少し前のこと。

子持ちの友人と飲みに行った。
といっても彼女はとてもお酒が弱いので、ピーチウーロンを1/3ほど飲んだところでギブして残りは私が飲んだ。

もう1人子供欲しいんだよね、と彼女。
そうか、、そうか、、とどういうリアクションが正解なのか分からずにねぎまを無心で食べる私。
甘いお酒を食事中に飲むことがあまりないので、口の中が不思議。

私は結婚願望はあまりない。死ぬ時1人は嫌だなぁくらい。
仕事は辞めたくない。自分の食い扶持は自分で稼ぎたい。
人を養うとなるとすぐには首を縦に触れないけど、1人で生きていく分には特に困ることはないと思う。

それ以上に出産願望がない。
そもそも子供はそんなに得意じゃないし、友人の子や街で見かける子供は可愛いけど、それは子供の大変な部分を知らずに無責任な「かわい〜」で済ませられるから。
自分ですら嫌なのに自分以外の人間の責任なんて取れないし、自分がいい親になれる気が一切しないし、適切な教育や経験をさせてあげられないと思うし、何より自分の遺伝子がこの先も残っていくことが嫌だ。

親ガチャなんて言葉は嫌いだけど、私が親になればきっとハズレだろうな。

別に反出生主義というわけではないので、友人が母になり次々と親バカになっていくのは嬉しいし、この世に産まれてきた全ての子供は死ぬまで一生幸せでいて欲しいと思う。
傷ついたり悲しい思いなんてしなくていい。
みんな愛されるために生まれてくるんだから。

私と同い年で、昔から知る同級生と結婚して、可愛い子供も産まれて、私から見たら「平穏」で「幸せ」そのもの。
言い方はとても失礼かもだけど「普通」という、とっても難しいものを成し遂げている。

ここ数年「結婚は？」「出産は？」という無神経な質問に辟易しつつ「結婚考えてない」「子供欲しくない」というと、信じられないというような顔をされる。
結婚し、子供を産むことがスタンダードなんだろうか。

私の地元は所謂男尊女卑が根深く残る街で、昔からずっと言われ続けた。

「女の子はお勉強なんて必要ない」
「女の子は大人になったらみんなお嫁さんになって赤ちゃんを産むのよ」
「女の子はみんなお母さんになるのよ」

見分けの付かない名前も分からない親戚や近所のおばさん達に言われ、思春期になれば、これまた見分けの付かないはげたおじさんたちに

「女の子は勉強なんかできなくても男と結婚して子供を産めれば十分」
「女が勉強して知恵をつけると厄介」
「子供を作るなら早いほうがいいぞ」
「女は若ければ若いほどいいからなぁ」

と。
心の中でいつも中指をぴしっと立てながら「おじさんたち酔ってるの〜」といつも通りにこにこ。
怒りを露わにしてもいいけれど、悲しいことに親戚やご近所さんだし、私がいつかこの街を出ても母はきっとここで生きていくだろうから、火種は作らないほうがいいだろうと思っていた。
私が何か言われるのは慣れているので別にいいけど、母はそんなに強い人ではない。

大人になって、実際に一度街を出て、また戻ってきた。
かつての同級生は出産したり、家を建てたり、2人3人と子供がいたり。

LINEやインスタのアイコンがどんどん子供の写真になっていく。
インスタのストーリーなんて、私は大体「おいしー！」「推し可愛いー！」「遊んだー！たのしー！」なのに。
友人は「結婚しました」「子供産まれました」「家建てました」だもん。
人生の違いが色濃くなっていく。

気軽に誘うことが難しくなる。
ああ、寂しい。
喜ばしいことなんだろうけど、寂しい。

大人になれば自動的に結婚して、自動的に子供が生まれるものだと思ってた。
みんなそうなるんだと。

みんなそうなっちゃうから、うちの両親のように親になることにあまり向いていない人も親になるんだと。
そうじゃなきゃ、きっと姉が生まれた時点でこれ以上子供を作るのはやめましょうそうしましょうとなったはずなのに。
私が生まれる必要は、どこにもなかったはずなのに。

生まれたので生きるけど。
生きてくけど。

結婚願望はあまりないけど、それ以上に一生を1人で過ごす気はないんだな、これが。