私とフラッシュとおかっぱ

ヨーソロー(挨拶)木口ゆらです。

今回は「はじめてのインターネット」というお題で昔話を書いてみようと思います。

舞台の感想は頑張って書いてます。書き終わる気がしない。書き終わっても支離滅裂な文章になりそうです。というか舞台の感想の書き方がわからない。インドがわからない。

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◆接続

私が初めてインターネットに触れたのは、まだダイヤルアップ接続の頃。今みたいに「設定さえすれば、パソコンやスマホを立ち上げるとインターネットに自動で接続される」ような時代ではありませんでした。

LANケーブルをパソコンに挿して、「ダイヤルアップ接続」のアプリケーションを立ち上げて、「接続」ボタンをクリック。そして鳴り響く「ピーガガガ……」という電子音。この儀式を行わないとインターネットの世界にはダイブできませんでした。

ダイヤルアップ接続音(YouTube)

ダイヤルアップ接続の「ダイヤル」は電話のダイヤルのことです。電話の回線を利用してインターネットに接続する方法でした。

電話回線を利用しているため、IDSLの普及などで定額通信サービスが一般的になるまでは「通信データの量」がそのまま電話料金として請求されていました。ファイルサイズの大きい画像や動画ばかり見ていると翌月の電話料金が恐ろしい金額になっていました。仕組みを分かっていなかった幼い私は、一度この件で母に叱られました。そして「オフラインに保存」を覚えました。

詐欺目的の「ダイヤルQ2」に接続した日には万単位のお金が持っていかれていたとかなんとか。これに関しては体験したことがないので伝聞でしか知りません。好奇心旺盛な少年がアダルトサイトを開くと……という話はネットでもよく見かけました。

◆フラッシュ

私がインターネットに触れ始めた頃は「フラッシュ」の全盛期でした。フラッシュとは当時よく使用されていた動画の形式です。

フラッシュには今で言う「MAD動画」のようなものが沢山ありました。宮崎吐夢の音声に映像をつけたもの(※1)、ドイツのミュージシャン・ジンギスカンの曲に空耳をつけたもの(※2)、ドラえもんの絵描き歌の音MADにカオスな映像をつけたもの(※3)など……幼い私は大笑いしながらお気に入りの動画を何回も再生してしました。

※1……"開国してくださぁ〜いよ〜♡"で有名な「ペリーのお願い」や"Oh違うでしょ〜"で有名な「ピアノレッスン」などの音源に映像をつけたフラッシュが人気だった。これらの音源の初出はTECwinという雑誌の付録CD。
※2……ジンギスカンの「めざせモスクワ」や「ジンギスカン」、「ロッキング・サン」が空耳でフラッシュに使われていた。空耳抜きでもいい曲なのでぜひお聞きください(ダイマ)。
※3……「ドラサイト」というサイトで公開されていたもの。このサイトでは他にもギャバンの音MADに映像をつけた「ギャバソ」やThe Offspringのオール・アイ・ウォントにドラえもんの画像を合わせた「DORAEMON」など、当時人気のあったフラッシュが沢山公開されていた。

そんな中、使用音源や画像などの「著作権」にまつわる論争、のまネコ事件など様々な出来事がありました。それが原因か、はたまたフラッシュという表現方法が多くの人に広まったのか、だんだんとオリジナル作品や動画素材を自作した二次創作のフラッシュも増えていきました。

ファンタジー世界のフラッシュ、ギコやモナーといったにちゃんねるのキャラを使用したフラッシュ、ホラーのフラッシュ……。色んな世界があって、私は夢中になって色んなサイトで色んなフラッシュを見ました。そのうち家の回線もIDSLになり、沢山フラッシュを見ても叱られないようになっていました。

そんな中、とてもクオリティの高い作品がありました。

◆「十一月」

そのフラッシュはこんな内容でした。

夕方、裏路地を中華風の服に身を包んだおかっぱの少女が歩いている。通学用のようなカバンを背負ってるから、下校中だろうか。少女はふとダンボールの中に黒い子猫がいるのを見つける。子猫の愛らしさに惹かれ、少女は抱っこしようと子猫を持ち上げた。

「十一月」http://maruproduction.com/anim/11gatsu.htmより

伸びた。

少女は子猫を元の位置に戻し、そのまま裏路地の奥へ帰っていく。という作品。

幼い私にとって、この作品はカルチャーショックものでした。

当時のフラッシュは色合いがビビッドなものが多く、題材もバトル、感動ストーリーなどとティーン向けのものがとても多かったです。そんな中、いきなり不思議なものを見てしまった私。カルチャーショックで少し混乱したものの、この作者の作るフラッシュにどんどん惹かれていきました。

中華風の人々の麻雀風景や、桜の眷属のお姫様の物語。どれも可愛くて、お洒落で、コミカルで、不思議で……私の心に何かを残していきました。

◆再会

そして時は流れ、現在。

私は「ダンジョン飯」や「ハクメイとミコチ」といった漫画目当てにハルタという雑誌を購読し始めました。

ハルタは漫画雑誌なのに「帯」がついています。変わってるなと思いつつも、表紙の隠れた部分を見ようと帯を外しました。すると帯の裏にも漫画が。

こういう印刷物ならではのオマケ要素が大好きな私は、喜々として漫画を読み始めました。

それは「図書室のキハラさん」という漫画でした。少しファンタジックな世界の図書室で働くおかっぱ眼鏡のキハラさんが主人公の漫画。この図書室では不思議な生き物がいたり、不思議なことが起こったり。

おかっぱ、不思議な生き物。少しファンタジック。デジャブ感。

気になった私は作者の名前で検索しました。すると、現在ではなかなか見かけない「作者自身の個人サイト」が見つかりました。そしてそのサイトのメニューには「Animation」の文字。

そのページを開くと、昔私が大好きだったフラッシュがそのまま掲載されていました。

しあわせな再会でした。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「十一月」の作者こと丸山薫さんは漫画雑誌「ハルタ」の帯裏に「図書室のキハラさん」を絶賛連載中です!

パソコンをお持ちの方はフラッシュのプラグインを入れてぜひ丸山薫さんの映像作品をご覧になってください。すごいぞ。

丸山薫さんの映像作品は下記リンクからどうぞ!

丸山薫さんのサイト「MARU PRODUCTION」

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