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リベレーティング・ストラクチャーとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(4)即興ネットワーキング

 今回取り上げるのは「即興ネットワーキング(Impromptu Networking)」というLSである。

 リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はこちらのNoteを読んでいただければと思います。

この方法で何ができるか?

  グループが解決したい問題に注意を向けるのを助けることで、好奇心や才能の深い井戸を掘り起こすことができます。ワーク・セッションの最初に使用すると、生産的な関わり方のパターンが確立されます。魅力的な質問をすることで、緩やかでありながら強力なつながりが20分以内に形成されます。全員が作業の形成に貢献し、一緒にパターンに気づき、ローカルな解決策を発見します。

”LS Menu 2.Impromptu Networking”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「即興ネットワーキング」はワークを始めるにあたって参加者同士のつながりを作って進めやすくするという手法である。「チェックイン」と呼ばれるものをペアで相手を変えながら行うということである。

5つの構造要素

1.始め方
・「あなたはこの集まりにどんな大きなチャレンジを持ってきますか?このグループやコミュニティから何を得て、何を与えたいですか?」と尋ねる。

2.空間の作り方と必要な道具
・参加者が二人一組になり、パートナーを探すために移動できるような、障害物のない開かれた空間がいる。

3.参加の仕方
・全員が一度に同じ時間を使う(グループの人数に制限はない)。
・全員が平等に貢献する機会を持つ。

4.グループ編成の方法
・ペアにする。
・自分のグループとは異なるグループもしくは役割を担う他人や同僚を見つけるようにする。

5.ステップと時間配分
・各ラウンドで、1人あたり2分間で質問に答える。1ラウンド4~5分。
・3ラウンドで行う。

”LS Menu 2.Impromptu Networking”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 自分と異なる立場にいる人を探して、基本ペアになって行うというところに特徴がある。

実施にあたっての追記事項

 「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。

なぜ その目的なのか?
・質問が魅力的であれば、誰でもすぐに参加できる。
・課題への深い関与を引き出す。
・繰り返し行うことで、ストーリーを深めていくことができる。
・恥ずかしがり屋さんのウォームアップになる。
・解決に向けた個人の貢献度を確認する。
・ゆるやかで新しいつながりの力を強調する。
・小さなことが大きな違いになることを示唆する。

”LS Menu 2.Impromptu Networking”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「繰り返し行うことで、ストーリーを深められる」と「恥ずかしがり屋さんのウォームアップになる」という2つが同居している点が素晴らしい。話したり考えたりするスキルの高低に関わらず、皆に利点があるからである。

コツとワナ
・「挑戦したいこと」と「ギブ&テイク」の質問を1つずつ使用する。
・参加者が自分たちのワークの方向性を決定するような質問をする。
・ミーティングや会議を始める前に行う。
・ベル(例:ティンシャ)を使って、参加者を第1ラウンド、第2ラウンド、第3ラウンドと移行させる。
・質問するときは、幅が広すぎない、自由な質問をする。
・真剣に取り組むこと(serious play)ようにする。
・1ラウンドや2ラウンドではなく、3ラウンドを行う。
・アウトプットを共有する場合は、慎重に行い、機密保持を徹底する。

”LS Menu 2.Impromptu Networking”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「挑戦したいこと」と「ギブ&テイク」の2つを入れることで、お互いへのつながりと自分自身の方向性の両方を話すことになり、自然とそのバランスをとることになる。また、それを3ラウンド行うことで、より多くの人を巻き込んだストーリーを語った本人が意識できるようになっていく。
 ワナとしては「真剣に取り組む(serious play)」に目がいく。会議の冒頭で行うだけに、参加者のエンジンがかかりにくいこともあるだろう。無理してレクリエーションのような位置付けを強くしすぎると、「真剣に取り組む」ことから遠ざかる。この点に対する対処方法は具体的に示されていない。

繰り返し方とバリエーション
・いろいろな質問で行ってみてください。「どのような問題を解決しようとしていますか?」「前回のミーティングから残っている課題は何ですか?」「どんな予感を確かめようとしていますか?」
・会議室から外に出てみると、楽しさが倍増します。
・「ソーシャル・ネットワーク・ウェビング」へとリンクさせる。
・参加者に「15%での解決策」でフォローアップする簡単な計画を立ててもらう。
・スケジュールに合わせて早く行う。
・リキッド・カレッジ(More Than An Option, Inc.の創設者Jamie OwensとKeith McCandlessが開発)と呼ばれる活気あるバリエーションを試してみる。これは、ペアの人に、これらのオープンセンテンスを1分以内に終わらせるよう呼びかけます。「もし....でさえあれば」 「私はどうしても......とされてしまう」「 私は......しなければならない」「...となるのは仕方がないことだ。」 「もし○○であれば、私は○○できるのに!」

”LS Menu 2.Impromptu Networking”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

「15%での解決策」については以下の記事で紹介している。

 「ソーシャル・ネットワーク・ウェビング」は、LSの一つでもあるので、また改めて紹介してみたい。

 もうひとつの「リキッド・カレッジ」(直訳すれば(液体がテーブルに落とされ広がっていう意味で)「広がっていく勇気」ともなろうか)はリベレーティング・ストラクチャーとしては位置付けられていないが、ホームページに追加でドキュメントが公開されている(英語)。以下に訳を示しておく。

