと思う日本人がいると思いますが、具体的には、その養成学校ではどんなことをやるんですか?

(河内 一馬さん)
日本のライセンス制度というのは、日本のサッカー協会が講習をして、その講習を受けてライセンスを取得するというものです。
アルゼンチンの場合は、国の中にたくさん学校があるんですけど、どの学校でも共通しているカリキュラムを受けます。
なので、サッカー監督になるための学校という感じです。

(ヨモケン)
アルゼンチンには、そういった学校がたくさんあるんですね。

(河内 一馬さん)
たくさんあります。地域別に色々あるので、アルゼンチンの人は自分の家から近いところに通っていますね。

(ヨモケン)
民間組織ということですね。
日本の場合、日本サッカー協会があってその次に都道府県のサッカー協会がありますが、アルゼンチンの場合は民間に委託している感じなんですね。

(河内 一馬さん)
そうですね。
校長先生や学校の先生も別々なので、カリキュラムは同じだけど学校のスタイルや先生ごとの特徴はそれぞれで違いますね。
僕はそこが面白いところだなと思っています。

(ヨモケン)
外国人はいるんですか?

(河内 一馬さん)
僕が学校に通い始めて最初の2年間は、外国人が僕1人だけだったんですけど、今年僕より年下のベネズエラ人が1人来ました。

(ヨモケン)
学校のなかだと、一馬は相当異色ですよね(笑)
日本人だと言われて揶揄されることはないんですか?

(河内 一馬さん)
学校に関しては全くないです。むしろすごくリスペクトしてくれます。
1学年20人前後なので、遠い存在みたいな人はいなくてみんな仲が良いです。
学校の先生が始め「言葉がわからないのによく日本から来たね」と言ってくれてたんですけど、その時は何を言っているかわかりませんでした(笑)
ただ、始めて会った時からハグしてくれたので、愛情は最初から伝わっていました。

(ヨモケン)
留学で学校に通っていると思うんですけど、それは留学エージェントみたいなものを使ったんですか?

(河内 一馬さん)
僕の場合は特殊で、留学エージェントを使わずに海外に行くと決めちゃっていました。
最初はお金も人脈もなかったので、個人スポンサーを付けようとか、色々考えていました。
最終的にはクラウドファンディングを使って、1年行ってしまえば、なんとかなるだろうという考えで資金を集めました。
その時に、アルゼンチンでサッカーを勉強している日本人の方がクラウドファンディングを見て連絡をしてくれました。
そこで、助けられますと言ってくださって、僕はその方が通っている学校に入ることになりました。
元々、1年目に言葉を勉強して人脈を作ってから、2年目に指導者学校に通おうと思っていたんですけど、そのステップを飛ばすことができました。

(ヨモケン)
行動力もさることながら、そうやって助けてくれる人は出てきますよね。
でも俺だったら、まずは言葉とか語学学校とか考えてビビっちゃいますね。そんな風には思わなかったんですか?

(河内 一馬さん)
僕の場合、目的がハッキリしていましたし、アルゼンチンの生活で何者かになれなかったら、僕の日本での監督キャリアはないと思っていました。
なので、その分想いは強かったのかなと思います。

(ヨモケン)
教育の世界でもそうなんですけど、ゴールを見失って目的と手段を履き違えることがあるんですよね。
例えば、英語のために英語を勉強するわけでもないですし、その先に研究とか仕事があるはずなんですよね。
なら最初から仕事したほうがよっぽど実践的というのと同じで、一馬はすごく実践的ですよね。
その時、特に辛いことはなかったんですか?

(河内 一馬さん)
僕は辛いと思ったことはないですね。大変だなと思う時はありますけど、自分でやっていることなので、苦しいとか辛いとかはなかったですね。
ある程度大変だろうなと予想してアルゼンチンに来ているので、なんとかやってこれました。

(ヨモケン)
初めはスペイン語がわからなかったと思いますが、授業の内容はどうやって理解したんですか?

(河内 一馬さん)
1年目は外国人向けのスペイン語講座に週2回通って、そこでスペイン語の基礎を勉強しながら学校に通っていました。
なので、応用と基礎を往復するみたいなやり方でした(笑)
ただ、僕は本当に幸運でして、アルゼンチンで一番仲の良い指導者仲間がいるんですけど、その彼はアメリカ生まれで英語がネイティブの人でした。
その彼に英語で質問をしたり、授業の内容をスペイン語でまとめてもらったりしていました。
僕はそれを自分のノートに写して復習していました。
今、そんな彼は僕に影響されて、日本のことを勉強していて、いつか日本で指導者をやりたいと言っています。

(ヨモケン)
ヨーロッパとかは外国人の指導者はたくさん集まるんですか?
アルゼンチンだと、今の学校だと一馬だけだと思うんですけど。

(河内 一馬さん)
去年までアルゼンチンの都心の学校に日本人が1人通っていました。
その人に話しを聞いた時は、中国人とかアメリカ人とかメキシコ人とか色んな国の人がいると言っていました。

(ヨモケン)
日本サッカー協会のライセンスを受けに来る外国人はいるんですか?

