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『肉中の哲学』をレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドの文脈で読む(3)第三章 ~p.45

 第二章では「認知的無意識」が人間の活動において大きな割合を占めていることが示された。それを受け、この第三章では、認知的無意識で起こっていることを解明するための一つの切り口として「概念や理性が身体化されている」ことを指摘する。

 人間の身体のうち、概念や理性を担うのが神経構造であり、その神経構造が様々な特徴を生み出すことになる。

 ここで紹介されるのが「カテゴライゼーション」である。神経を持った生物が外界を把握するとき、眼や触覚などから大量の情報を取り入れる。神経細胞は、その情報のもつ複雑さを大きく減少させるように働いている。そのときに脳の中で起きているのが、カテゴライゼーションであると考えられている。

 特に、色を見分けることに関する研究からは、人間の色の見え方が外界(対象の反射率特性、電磁放射)と人間の身体(網膜や色彩錐状体や視覚中枢)との相互作用を通じて処理されることが分かってきた。外界に色が存在するのではなく、やり取りの中から生まれてくる。身体の関わりなしに世界は現れないということである。

 著者たちは、カテゴライゼーションの結果として生み出されるものの中でも、私たちが世界が自分の周囲に存在しているという感覚の基礎となるものを「ベーシック・レベル・カテゴリー」と名付けている(p.41)。

 ベーシック・レベル・カテゴリーは、(1)それが何らかの具体的な姿のイメージを伴う、(2)そのカテゴリーの特徴を含んだ全体的な一つの形を想起させる、(3)その具体的な使い方やかかわり方を想起させる、(4)それにまつわる様々な知識をその関連性で紐づけることができる、といった特徴をもつ。

 例えば、「椅子」や「自動車」は具体的な形があり、使い方も想起させる。また、それらを使ったり関わったりする経験は「椅子」や「自動車」にまつわる知識を深めるだろうから、ベーシック・レベルのカテゴリーである。
 一方、類似ではあるが「家具」や「乗り物」は、具体的な一つの形を想起したり使い方を特定することはできないので、ベーシック・レベルではないとなる。

 このベーシック・レベルのカテゴリーは私たちの思考の重要な基準となっている。子供たちが使い始めるのもこのベーシック・レベルからである。

 これが基礎となりうるのは、人間の運動や感覚に一番近い(見たり触ったりなどの関わりからの経験が得られやすい)からである。つまり人間の身体とのかかわりの中から物事の区分が生まれ、思考が広がっていくことを示しているのが、このベーシック・レベル・カテゴリーである。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドとの関わり

 上記までの説明は第三章の前半で、身体と思考がどう関わっているかを、カテゴライゼーションとの関連で示したことになる。

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドにおいては、モデルはブロックの集まりではあるが、それを一つの塊(例えば、建造物である)として見たり、複数の部分の集合(壁があり窓があり入り口がある)として見ることもできる。

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで自分の考えが語りやすいというのは、考えをモデル化することが、「ベーシック・レベル・カテゴリー」が備えている条件に類似した条件を持っているからではないだろうか。もしくは、「ベーシック・レベル・カテゴリー」の特徴に近づけていくことで、よりよい対話につながるかもしれない。

 つまり、作られるモデルが、形があり、その形に特徴があり、使い方・関わり方も表現でき、関連する知識も想起しやすいものになっていることが重要なのではないだろうか。

 このとき、モデルの作り手は「ベーシック・レベル・カテゴリー」の条件のうち、「形をもつ」や「形に特徴がある」については自然と達成するだろう。
 一方で、使い方・関わり方は意識してと思われるだろうから、モデルを作るとき、もしくは質問において「そのモデル(考え方)を使うと今の状況をどう良くできるか」とファシリテーターが問いかけることはモデルの理解を深めるきっかけになるだろう。
 また、「今回のモデルの〇〇の表現の部分について、さらに話せることはありますか」と関連する知識を問いかけるのも良いかもしれない。そこに眠っていた知識が想起され、作品は「ベーシック・モデル・カテゴリー」のように世界を理解し、改善するのに役に立つものになっていくだろう。

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