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大学での担当科目とレゴシリアスプレイメソッドを使った支援の関係を整理してみた

 2024年度が始まった。
 勤務先の大学ではいろいろな科目の担当をしている。以下、担当科目のすべてではないが、その中の特徴的な科目についてあげてみた。
これらの科目は2軸で分類できる。
 主に個人で取り組むのか、チームを組んで取り組むのかという軸と、課題が先にあるのか、課題の発見から考え始めるのかという軸である。

担当する科目(枠内)とそれを支援するワーク(枠外)

 この2軸で分類すると、担当している科目の内容が4つの象限のそれぞれカバーしているような形になる。

 それぞれ簡単に科目を紹介しておく。

インターンシップ:文科省の指針に従い、今年から「キャリア演習(実践)」と名前を変えています。企業に累計64時間以上の職業実習を体験するというものです。おおよそ毎年400名以上の学生を送り出しています。事前の準備(目標設定)と体験からの振り返りが成長のポイントになる授業です。

事業開発論:企業から課題を提示してもらい、その課題に対する解決の提案を「デザイン思考」のプロセスを踏んで導き出していく授業です。例年、80名ぐらいが受講して15チームぐらいで取り組んでいます。

ゼミナール:今年は諸事情で、2年生は100名、3年生は70名の学生を受け入れることになりました。もはやゼミと呼べるのかという声も聞こえてきますが、何に取り組むのかから学生に考えさせ、それぞれテーマをもってチャレンジしてその体験からの学びを言語化していくことを目指します。高校生が取り組んでいる「マイ・プロジェクト」に近いものです。これを一人で担当します。

経営実践演習:新時代を見据えた新しいビジネスを構想し、プロトタイプを作ったり試行のミニプロジェクトを展開する授業です。通常は、同じようなテーマに関心のある学生同士をつなげ、チームを組んで進めてもらいます。

 こうした性格の違う4つの授業に対して、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを上手く使っていきたいと考えている。

 そこで、自分が使うことのできるプログラムを当てはめてみた。

「個人」ー「先に課題が存在」

 まず「個人」ー「先に課題が存在」の象限である。インターンシップの科目については、自分が現場に出て直面した課題を把握することに使うことができそうだ。ブロックで自分の置かれた状況を表現してもらい(状況理解ワーク)、コーチングでもよく使われる問いかけを投げかけながら、どのように課題に向かうのかを考える対話をするというイメージである。
 また、「U理論ワーク」は、なかなか抜け出せない問題を抜け出すために自分自身の考え方を見直すというものなので、この象限に当てはまるものの、インターンシップにはそぐわない。
 実際にレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったサポートをする上での問題として、ある程度、実習を進めてからワークを行うことになるため、実習の受け入れ企業との調整が必要となる。400名の学生を送り込み、準備をさせることで手一杯ということもあり(他の授業をしながらなので)、実際に調整して実習の半ばで使うのは難しそうだ。もっと少人数で長期のインターンシップへと科目の性質をシフトさせることができるのであればぜひ試してみたいところだ。
 インターンシップは越境学習という観点に立てば、先日のNoteに書いた「越境前ー越境中ー越境後」というフレームを使って事後に振り返りをするワークという方法の方がよさそうだ。これは構想でまだ試したことがないので、近々、試行してみたい。

「チーム」と「先に課題が存在」

 次に「チーム」と「先に課題が存在」の象限を考えてみる。事業開発論では、課題を分析するときにチームメンバーの考えをお互いが十分に理解して、立体的に課題理解を深めていくことがポイントとなる。
 このとき、それぞれのメンバーの考えをモデルにして、お互いの感じている課題理解の関係を考察するというワークが比較的シンプルなものとして考えられる。
 このとき、「課題理解の関係」の整理を、課題を「生き物」としてとらえることから行っていこうというのが「ビーストワーク」である。このワークは、システム思考の知見も入れているので、なかなか強力なワークである。
 実際に授業への導入を考えると、時間がかかる(最低1日6時間、できれば2日で12時間)のが難点だ。100分x14回の授業なので、そこまでレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのワークに時間を割くことができない。
 また、このワークでは、実施のためにかなりのブロックを使うことになる。私の手持ちのブロックでは、1回に応対できるチームは6チームぐらいだろうか。授業の時間とは別に、土日に時間をとってでもやってみたい!と希望する学生がいればしてみたい。

ビーストワークのイメージ 多くのそして特殊なブロックを使っていく

 もう一つ「第3のイノベーションワーク」というものがある。これは課題を抱えているのが企業で、成熟した商品やサービスを持っている場合に対応できる。これを「第3のイノベーション」提唱者のデビット・ロバートソンと共に開発したロバート・ラスムセン氏から6月にワークができるようになるための研修を受ける予定なので、まずそれを修得するところから取り組みたい。早くても導入は来年からというところになりそうだ。「第3のイノベーション」のワークについて、具体的な内容に興味のある方は以下のリンク先を見てみてください。

「個人」ー「課題から見つける」

 個人が新しいテーマに臨む場合、そのテーマ探しが一番難しい。世の中には課題が無限に近く存在するが、逆に、そこから何を選ぶのが一番良いのかが分からなくなってしまうからだ。
 その答えはシンプルで取り組むべきは「自分に一番合った課題」ということなのだが、このとき「自分」について理解できていないと先に進めない。そこで自分を理解するワークとしてレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドが登場する。「アイデンティティワーク」はその名の通り、作品作りを通じて自分の「アイデンティティ」を探究するワークである。ただし、生きている経験が少ないと「アイデンティティ」を作る材料をそこまでたくさん持っていないという学生も出てくるので、そこが実施のポイントになる。
 また、各自のテーマが決まって何かに取り組んだ後に、さらに視野を広げてよりスケールの大きい活動へとレベルをあげていく仕組み作りもしたい。この仕組みがあれば、逆に最初の一歩を小さく、ハードルを下げることができる。その仕組みを担うのが「グッドスパイラルワーク」である。これについては、現在、開発中ではあるが、90分程度の時間を意識して作っているので、ゼミナールの中に取り入れていきたい。

「チーム」ー「課題から見つける」

 個人の場合と同様に、チームでもそれぞれのチームメンバーの個人アイデンティティからチームのアイデンティティを作るという流れで進めることはできる。
 「チーム」では、それぞれのメンバーの知恵を集めて組み合わせることで「個人」ではなかなか得られない、より広い視野と未来を見る視点を得ることができる。レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使って、複数人で力を合わせて現代社会をより広く見ることを狙いとしたものとして「システム思考ワーク」を、より先の時代を見越すことを狙いとしたものとして「未来を旅するワーク」がある。
 やはりぐっと集中して多くのことを考えていくこともあり、この2つのワークは共に1~2日間ぐらいかかる。また、上記で紹介したビーストワーク以上にブロックを使う。「未来を旅するワーク」は最大で4チームまでである。課題を見つけることまでを授業のゴールとすれば、集中講義で導入することは可能である。

 一通り整理してみた。自分の科目を効果的に支援するワークを持ってはいるものの、履修人数や時間などを考慮すると、授業の一部として導入するために工夫や調整が必要な場合が多かった。そのあたりの難しさをしっかりと認識しつつ(改善方法を探りつつ)、今年度は取り組んでいきたい。

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