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鉄のフライパンを買う勇気

「北欧、暮らしの道具店」で、鉄の卵焼きフライパンを買った。一人暮らしをしている頃に使っていた卵焼きフライパンのテフロンがはげてしまって、焦げ付くようになってしまったのだ。加えて半年くらい前に、フライパンの柄をうっかり焦がされてしまった。もうその時に処分しようかとも思ったのだけれど、なかなかタイミングを図れずにいた。

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なぜあえて、「北欧、暮らしの道具店」で卵焼きフライパンを買おうと思ったかというと、スタッフの愛用品の記事を読んだのがきっかけだ。3月頭の、寿山さんの記事である。小さくて卵1つで卵焼きが作れるこのフライパンに助けられたというものである。卵1つで、というところに惹かれた。普段、普通の大きさの卵焼きフライパンで卵焼きを焼くと、やっぱり2つ卵を使いたくなる。1つだと、なんだか頼りない薄くて細い卵焼きになってしまうのだ。2つ使えばいいじゃない、と思うかもしれないが、僕の妻は目玉焼き派なので、卵1つの卵焼きと天秤にかけた結果、僕も目玉焼きを食べることになる。息子のために焼く卵焼きが、時々ちょっぴり羨ましい。

気になってからいざ買うまで、実は1ヶ月くらいカゴに入れて悩んでいた。引っかかっていたのは、鉄製というところ。実家の母が鉄製の大きな中華鍋を使っていて、毎回のお手入れが大変そうに見えたのだ。もっと安くて手入れの簡単な卵焼きフライパンも巷には沢山あるじゃないかとか、僕にちゃんと手入れができるかしら?とか、悩みどころはいくつかあった。しかし、いよいよ焦付きの度合いが酷くなってきたので、いざ購入に踏み切ったのだ。

昨日、ついにフライパンが届いた。思っていたよりスリムなサイズ感である。今日は半日休みを取っていたので、使い始めのお手入れをしてみることにした。まずはよく洗ってから、説明書通りにフライパンを熱する。少し冷めたところに油を入れて、また火にかけて油を温める。余分な油を落としてから、最後にキッチンペーパーで残った油を馴染ませる。大切に使うってこういうことか、と思うような手入れで、買ったばかりのフライパンなのに、早速愛着が湧いてきた。

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思えば、自分でこだわって、食器だとか調理器具を買った記憶が今までなかった。一人暮らし始めの時も、両親が作った器(ともに陶芸が趣味で、喜んで僕の食器を作ってくれた)を持っていったし、調理器具はありがたいことに母が用意してくれた。結婚した時も同居だったので、むしろ持っていた食器や調理器具を減らしたくらいだ。マグカップくらいは自分で選んでいたけれど、フライパンを買うということは、気付けば僕にとっては一大イベントだったようだ。

しかもそれが鉄のフライパンだなんて。結構なズボラな僕にとってはかなりの挑戦だ。でも、このフライパンを大事にできたら、僕の生活がちょっと豊かに、丁寧になるんじゃないかなと淡い期待をしてみたりもする。人から見たら些細な買い物かもしれないが、僕は鉄のフライパンを買った僕の勇気を褒めてあげたいと思うのた。

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明日は早速、僕だけの卵焼きを焼いてみようかなと企んでいる。厚くてふわふわに焼けるかな、楽しみである。


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