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袋詰めのやつを見つけろ!

先週末の金曜日、会食に呼んでもらった。

お酒が一生飲めない私だから、みなさんがビールやらハイボールやらを飲む中で、相変わらずウーロン茶を飲みあさる。

「なぜお酒が飲めないんですか?」

という質問に対しては、もう通算30回くらい説明したんじゃないか、と思いながら要点を端的に伝える。聞くも涙、語るも涙な理由であるが、詳しくは以下の記事を読まれたし。

一生できなくなっても困らないもの。|過去記事

「じゃあ、もう1軒いきますか」と言われても、私の場合は「妻が家で待ってますので」と言って断るようにしている。

なんだか残念そうなお相手をみて、とても申し訳ない気持ちになるんだけど、ある意味での割り切り力というのは32歳になったいま、便利なものだと感じる。

2軒目には行かない。なぜなら妻が待っているから、という、そういうキャラになればいいわけである。


さて、札幌市内大通地区の居酒屋を出た私は、一人で狸小路商店街のドン・キホーテに向かった。妻に「」を買って帰るためだ。

ここ最近、妻の中で梨が空前絶後のブームになっており、梨を食べると「うんめー!」と言ってほおばる。


狸小路のドン・キホーテの地下には生鮮食品売り場があり、そこに梨があることは私の脳内にインストールされている。なので、金曜の夜、地元の人や、他地域からの日本人観光客、そして外国人観光客がひしめく中、梨売り場へ向かった。

というか、札幌は観光客が多すぎる。
ドンキの通路が通れない。
日本人もいれば外国人もいる。
すげー数の人だ。


お目当ての梨はすぐに見つかり、私は2つの梨をムンズとつかんでレジに向かう。が、なんとなく思うところがあったので、レジに向かう足をひるがえした私は、ほかの売り場を見ることにした。


セレンディピティが大切だ。

つまりは偶然の出会い。


梨を買うことだけを目的にしてドンキに来たが、それだけだとつまらない。売り場を歩く中で妻が「おいしい」と言っていたほかの商品を思い出すこともあるかもしれない。

新聞と一緒だ。

Webニュースメディアは個人個人に最適化され、見る人に最適化されていく。この時代、紙の新聞紙はその存在意義を見直され、発行部数も右肩下がり。

だが、新聞紙にはセレンディピティがある。思ってもなかった情報がのっかっていることがあり、それがあらたな発見・学びになることもある。

と、いうのが新聞社の言い分なのだが、あながち間違いではないと思う。


話がそれたが、とりあえずドンキにいた私は、両手に2つの梨をもってドンキをうろつくことにした。

うろつく中で思ったのは、やはりセレンディピティ。

棚を見ながら歩くと、次々と浮かんでくる。
何が浮かぶかというと、過去に妻が食べたいと言っていた食品の数々である。そういやひと口餃子が食べたいと言っていた。そういえばシュークリームが食べたいと言っていた。そういえば大福の中にフルーツが入ったやつが食べたいと言っていた。

おぉ、セレンディピティ。


次々と手に取る。途中、品物が多すぎてカゴに切り替えた。

浮かぶがままに品物をカゴに入れた私の脳内には、また妻が食べたいと言っていた食品が浮かんだ。


「お椀に入れて食べられるカップ麺みたいなやつ。小さいやつがいいの。なんか袋詰めのやつ」


そうだそうだ、なんかよくわかんないけど、そんなこと言ってた。でもどこにそんなものがあるんだろう。「みたいなやつ」がくせ者だ。


ほうぼう探してみて回ったが、どこにもそんな商品はない。そもそもドンキにあるのか?


というわけで店員さんに聞いてみた。
棚卸をしてる女性店員さんが近くにいたので、声をかけてみる。


「あの~」

「はい!」

「ざっくりしてるんですけど」

「はぁ」

「お椀に入れて食べられるカップ麺みたいなやつの袋詰めってありますかね」

「……ん~」

「どうですかね」


店員さんは、あれのことかな? という様子で私を棚に案内してくれた。「これはどうですかね?」と言われて案内されたのは赤いきつねの小さなカップサイズのやつで、袋詰めではなかった。


「う~ん、近いんですけど、なんといいますか」

「違いますかね」

「う~ん」


そうなのだ。具体的な商品名が浮かんでいないし、姿かたちもわからない。言葉だけが先行して、私と店員さんの間でイメージが共有できていない。近いのだけど、何かが違う。なんせ、妻が言ってたのは「袋詰めのやつ」なのだ。2人で笑いあう。

「……袋詰めのやつはありますかねぇ」

「袋詰めのやつですもんねぇ」

「そう、袋詰めのやつなんですよねぇ」

もう、申し訳ない。お仕事を中断させてしまって申し訳ない。中断させてこんなファジーなオーダーをしてしまって申し訳ない。



しばらくほかの棚を案内されたが、結局見つからなかった。見つからなかったけど、その尽力に感謝して、私が最後に言ったのは、


「にしても、本当に札幌の人はやさしいですね」


であり、この店員さんからすると「あ、観光客なのかな」と思ってくれたようで、「北海道外からお越しなんですか?」と言われたので、

「いえ、札幌です」とキリッと答えた。

店員さんは大いに笑ってくれて、私は家に帰る。



梨を見た妻は「きゃほーーーーい!」と叫んでいたので、ドンキでのこの話をしたら「ふーーん」と言って梨を食べていた。


<あとがき>
札幌のドンキの店員さんはとにかく優しいです。ほかの店員さんにも聞いてくれてました。一緒に探す中で、あーでもないこーでもない、と言いながら探し回りましたが、最後は「いやー、残念です」と、にこやかだったので、さらに申し訳なさが増幅して、謝りました。今日も最後までありがとうございました。

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