(河内 一馬さん)
いないですね。構造の問題もありますけど、日本でしかライセンスを使えないというのもありますね。
言語の部分も含めて、外国人が学びに行ける環境ではないですしね。

日本社会におけるサッカーの位置とは?

(ヨモケン)
次のテーマなんですけど、鎌倉インテルを世界に影響を与えるクラブにしたいという話しがありましたけど、影響を与えるとはどういうことなのか?
この辺をもう少し深堀りしていきたいと思います。
日本社会におけるサッカーの位置の低さは歴史が関係しているんですかね?

(河内 一馬さん)
もちろん歴史も関係していますし、アルゼンチンと比べると歴史の深さが全然違います。
ヨーロッパとかアメリカのスポーツを見ていると、スポーツが社会としっかり繋がっています。
例えば、今だと日本のサッカー選手で社会全体に影響を与えるファッションアイコンがいないと思います。
海外だと、スポーツ選手のなかですごくおしゃれだったり、クリエイティブだったりする人がいます。

(ヨモケン)
僕の世代だと、カズとか中田英寿がスターだったんですけど、この辺りの人達はファッションアイコンではないんですかね?

(河内 一馬さん)
その辺はファッション雑誌に取り上げられているので、ファッションアイコンだったと思います。
ただ今は、そういう人達がずっといないなと思っていて、僕は社会とサッカーが分断されているような気がします。
なので、僕は社会とサッカーを繋げたいなと思っています。
サッカーとエンターテイメントもそうですし、ファッションやビジネス、他のスポーツなど、色々なものと繋げていきたいですね。

(ヨモケン)
社会とサッカーの分断はどこで起きるんですかね?

(河内 一馬さん)
辿っていくと、教育なのかなと僕は思っています。
僕がそうだったんですけど、18歳までサッカーしかしてこなかったんですよね。でも、それは日本の教育上は仕方なくて、サッカーしている人はサッカーだけ、見た目は気にするな、他の趣味を持ってはいけないみたいな雰囲気はありますよね。
週に1日とか2日休みを多くするだけで、子供はやりたいことが出てくると思います。
アルゼンチンとかは、日本より練習時間や練習日数が少ないですし、しかもそれで世界のトップ選手を輩出しているので、やっぱりそれが正しいのかなと思ってしまいます。

(ヨモケン)
アルゼンチンの人は練習がない時は何をしているんですか?

(河内 一馬さん)
オフが定期的にあるので、小さい子供とか中学生は物足りない感が出て、逆にサッカーがしたくなります。
僕が中学、高校の時はオフだったらとにかくサッカーをやりたくないと思っていました。
あとは、アルゼンチンは長期的な休みが多いですね。
プロと同じようにシーズンではない時、1ヶ月ずっと休みですし、子供の時からそういう習慣があります。
そういう部分が、日本とは違うなと思います。

(ヨモケン)
ワーカホリックというか、猛烈サラリーマンみたいなことをずっと引きずってる感じですか?

(河内 一馬さん)
日本人は量はやってしまう傾向があると思うんですけど、やっぱりサッカーは量じゃなくて質だと思います。

(ヨモケン)
仕事も同じですね。
今リモートワークになっているので、会社にいればいい、残業してればいいみたいな風潮ががなくなってきていますよね。
量より質と聞くと、耳が痛い人がたくさんいると思います。

(河内 一馬さん)
そうですね。特にサッカーは生産性が命ですね。
90分間の試合のなかで、どれだけ生産性を上げるのか?という部分もそうですし、練習も少ない日にちのなかでどれだけ生産性を上げられるかだと思います。
人間はフィジカル的に限界があるので、出来る限り身体的な負荷をかけずにどれだけ生産的なことをやるのかが重要です。
日本人はこういう発想をなかなか持ちにくいと思います。

なぜサッカーは世界中の人に愛されているのか?

(ヨモケン)
サッカーの社会的価値を上げたいという話しがありましたが、なぜサッカーというスポーツがこれだけ世界中の人に愛されていると思いますか?

