発達と嘘

 どこかで書いたような話、発達の度合いとつく嘘の種類は関連性がある。
 比例のような簡単な関係でなく少しごちゃごちゃとしている関係だ。例えるなら階段の如きもので人の気持ちを考えられる発達度合いになればその場しのぎでない嘘をつけるようになる。また、小さな子供には子供特有の勘違いや妄想を現実だと思い込むという脳機能の不完全さからくる間違い(客観的嘘)があったりする。
 様々嘘はあるけれど一番初めにつけるようになる嘘は気を引くための嘘だろう。どうも子供というやつは1歳と半年が経つころにはすでに嘘をつき始めるらしく言葉の不自由な子供はまず嘘泣きやら何やら行動で大人を騙してくる。
 次に自己防衛のための嘘を会得する。かの有名な自己防衛ですよね、自分の身は自分で守らないとという精神は子供の頃には既に学んでいる考え方なのかもしれない。
 さて、子供が自分はあれそれをやっていないと咄嗟に嘘をつけるようになってきて、それとほぼ同時期に現実と妄想の混じった話をするようになる。個人的には妄想をするための脳の領域の発達を助けるために外に妄想を話すのだろうから脳の他の部位がある程度の発達に至っていなければならないだろうと考えている。つまり自己防衛より後に妄想による客観的嘘をつくようになる可能性が高いのだ。
 その後からかいの嘘をつくようになり気を引くでもなく意味の無いコミュニケーションとして嘘を使うようになり、これと同時期に擁護の嘘を覚える。これは共感性の発達と社会性の発達が必要な嘘である。というのも擁護の嘘をつくようになる背景として嘘をつく事が自分がいるコミュニティを護ることに繋がるという事実を知るにはまず「社会の中の自分」というものを意識出来るようになる必要がある。自分は今どういった状態なのかを意識する自己意識という複雑な神経回路が生成されることによって社会的生物へと成り、その社会を守ろうとするから擁護の嘘をつくようになるのだ。
 歳は中学の中頃になってようやく発達としての最終段階、狡猾なる嘘をつけるようになる。狡猾なる嘘というのは例えば「○○さんが言ってた」といういわゆる権威付け(有名人や権威あるものの名前を借りることで信用させるテクニック)や偽の物的証拠を持ってくるなどの方法で人間の心理を逆手にとった騙し方ができるようになるのだ。
 さてはて発達としては狡猾なる嘘が最後であるけれど歳をとってから迷惑にならない嘘をつくことの楽しさがわかってくるという話もある。そもそも嘘をつくというのは脳をフル稼働させる行為であり、脳を動かす機会を欲する高齢の方なら嘘を使って頭の体操をするのが好きになるのは理にかなっている。
 

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