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01_室田泰文さん「17歳の頃、なにしてました?」

室田さんと初めてお会いしたのは3年前、私が高校1年生の時、課外授業での活動(廃校舎の再利用を目的として行っていた活動です)にご協力をお願いしたことがきっかけでした。最初は少しの間だけ協力していただくつもりでしたが、室田さんの情熱に魅了され、その後もたくさんお世話になりました。空き家の改装をお手伝いさせていただいたり、無料塾を開いてみたり…。

「早く東京に行きたい!」そんなことばかり考えていた当時の私にとって、室田さんは不思議な存在でした。なぜ山梨に移住したのだろう。なぜ北杜市なのだろう。そして、なぜこんなにも情熱的でまっすぐでまぶしいのだろう。高校を卒業し、山梨を出た今なら何か新しいことが見えてくるかもしれない。そんな思いを胸に取材に向かいました。

室田さんはNPO法人「みんなの街」理事長、「自然塾ビヨンド・Beyond自然塾」代表をされています。山梨県北杜市を拠点に、移住促進・空き家の有効活用等を目的とした活動に取り組んでおられます。

京都大学・大学院を卒業後、大手印刷会社に就職。そこを5年で退社し、なんやかんやで山梨県北杜市に移住。素っ頓狂な、とも形容できるような人生を歩んでこられた室田さん。そんな室田さんのお話は、自分とは別世界の出来事のようでありながら、大切なものに気づかされるようなものばかりでした。

※取材の際、写真を撮ることをすっかり忘れてしまいました…。記事で使用している写真は、後日室田さんから送っていただいたものです。
(書き手:中嶋菜月)

踊らされない、自分で踊る。

ひさしぶりだね~。1年ぶりくらいかな。東京は楽しい?

僕は今、自然体験施設を運営しています。自然は”nature”だけではなくて、”freedom”の意味も含んでいるんだよね。

例えばさ、ここにいると時計そんなに見ないじゃん。東京にいると電車に乗ることが多いよね。それで、電車の中にはたくさん広告があったり、CМが流れていたりする。それを見るために乗っているわけではないのに、無意識に見てしまう。そして、「最新の商品はこれ!」みたいな情報に踊らせてしまう。

そういうのが好きならいいのだけれど、その情報に踊らされて何とか必死についていこうとしてしまう。それで知らないうちにバイトを増やしていたりね(笑)。情報が多くなりすぎると自分のことを考えられなくなると思う。忙しくて情報が多すぎると、「みんなの尺度」でみんなにいいと思われることをすることに集中してしまうんだよね。

例えば、「みんながああいう鞄を持っているから自分も持とう」みたいな。みんなの価値観に合わせようみたいなことを、無意識のうちにでも続けていると、自分の気持ちが分からなくなっちゃうんだよね。

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「君はテニスが好きなんじゃなくて、テニスをしている自分が好きなんだ」

僕のところに来る人と話していても、なんか常に何かに追われていて満ち足りることがないというか。高校2年生の子が千葉からわざわざ来てくれたんだよね。その子は結構本気で悩んでいて。「やりたいことはなに?」って聞くと「プロテニスプレイヤーになりたい」って答えた。

それだけ聞いていると、「あー、すごい頑張ってるんだなあ」「夢があるんだね」って思うじゃん。でも聞いていると「君、本当はテニスプレイヤーになりたいなんて思ってないでしょ」って僕は思っちゃうんだよね。

彼は本気で言ってるんだよ。「プロテニスプレイヤーになりたい」って。それが自分の本当の気持ちだと思っているから。僕が「それで君は何やってるの?テニスプレイヤーになりたいなら頑張って練習して上手くなればいいんじゃない?」っていうと「いやー、それがなかなか上手くいかなくて…」って彼はいうわけ。

それで話を聞いてみると、「やっぱり家に帰るとついつい漫画を読んじゃったり、練習に身がはいらなかったりするし」って。本当にテニスが好きで好きでどうしようもなくて、気づいたら素振りをしちゃっているような人とか、常にテニスのことで頭がいっぱいな人とかなら分かるんだけど、彼はそうじゃないんだよね。

だから「君がやりたいのはテニスじゃなくて漫画を読むことなんだよ」って。「君はテニスが好きなんじゃなくて、テニスをしている自分が好きなんだ」って。

「だって、自己紹介の時とかに漫画が好きですっていうとオタクじゃんって思われるし、終わっちゃうじゃないですか」って彼は言うんだよ。だからその子はテニスが好きなんじゃなくて、「テニスが好き」って言いたいだけなんだよね。誰もいないところだったらテニスじゃなくて漫画を選ぶわけだから。「テニスやらないとモテないぞ、まずい、だからやらなきゃ」って気持ちなだけなのに、「自分はテニスが好きだ」って勘違いしてるだけなんだよね。

人と比べるとか、他人の目を気にするとかなんて考えずに、もっとシンプルにすればいいんだよ。そうすれば「趣味は漫画です。」って言っても嫌われたりしないことにも気づける。その方が幸せだよね。

夢中になることが大事で、例えば、かくれんぼをしていて棚の中に隠れたりする。でも、棚の扉をぴったり閉じておくと見つかっちゃうんだよね。「お、ここ怪しいぞ」って。反対に少し開けておいた方が自然な感じがして見つかりにくい。これは勉強しなきゃって思って学んだことではなくて、夢中になって吸収することだよね。

授業だと「次は13ページです」って言われてページをめくって、「板書します」って言われたらノートをとるみたいな。受動的になることが多い。それって「今日はかくれんぼの授業です。ここに隠れてください。」って言われてそのまま指示された通りに動いているのと一緒だよね。なにも考えていない。

僕が1つのことに集中したり、思い切り楽しめたりするようになったのは、小さいころたくさん遊んだからかな。

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第2回に続きます)

ありがとうございます。 列島ききがきノートの取材エリアは北海道から沖縄まで。聞きたい、伝えたい、残したいコトバはたくさんあります。各地での取材にかかる交通費、宿泊費などに使わせて頂きます。そして、またその足跡をnoteで書いていければ。