(河内 一馬さん)
難しいですけど、シンプルだけど奥が深いのがサッカーの醍醐味なのかなと思います。
多くの点を取ったほうが勝つというシンプルなゲームですけど、それ故奥が深いですよね。
人によっては、その深いところでサッカーを見る人もいれば、浅いところで見る人もいます。
アルゼンチン人は言うんですけど、サッカーは誰でもわかったフリをして語ることができると、それが面白いんだと。

(ヨモケン)
全員コメンテーター、全員監督みたいな感じですね。

(河内 一馬さん)
そうですね。例えばですけど、フェンシングだと僕らは難しくてコメントできないですよね。
サッカーだと、わかった気になれるので素人でも玄人でも同じように語れるスポーツだなと思っています。

(ヨモケン)
似たようなスポーツのハンドボールとかバスケットに比べて、サッカーは足を使いますし、プレーが不確実なスポーツですよね。
そういう前提があって、何が起こるのかがわからないのがサッカーですよね。

(河内 一馬さん)
あと、サッカーはファンのカルチャーに歴史があって、それこそサッカーファンが社会に影響を与え続けてきたことが大きいと思います。
他に、サッカーほどファンがコンテンツになっているスポーツはないと思います。

(ヨモケン)
そのファン達はなんでそういう風になったんですか?
なぜ他のスポーツではなくて、サッカーだったんですかね?

(河内 一馬さん)
難しいですね。
人間が持っている戦闘本能をくすぐられるのもありますし、戦争の代わりにサッカーをするとかよく言われますしね。

サッカーで必要なリズム感と日本人が普段持っているリズム感は違うと言われていて、日本人は周りと合わせる簡単なリズムを刻むんですけど、サッカーの場合はリズムをズラすことが重要です。
例えば、日本の盆踊りとかは大人数で呼吸を合わせるのが多いですが、西洋で生まれているダンスは二人とかで違う動きをしてリズムが対になります。
そう考えると、サッカー文化に合っているのはヨーロッパだなと思います。

(ヨモケン)
今みたいなことをちゃんと語っているサッカー指導者にあまり会ったことがないんですけど、どうしたらそういう発想になるんですか?

(河内 一馬さん)
僕はこういうことが好きというのもありますし、何で日本人はヨーロッパ人達にサッカーが勝てないんだろうとずっと思っていました。
日本はすごくスポーツ大国で真面目に頑張るし、現代ではフィジカルで負けることが言い訳にならないし、何で勝てないのかを20代前半からずっと考えていました。
それで、文化的背景に行き着いて、もしかすると日本人はサッカーの解釈を間違えているのかもと考えるようになりました。

(ヨモケン)
それは海外のリズム感を取り入れればいいんですか?
それとも、そこは諦めて日本の良さを出していくほうがいいんですか?

(河内 一馬さん)
両方必要だと思います。
基本的に僕はサッカーで勝つためには、ピッチ上では日本人を捨てなければいけないと思っています。
ただ、結局日本人を捨てることはできなくて、そうなると何かを付け足そうとしまいがちになります。
でもそうではなくて、サッカーに合わせて日本人の要素を全て取っ払って、残ったものが日本人だということを考えました。
なので、日本人が持っている良さというのは、引いて出てくるものなのかなと思います。
外国人がどういう風にサッカーを考えているのかもしっかり言語化できれば、日本人もわかってくると思います。
とにかく僕はそれを説明したいという想いでサッカーを考えています。

(ヨモケン)
そうすると、一馬の将来像を描くためには指導者を変えないと難しいんじゃないですか?

(河内 一馬さん)
本当にその通りです。
僕は選手の育成にあまり興味がなくて、指導者の育成に興味があります。
世界に追いつくという点や本当にサッカーを楽しむためには、サッカーの指揮を取る側がサッカーをちゃんと解釈する必要があると思っています。
僕はそこを追求していきたいです。

(ヨモケン)
目的が勝つことなのか?という別の議論が必要だと思うんですけど、結果を出さないと指導者も聞いてくれないですし、サッカーである以上勝ちにいかないといけないですよね。
鎌倉インテルとしても、勝つだけがゴールじゃないけど、勝たなければいけないので、そこは考えが一致しますよね。
我々来年タッグを組んでやりますけど、勝つことによって日本の指導者に一目置かれて、一馬のメソッドとかを取り入れようみたいなことになるかもしれないですね。
そういう人が新たに下を育てたり、もしかするとJリーグの監督が取り入れたりして、結果を出すかもしれないですよね。

(河内 一馬さん)
はい。頑張りたいです。

(ヨモケン)
ということで、アディショナルタイムすらも延長している感じですが(笑)また話せる日を楽しみにしています!
ありがとうございました!

(河内 一馬さん)
ありがとうございました!


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ビジョナリーサッカークラブのつくり方 鎌倉インターナショナルFC、創設初年度の軌跡

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<footballista / 河内一馬が鎌倉インターナショナルFCの監督兼CBOになる理由 >
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