リキッド・カレッジ ー即席ネットワーキングの一工夫

 この方法で何ができるか?
 個人が、短期的には変えられるかもしれない不満に名前を付け、そして「手放す」のを助ける。 瞬間的なカタルシスと、儀式化された不満の悪魔払いができるかもしれない。私たちは、もはや恐れていないことを笑い飛ばすのです。
 リキッド・カレッジでは、各自1分間、仕事や生活に関する不満や儀式的にしみついた不満を(「即興ネットワーキング」を通じて)他の1人と共有することをお勧めします。

 「以下のオープンセンテンスを3人の人と3回ずつ、合計3ラウンドしてください。あなたは2分間を共有します。 考え過ぎないこと。 最初の考えをぶちまけてください。もし、あなたの組織で発言したことによる報復や処罰についての恐れがある場合は、この活動をスキップしてください。 」

 始める前に、各参加者が以下のオープンセンテンスをインデックスカードに書くか、スクリーンに映し出すと便利です。
・「もし....でさえあれば」
・「私はどうしても......とされてしまう」
・「 私は......しなければならない」
・「...となるのは仕方がないことだ。」
・「もし○○であれば、私は○○できるのに!」

質問して答えてもらう
・何が起こったのですか?
・儀式化されていた不満は祓われましたか?
・アクティビティが進むにつれて、あなたの勇気は広がりましたか?
・批判されることなく、より自由に自分を表現することができたと感じましたか? ・最も面白い発言、最も心に響く発言が飛び出しましたか?

出てきた "もの "は、後で対処するのに有効かもしれません。 通常、大笑いされた項目は、その部屋で起こっているパラドックスについて何かを明らかにします。 注意してください。

 開発者:ジェイミー・オーエンス(More Than An Option, Inc.の創設者)、キース・マッキャンドレス(Social Invention Group)

”LS Menu 2.Impromptu Networking”内の”Liquid Courage”のリンクドキュメントより。
DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 このように質問内容を工夫して、気分を晴れやかにするバリエーションである。言いにくいことも思い切っていう空気を作ることで、その場の人々の間の連帯感をつくることにもつながっていそうだ。

事例
・授業初日に深いつながりを持たせるために、大学教授は学生に「なぜこのクラスに参加することにしたのですか?このクラスのメンバーから何を学び、何を提供したいのか」。
・Tim Jaasko-Fisherは、部門を超えた学際的な学習セッションを始めるにあたり、裁判官、弁護士、事務員、ソーシャルワーカーと即興ネットワーキングを行いました。第3部である「現場からの声」の「崩壊した児童福祉制度を修復する(Fixing Broken Child Welfare System)」をご覧ください。
・イノベーション・ラーニング・ネットワークのメンバー間で、遠く離れたイノベーターや異種のプロトタイプをつなげる。第3部である「現場からの声」の「未来の医療を創る(Inventing Future Health-Care Practice)」をご覧ください。

”LS Menu 2.Impromptu Networking”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 文中の「崩壊した児童福祉制度を修復する(Fixing Broken Child Welfare System)」(実際の該当ページでは「裁判所と児童福祉法を解放する (Liberating the Courts and Child Welfare Law)」となっている)という事例を見ると、即興ネットワーキングは、会議の最初に利用され、参加者が自分がそこで仕事をするという雰囲気をつくり、会場のエネルギーを高める効果があったということが書かれている。
 もう一つの「未来のヘルスケアを創る(Inventing Future Health-Care Practice)」(実際の該当ページでは「慣れた目線を捨ててヘルスケアの未来を創る(Leaving Sight of Land to Invent the Future of Healthcare)」となっている)では、即興ネットワーキングについての直接的な記述はないが、異なる立場やスキルの人々が集まるような場であったので、そこをつなげるために使われた可能性は十分にあるだろう。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係

 非常にシンプルで、参加者の気持ちを高めていく「即興ネットワーキング」は、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドのワークショップの冒頭で使うこともできるだろう。

 また、「即興ネットワーキング」の問いそのものをレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークの中に入れてしまう方法も考えられる。(A)「自分が成し遂げたいこと」のモデルと(B)「他の人に自分が与えられるもの」と(C)「自分が他の人に助けてもらいたいもの」をつくり、色々な人とそれを見せあってつながりを作っていくだけのは、「チーム・ビルディング」を望むクライアントのために強力なワークになりそうだ。
 そのとき、同じテーブルの人たちだけではなく、モデルをもって会場を動き回りながら、いろいろな人とモデルを見せ合いながら話をするようなパターンの共有の仕方も選択肢として見えてくる。その場合には、人を入れ替えて最低3ラウンド行うことを気をつけておきたい。

 最後に、実施のコツのひとつとして「会議室から外に出てみると、楽しさが倍増します」という指摘があった。この「即興ネットワーキング」だけでなく、「外にでる」という選択肢も常に持っておきたいと感じた。


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