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行きつけの場所を作ると、その街にちょこっと根を張れた気がする

昔から「行きつけの○○」に憧れていた。「いつものですね」って、好みを覚えていてくれる常連のカフェやレストランができるといいなって思ってた。引っ越しのたびに、そんな場所を探した。

今の街に住むこと、数年。ようやくお気に入りができてきた。お店の人もわたし達も、お互いに顔や名前が分かり、親しみを感じる。注文や会計以外のちょっとした会話をすることで、【店員】と【客】の関係が、『個』と『個』の関係になる。

先日、少し遅めの朝食をと近所のカフェへ。たいていは「先に、お飲み物はいかがですか?」って聞かれる。

でも、この日は違った。席に着くなり、ウェイターがメニューを手渡しながら、笑顔とともに口を開いた。

One hot chocolate, one babychino and one soy chai tea, right?
Would you like some honey on a side?
ホットココアとベイビーチーノ(泡立てた牛乳の上にチョコの粉をまぶしたモノ。小さな子ども用)、豆乳入りのチャイですよね。蜂蜜もおつけしますか?

わたし達が、いつも注文するドリンク。夏になるとベリーやマンゴーのスムージーに変わることも。

「君たちは常連さんだよ」って認めてもらえたみたいで嬉しくなる。

またある時、遠くから会いに来てくれた夫の両親が子どもたちを預かってくれると言うので、夫と二人でディナーに出かけた。久しぶりのデート♪

いつもは子どもが食べられるもの中心にレストランを選ぶけど、その日はわたし達の好みに合わせてタイ&ラオス料理店に行くことにした。

そこは料理が美味しくて気に入っている。でも、小さな子たちが慣れていて食べやすい味はなく、本格的でスパイシーなものが多い。だからお気に入りのレストランだけど、なかなか行けずにいた。

それに味だけじゃなくて、働いているスタッフも秀逸。

夫が仕事で夜遅くなって、どこも閉まっている時間に唯一営業していたこのレストラン。閉店間際だったけど、夫のために時間を延長して食事を出してくれたそうだ。

またある時は、彼が病気で手術や治療で大変なことを話すと、良くなりますようにと祈りを込めて、ドリンクを奢ってくれたらしい。苦しい時だったから、そんな優しさにジーンとした。

先日の来店は、ロックダウンでずっと行けずにいて、本当に久しぶり。

病気のことを伝えた時以来だったから、「調子はどう?」とサーブしてくれたウェイトレスの心配そうな顔。夫が「治療は無事に終わったよ。まだ経過観察中だけど、調子はいい感じ」と伝えると、ホッとした様子で自分ごとのように喜んでくれた。

まだコロナの規制があって、コース料理しかメニューになかった。昼食が遅く、軽く単品を食べるつもりでいたから、そんなにお腹は空いてなかった。でも、美味しそうな料理ばかり並んでいるのを見て、夫もわたしもいろいろ食べられるコースに心惹かれる。結局、せっかくだからとフルコースを頼むことにした。

コースのデザートは二人で一つをシェア。2つ選択肢があって、どちらも美味しそうだから、迷う。2つとも食べたいと、お腹の減り具合もコース料理だということも一瞬忘れるほど。結局、もう一方はまた来た時に食べることにして、オレンジのシャーベットを頼んだ。

食事が終わって、あとはデザートを待つのみ。けっこうお腹がいっぱい。夫もそんな感じで満足げ。

さあ、いよいよデザートが運ばれてきた。。。と思ったら、シャーベットの他に、バナナ・ライスプディングも運ばれてきた。また今度のお楽しみ♪と思っていた、もう一つのデザート。

夫と二人でびっくりしていると、さっきのウェイトレスの女の子が、「それ、私からの快気祝いね」とウィンク。

全然期待していなくて驚いた。「気持ちが温かいね」と、夫と二人で優しさの味を噛み締める。なんだか胸が熱くなった。

ちょっとした関わりを通して、人と人が繋がる。この街に来て、この土地の住人の優しさやコミュニティ感覚に居心地の良さを覚える。

物理的なソーシャルディスタンスは離れていても、心の距離は近くなっている。わたしたち家族は、この街で『ヨソモノ』から『ムラビト』に昇格した。

noteというコミュニティの雰囲気がとても心地よく、安心安全の場所だなあって思います。サポートいただいた優しさの種は、noteの街で循環していきますね。